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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
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武士と乱囚

俺達は、帝城高校を後にした。


舞は、疲れもあるだろうから、仁父さんたちと自宅に戻り、俺と楓真とタカヒコ、ホト、ミッドを乗せたロールスロイスファントムは、かつて知ったる【ゴンスタ】に向かっていた。

何と、このファントムは特別製で8人まで、向かい合って乗車できるのだ。


タカヒコとホト、ミッドは結局午後の授業は、さぼりにしたらしい。


まぁ、高校の授業はあくまで復習。大事なところは塾や自宅で済ませているのが、進学高校に通う生徒たちの大半だ。


推薦で行くと言う手もあるが、自分の行きたい学部が決まっている奴には、全く縁のない話だ。


そして俺達はすでに走り始めてる。


自分たちのなす事を成すために!


どこの大学、学部でも入れればいいと言うわけではないのだ。


入学するのは、あくまで通過点。そこから先に俺達の進むべき道はあるのだから。


走ること15分もすると、【ゴンスタ】に到着した。


マスターのゴンさんには、散々お世話になり迷惑をかけた。

そして、俺達の出発点の原点はやっぱりここしかない。


皆で、挨拶していこうと思ったのだ。


今度、皆で会えるのは何時になるかわからないから。


スタジオの前に、ロールスロイスファントムが到着すると、中から、ゴンさんが駆け出してきた。


「まぁまぁ~あなたたち~久しぶりね~」


バンド時代の様に、ミッドこと御堂大智(みどうだいち)とホト、保東康臣(ほとうやすおみ)が声をかけ挨拶する。


本当に以前のいつもの様子が戻った感じがする。

違うのは、楓真と俺が高校を中退して、舞と俺が結婚をして子供が出来たことくらいか、、、


これって、結構な違いじゃねぇ。


確実に俺達は、前に進んでるってことだよな。


まだ早いかもしれないけど、たまにはこうやって、ちょっと過去を振り返ることも楽しくていいもんだな。

まだ、過去を懐かしむ年齢ではないが、進み続ける間のちょっとの間に、振り向いてみる事も大切なことかもしれない。


俺が、ゴンさんに声をかける。


「お久しぶりです。ご無沙汰してすいません。」


一人だけ、スーツの俺がゴンさんにお辞儀する。


そんな、俺の姿を見てゴンさんが、ため息交じりに


「まぁ~、将軍も立派になっちゃってね~、男の子は成長が早いわね~」


っと、近所のおばさんの様なことを言う。


ゴンさんは次に、彭城楓真(さかきふうま)を見て少し考えこむ、、、


「楓真君も変ったわねぇ~」


(そうかなぁ?こいつは前からこんなじゃねぇ?)


などと思っていたが、ゴンさんはじっと楓真から目を離さない。


突然


「楓真君、一曲歌ってくれない?それで、曲の録音もらいたいんだけどダメかしら?」


「・・・・・・」


楓真は考え込む、そりゃそうだ。

楓真は既に、KABUKIエンターテイメントと契約しているのだから、そんな簡単にどこでも歌えるわけではない。

そして、今は契約の事も話せない。


俺が、助け船を出す。


「ゴンさん、どうしたんです?いきなり楓真の曲が欲しいだなんて」


「私の目にはこの子は、本物になりかけているのよ、だから今のうちにただでもらっておこうかななんて、ダメよね~?」


(流石は伊達にスタジオ何十年も経営してきたわけじゃないんだな、楓真の本質を見抜いた数少ない大人(・・)だ)


「ゴンさん、実は訳あってこいつ今、歌が歌えないんですよ、だからゴンスタ宛のメッセージとかでもいいですか?」


ゴンさんは、両の手を握りながら興奮気味に話す。


「全然、それでオーケーよ~、嬉しいわぁ~」


俺は楓真に目線を合わせて暗黙に(いいよな?)っと合図すると、諷馬は黙ってスタジオに入っていった。


(今更だけどさぁ~もうちょっと、なんか言えよ)


直ぐにミッドが、スタジオに飛び込み録音の準備を済ます。

そこは手慣れたもので、長年通っていたスタジオの機材だから勝手知ったる何とやらだ。


準備が出来てミッドが、楓真の方を向いて指でOKのサイン出す。


唐突に、楓真はしゃべりだす。


「このメッセージを聞いてる、みんな。」


「俺が彭城楓真だ。このゴンスタは俺の原点みたいなもので、未来の俺がどうなっていようと、ここから俺達は始まった。」


「このスタジオには俺の青春時代の全てが詰まっている。ここで練習をして、ここで大切な仲間が出来て、未来の俺があるのはそのおかげだろう」


「もし、このメッセージを聞いて自分も夢を叶えようと思ってる人がいたら、今すぐに全力で走り出せ。俺達が応援しているぞ。」


「簡単に諦めるな!走り続けろ!」


マイクをそっと置く楓真にまたもやOKサインを送り録音を止めるミッドだ。


珍しく、長く話す楓真に俺自身が驚いた。

それに話した内容にも、驚かされた。

こいつなりに、いろいろ考えていたんだな。


「ありがとう~すごく嬉しいわぁ~」


抱きつかんばかりに、すり寄ってくるゴンさんを軽くスルーして俺の横に立つ楓真だが、他人にはわからないが付き合いの長い俺にはわかる。


こいつなりに今、不安を抱えているんだなって、、、


デビュー前の微妙な時期、いきなりドラマ主演やらオープニングテーマ楽曲デビュー等、話がトントン拍子に進みすぎてこいつなりに不安を感じているんだな。


だから、スケジュール的に忙しい今日を俺達と共に過ごしたいと思って無理をしたんだな、、、


実は寂しがりやで優しい奴なんだよな。


普段無口な奴ほど、心の中に沢山溜め込んでいるんだよな。


っと、俺はゴンさんに話を変えて話しかけた。


「ところで、武士君います?」


ゴンさんは、興奮冷めやらぬようだったが、俺からの会話に気付き直ぐに答えてくれた。


「ええ、2階にいるわよ~」


「上がってもいいですか?」


「どうぞ~どうぞ~」


っと俺は何度も通っているゴンスタの2階にある、土門武士(どもんたけし)君の部屋に向かった。


身長2メートル近くあり、丸坊主のような短髪で元格闘ジュニア選手権の覇者は、歩いているだけで恐れられてしまう。

しかし、俺達にとっては、武士も大切な仲間なのだ。


「武士~いるか?お邪魔するぞ」


俺は声をかけながら、階段を登る。

俺の声を聞きつけた、偉丈夫の強面(こわもて)は直ぐに部屋から出てきて、俺に挨拶する。


「うっす、将軍さん久しぶりです。」


階段の上から覗き込む、怪獣並みの迫力を持つ人間を慣れない奴が見たら、真っ先に逃げ出したくなるだろうな


「部屋入って少し話がしたいんだけどいいかな?」


「大丈夫っす。散らかってますが」


俺は全く気にせずに、武士の部屋に入り込み勝手に、床に座る。

悪人風の心優しい巨人も、俺の前に胡坐(あぐら)をかいて座る。


厳しい体育会系の縦社会で生きてきた、武士は目上の人間と話す時は、絶対自分からは話をしない。

座ったまま、黙って俺を見る。


俺は全く動じる事もなく、今日一番大切な話を始める。


「武士の所属する、乱囚(らんじゅ)に自宅や個人の警護を専門に仕事している先輩なんていないかな?」


武士は直ぐに返答する。


「うっす、先輩で今はそういった警備会社に勤めていますが、独立したいと言っている先輩がいます。」


「失礼な言い方かもしれないけど、その先輩は信頼のおける人かな?」


「うっす、自分も高校卒業したら一緒に働くつもりでいました。」


「その先輩に今電話できる?」


「うっす、今日は明け番なんで、大丈夫だと思います。ちょっと待ってください。」


武士はスマホを取り出し、大きな指で慣れた操作をして耳にあてる。


(スマホがすげぇ小さく見えるよ、、、)


谷樫心衛(たにがししんえい)先輩すっか、武士です。今よろしいですか?」


「はい、ありがとうございます。」


「実は、先輩とお話ししたいと言う方がいて、変わってもよろしいでしょうか?」


「ありがとうっす。」


と言いながら、小さく見えるスマホを俺に差し出す。

俺はスマホを受け取り、話し始める。


「突然電話してしまってすいません。私は火吹武将と言います。」


「実は相談がありまして、私の自宅警護を頼みたいのですが、引き受けてもらえませんか?」


「ええ、独立されると聞いたので、よろしければ私の方で独立資金や諸所の手続きなど細かなところも、全てご面倒見させてもらえないかと思っております。」


「ええ、ただし条件があります。」


絶対(・・)に信頼できる人物である事、それと秘密を守れる事、私の指示には必ず従う事。以上3つが守れる事が条件です。」


「ええ、わかりました。それでは1週間お返事をお待ちします。連絡先は武士君に伝えておきますので、よろしくお願いします。」


「はい、それでは失礼します。」


スマホを切って、武士に返す。


武士は驚いたように、俺の顔を見て顔を近づけて話してくる。


(まじでこえぇって、、、)


「将軍さん、谷樫先輩は自分が絶対説き伏せます。」


「自分も高校辞めて、将軍さんの家を守るっす。」


(おいおい、簡単に自分の人生決めちゃいかんだろ)


「武士の気持ちは分かったからさ、とりあえず1週間待とうよ。」


「それに今時、高校くらいは卒業していた方がいいぞ。」


「将軍さんが言っても、説得力に欠けるっす。」


(そりゃそうだ、俺も楓真も高校中退だからな、、、俺の周り高校中退ばかりになっちゃうじゃん)


「それに、自分は見ての通りなんで、勉強は苦手っす。身体使う方が楽しいっす。」


(わかったから、顔をもうちょっと話してくれよ~)




話は、KABUKIエンターテイメント社長水島さんが、楓真の専属スタッフを俺の家に連れてきて紹介してくれた後になる。


俺は、執事兼運転手兼金庫番のシゲさんに相談していた。


「シゲさん、楓真がもし芸能人と成功してこの家にいる事が世間に知れたら、大変な事になりますよね」


シゲさんは昭和の執事の様にいぶし銀を利かせたように白くなった顎鬚(あごひげ)に白い手袋した手で、(ひげ)をなでながら話始める。


「そうですなぁ、今の段階では何とも言えませんが、火吹家には武将様を始め舞様、尚武(しょうぶ)様、結紬(ゆいつ)様、葛城家夫妻様、重要な方々が生活されてるのは確かです。」


「武将様は、先ほどの水島社長のおっしゃておりました、【警備】という点に、お気を配ってらっしゃるのですね。」


「そうです。警報装置やカメラなどはありますが、実際今後どんなことが起こるか想像できません。」


「そこで、人間の警備担当者を雇おうかと思います。」


「お金は、大丈夫ですか?」


シゲさんは、胸を張り堂々と自分の胸をたたき


「それでは、信頼のおける警備会社を丸ごと、買ってしまわれるのがよいと思います。お金の心配など全く問題ございません。」


「正門と家との間に、警備詰所を建てて24時間交代で警備できるようにいたしましょう。」


「ありがとうございます。」


「ところで、警備される会社の宛はございますので?」


「ええ、それは任してください。」


っと、シゲさんとは話が済んでいたのだ。


これから、また忙しく波乱万丈な人生が待ってるな!!


期待を膨らませて、火吹家当主武将は心を熱く燃やすのである。

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