我が母校
帝城高校についた。俺達一行は、帝城高校校長先生の出迎えを受け、仁父さんと校長先生は熱く語り合っていた。
俺は仁父さんの車に駆け寄り、車のトランクから折り畳み式のベビーカーを2台出す。
今のベビーカーは良く出来ているもので、チャイルドシードがそのまま、ベビーカーに設置できるのだ。
だから、いちいち子供達を抱かなくて大丈夫なのは、今の俺にとっては嬉しい。
揺り籠を運ぶようにそっと、尚武と結紬をチャイルドシートごと持ち抱えベビーカーに設置する。
二人とも、スヤスヤ寝ていた。
車を降りる、妻の舞に手を貸し、舞は嬉しそうに俺の手を取り「ありがとう」と言って、車を降りる。
舞にとっては、一週間ぶりの帝城高校だ。
すっかりお腹も凹んで、首や手足が長く、腰はキュッとしまっており、胸は子供を産んだせいか超巨大化しており、モデル体型をこれでもかと周辺に見せつけている。
本人は決して、そんな気はないのだが、元来の性格から俺にはそう感じてしまうのだ。
仁父さんと校長先生が、熱く話しているところに俺と舞は二人でベビーカーをゆっくり押していき、校長先生に挨拶する。
「校長先生、この度は妻が大変お世話になりました。」
17歳の俺は、スーツという戦闘服を着こみ、女子高校生の舞を【妻】と堂々と紹介する。
相変わらず、柔和な好々爺とした、校長先生は微笑みながら、今度は俺に向かって、右手を差し出してきた。
もちろん、俺はすぐさま両手で、校長先生の右手を握る。
「若さとは、素晴らしいものですな、僅かの間にこれほど成長された。」
俺を見て、微笑みながら声をかけ俺の事を褒めたたえて下さる。
そこで仁父さんが、一言
「校長先生、彼は新しい事業を起こして、会社の取締役になる予定なんですよ」
「なんと、それは大変素晴らしい。」
校長先生は、俺の目をじっと見つめ
「責任ある行動、信用を付ける大切さ、結果を出さなければならない実績といった 大変なことがこれから沢山 起こると思いますが、家庭を大事にして頑張ってくださいね」
思わず、俺は結婚式に言われた、校長先生の言葉を思い出した。
(自分の心に気を張れ、他人の心に根を張れ、この世界に形を残せ)
「はい!!」
俺は背筋をピンと張り、校長先生の手をしっかり握り、声を大きく腹からだす。
思わず、尚武と結紬が驚いて、泣き出す。
「もぅ~」
っと、不満を述べながらも、子供のお腹に手を乗せ
「大丈夫だよ~、怖くないよぅ~ 困ったお父ちゃんだねぇ~」
っと、優しく子供たちに触れる姿は、まさに母親そのものだった。
その姿を見て、校長先生は今日 何度目かの微笑みを洩らし
「成長されたのは、娘さんも同じですな」
仁父さんは、嬉し気に
「ありがとうございます」
っと答え、葛城夫妻は校長室に向かっていく。
2台のベビーカーを押しながら
俺と楓真と舞は、大人の会話に入っても仕方ないと思い、丁度お昼休みになる頃だったので、2年の教室に行く許可をもらい、約10か月ぶりとなる帝城高校校舎内に入る。
まだ、一年も経っていないのに、懐かしさを感じる。
キンコ~ンカンコ~ン
お昼休みの鐘だ。
2年生の教室は2階にあり、そこに向かう途中で、見知った元学友達がクラスから出てくる。
刹那!!
俺達は瞬時に取り囲まれる。
(なんだなんだ?俺達は珍獣か?)
そりゃ、諷馬と舞が居れば、学年 クラス関係なく人だかりができるのは、当然だと思うが、、、いくらなんでもこれはやべぇんじゃね。
あっという間に、人だかりで廊下は通行不可能の状況となり、ヒトが溢れ出す。
そこに、こういう時一番頼りになる奴が、声を張り上げる。
『みんな!!気持ちは分かるが、ここでは迷惑になる。一端グラウンドに出よう』
当然、HANZOのギターリストにして、特進クラス主席を舞と争う、常慶貴彦である。
そこに、ドラムスの保東康臣も加わり、俺達三人をまず確保してグラウンドに脱出させる。
御堂大智も加わり、俺達3人を朝礼台の上に乗せる。
学友達は100人を超し、皆グラウンドに出てくる。
すかさず、ホトが大声で恒例のMCならぬ、切り始める。
「はい、質問のある人は手をあげて、学年 クラス 名前を言って大きな声でしゃべってね!!」
「「「「はいっ!!はいっ!!」」」」
「一番前の女子。」ホトが指で刺し指名する。
「2年5組、鈴木 鈴音です。火吹君に質問です。父親になり、社会に出た感想を素直に教えてください。」
俺は照れながら
「そうだな~いろいろわからないことだらけで、大変だけど楽しいよ!」
「ハイ次の質問」ホトがいつもの司会進行役をしてくれる。
「「「「はいっ!!はいっ!!」」」」
「一番後ろの背の高い男子!」
指名された、ヒョロッと背が高い男子は少しおどおどしながら
「1年2組 黒田慎吾と言います。葛城、、、いや舞先輩にお尋ねします。結婚と勉強は両立できますか?」
舞ははちきれんばかりの胸をそらして
「やる気の問題ね、私の場合は何の問題も無いわ」
女王様のお告げである。
皆の者、平伏せよ。
「はい、次の人!!」
「「「「はいっ!!はいっ!!」」」」
「真ん中の、髪をツインテールにしている女子どうぞ」
「私は、3年2組 吉田里香です。彭城楓真君にお尋ねします。芸能活動は上手くいってますか?」
楓真は全く変わらず一言「まぁまぁだ」
たったこの一言で、女子たちが騒ぎ出す。
「「「「キャーキャー」」」」
(今更ながら、この男の凄さと不器用さを感じる)
「はい、じゃ時間もないからこれが最後の質問ね」
「「「「はいっ!!はいっ!!」」」」
「はい、左端の髪の短い男子!!」
「押忍、自分は1年5組の吉田淳っす。火吹先輩にお願いっす。卒業したらKABUKIコーポレーションに入れてもらえないっすか?」
「「「ははははは~」」」
思わず、周囲の生徒たちが笑い出す。
そりゃ、俺はKABUKIコーポレーション創始者の曾孫で、帝城高校に通っていたころは、高級外車で毎日送迎してもらったりしてたけどさ、、、、
「吉田君と言ったね、僕はKABUKIコーポレーションとは今は何のつながりもないから、勝手に約束することは無理なんだ。」
「もし、君が本当にKABUKIコーポレーションに入りたいんなら、自分を磨く事だね。KABUKIコーポレーションの方から是非入ってくださいって言われる様な人間になることだよ」
「わかったす!!ありがとっす。」
ホトは、グラウンドの場所、男女学年分け隔てなく、質問させて公平さを保った。
誰に教えられたものでもなく、自然に覚え身に着いたホトの素晴らしい一面だ。
「は~い、じゃ、お昼時間も決まってるから今日はこれで解散してねぇ~」
声を張り上げるホトだったが、中々皆は動き出さない。
ヤングな高校生に、言うこと聞けって言って聞く奴もいないかもしれない、まして、久しぶりに再会する、帝城高校ナンバーワン、ツーのイケメン男子に、全校のアイドル葛城舞がいるのである。
そう簡単には皆も解散しないだろう、、、
困り果てている、ホトを見て俺は手拍子を始める。
パンパン パンパン
直ぐに舞も気づき、一緒に手拍子を打ち鳴らし始める。
楓真も同じく手拍子する。
次に俺は足で朝礼台を踏み鳴らす。
パンパン!ドン! パンパン!ドン!
『みんな一緒にやろうぜ!!』
俺が叫ぶ。
リズムは、すぐに皆に伝道して、同じく手を2回叩き、足を踏み鳴らす。
パンパン!ドン!!
パンパン!ドン!!
そして、俺と舞で歌いだす。
帝城高校校歌を!!
(楓真は既に、KABUKIエンターテイメントと契約があり、勝手に歌ってはいけないことになっているようだ。リズムだけ刻み参加する)
そこにいる全員で、手拍子と足踏みしながら、校歌を歌い始める。
「「「「帝城~帝城~我らが学び舎~我らの未来を創る~友に感謝を~我らが学び舍~帝城~帝城~帝城高等学校~」」」」
大合唱だ。
校長室にいる、舞のご両親、校長先生が窓を開け、こちらを見ている。
校長先生が一言
「このような、素晴らしい生徒は我が校にとっても初めてではありませんかね、、、彼はもしかしたら将来この日本をしょって立つ男に成長するかもしれませんな」
仁父さんが「以外に遠くない未来かもしれませんな、、、」
っと、ぼそりと呟く。
お昼休みの校歌大合唱も、きっちりと3番迄歌い上げ、皆も授業開始のチャイムを聞き、それぞれ教室に戻っていく。
当然の様に、俺達3人にそれぞれ、声をかけて名残惜しみながらも校舎に戻っていく。
ホトとミッドとタカヒコだけが、開始チャイムが鳴ったのにその場に残る。
俺は心配して「おい、授業開始だぞ、早く教室に戻れよ」
常慶貴彦が、堂々と
「さぼりだな、どうせ俺達は推薦狙ってるわけでもないし、授業より実践派だからな」
ホトとミッドも嬉しそうにうなずく。
HANZOのメンバーが全員揃う事も実に久しぶりだ。
まぁ、たまにはいいか!!
校舎内に入るのは、流石に俺が、気が引けたので、校門のシゲさんが待つ、車の所で近況を話し合った。
まず俺が一番気にかかっていた桜井優香さんのその後の容態を聞いた。
ミッドが答えてくれる。
「手術後も順調で、普通に生活できるようになって、3年に進級するころには戻ってくるらしいよ。」
「そうか」
思わず俺は嬉しかった。
友人の命を繋ぎとめることが出来たのは、心より嬉しく感じた。
マルガッス・シュタインさんには、感謝しなくてはいけないな、、、、
ホトがでかく丸い体をゆすりながら、俺に話しかけてくる。
「それより、将軍の方はどうなんだ?」
「どうって?」
「まさか、【誓い】を忘れたわけじゃないだろう」
「ああ、その件か、、、そっちは大丈夫。いろいろ大変だけど、やれるだけの事はしているつもりだ。」
「うまく言えないが、俺を信じてくれとしか今は言えないよ」
タカヒコが銀縁眼鏡を光らせながら、キラリンとメガネの淵を光らせて
「それだけ聞ければ、何も言う事はない。」
「俺達もそれぞれに走り始めている。」
「期待してくれていいぞ。」
俺は今日一番の、笑顔で皆に答える。
「おお、こき使ってやるから、覚悟しとけ!!」
「「「「望むところだ!!」」」」
俺は思わず、青春だな、、、などとセンチメンタルに思ってしまう。
一人舞は、現実的に今後の我が家の過程状況、自分の進路、子供の世話などを考えていた。
こういう時は、女性の方がより現実的なのかもしれない。
男は子供を実際、産むわけでもなく、お腹の中に10ヶ月も育むわけではないから、仁父さんが言っていたように実感がわかないの事実でもあるかもしれないが、父親としての責任はしっかり持っているつもりだ。
いつもの事だが、彭城楓真だけは、ただそこにいるだけで存在感があったが、何も言葉にはしなかった。




