【HANZ|O《_》】の大きな巨人
俺達6人が、校門を出るあたりから徐々に、女子が後を着いてくる数が増えていく、、、
他校の制服を着た女子高生もちらほら見える。
うちの学校は模試だったから早く終わったが、他校まだ、授業あんじゃねぇの?
それとも高校3年生で、選択授業で終わったとか、、、
受験勉強した方がよくねぇ、、、
俺と諷真を先頭に舞を囲むように歩くいつもの自然な隊形だ。
スタジオに着く頃には30人位がついて来ていた。
スタジオの支配人【ゴンゾウ】さんがため息交じりに俺達に話しかけてくる。
「あんた達、ちょっと有名になりすぎたようよ。」
「ご近所から、高校生の貯まり場になってるだの、ごみが散らかってるだの、未成年がタバコ吸ってるだの、ある事ない事 苦情の嵐よ、あんたたちが来た次の日はね」
ミッドがカウンター越しに【ゴンゾウ】さんに顔を近づけて
「すいませんね~俺達からもちょっと言っておきますから~」
こういう話はミッドの役目だ。
だが、今回は【ゴンゾウ】さんも相当困っているみたいだ
「スタジオに来るときは、取り巻き一切なし。これが飲めないなら出禁ね。」
『えっ!!』
「出禁は厳しくないっすか」ミッドが頼み込んでいるが、ゴンゾウさんは優しく諭す様に俺達に話しかけてくる。
「メジャーになるバンドは練習するスタジオにもランクがあってね、あんたたちはもうこんなちっちゃなスタジオで練習するレベルじゃないって事よ」
俺は一歩前に出て、「ゴンゾウさんの言う事もわかります。ですが、僕たちはここが好きなんです。練習日は極秘にして、バラバラに集まるようにするんで、何とか許可してもらえませんか?」
ゴンゾウさんは少し考えて
「将軍にそこまで言われちゃね~」
「内だってさ~商売だし、将来あんた達の誰かがメジャーになったら聖地巡礼とか言って、ここも有名になるかもだし~」
「それじゃ、条件として私の甥を警備兼整理員として雇ってあげる事」
「武士ちょっと、着て頂戴。」
ドス、ドス、ドス
奥から何か大きいのが出て来たぞ。
「この間話した、HANZOのメンバーよ、挨拶なさいな武士」
「よろしくっす」
低い低いよ声が、、、
デカいよデカいよ、身長が、、、
怖いよ怖いよ顔が、、、
奥から出て来たのは、土門 武士高校1年生だというが、見た目には20歳過ぎの立派な成人男性以上、下手するとおっかないおっさんに見える。
舞が俺の腕に手を巻きつけてくる。
そりゃ、こえぇよな、俺でもこえぇもん。
身長2メートル、体重90キロ、特技:アスリートファイトだそうだ、、、
ちなみにジュニアの格闘技選手権で全国優勝しているのだとか、、、
驚く事にホトが始めに話しかけた。
「でかいし、怖いねその顔。俺も真逆の意味で人の事言えねぇけどさ」
「よろしくね、俺達みんな2年だから1っ子上になるのかな、俺の事はホトさんって、読んでよ。」
(こいつ以外に図太いんだな、、、体だけじゃなく、、、心も、、、)
武士君は高い身長を曲げて「うっす。」と挨拶する。
俺が何とか立ち直りゴンゾウさんに物申す。
「雇ってと言われても、俺達高校生ですよ、そんな金あるわけないじゃないですか」
ゴンゾウさんはあっけらかんと
「出世払いで構わないわよ、あたしの目に狂いはないの。」
「あんた達、どういう形にしろちゃんと成功するわよ」
「甥の武士をその仲間に入れてあげて頂戴っているのよ、それにこの子、役に立つわよ~」
「武士早速、外の害虫軍団を散らしてきなさい」
「うっす。」腰を曲げて出入り口の扉を潜り、外に出る。
2メートルの怪人が、姿を現すだけで、空気が変わる。
ピンク色に染まっていた空気が、一瞬にして漆黒の暗闇に変化する。
魑魅魍魎 妖怪王の登場だ!
女子高校生たちは一種異様な姿を見ただけで、明らかに動揺して逃げ越しになってる。
格闘技ジュニアチャンピオンが物を申そうとした頃には、一人もいなくなっていた、、、
「う~」
一人、寂しく唸る。
俺がその様子を見ていて、「すげぇな、武士って奴」
ミッドがゴンゾウさんに真剣に話しかけている。
「ゴンゾウさんの条件はお飲みしましょう、しかしHANZOにもイメージと言うものがあります。」
「武士君はあくまで裏方として、動いてもらいます。」
「それと、警備や整理する時の服装は私が用意したものを着てもらえますか?」
ゴンゾウさんはにっこり微笑んで「それで、オ~ケ~よ~」と嬉しそうに答える。
まぁ、俺達のせいでゴンゾウさんに迷惑が掛かっているのは事実だし、気の優しいゴンゾウさんがあそこまで言ってくるのだから、俺達の知らない所では、自治会やら近所付き合いやら、商店街の付き合いやら、大人の付き合いで相当苦労してるんだろうなと思った。
ホトは持ち前の明るさで、朗らかに
「それじゃ、武士君はうちの仲間と言う事で、後でラインに入ってもらって連絡交換しよう」
「時間が持ったないから、今は練習しようぜ」
っと、みんな楽器を持ってスタジオに入ろうとしたら、もう練習してる奴がいた。
諷真だ。
今までのやり取りはこいつにとっては、あまり意味がない事なんだろうな、、、
それより、歌の練習をしたかったのだろう、、、
口下手で、身勝手な振る舞いを勘違いされて、離れて行った友人や損をする事も多いと思うが、こいつはガキの頃から変わらない。
こういう奴なんだ!!
そして俺はこいつがやっぱり好きだ。
諷真の事を本当に分かっている奴はHANZOにしかいないかもしれない、、、
それでもこいつは歌い続ける。
自分の夢の為に、、、
みんなそれぞれ楽器を準備してアンプにつなぐ、ホトが諷真の歌に合わせてリズムを刻みだす。
合わせてタカヒコがJAZZっぽく、ベースを入れ込む。
俺と舞が一斉にギターとシンセサイザーを奏でる。
諷真はやっと来たかと言う感じで、チラッと俺を見る。
段々調子が上がっていく、指も滑らかに動きようになるとこいつがやらかす。
タカヒコがいきなりベースの伴奏にアドリブぶち込んでくる。
舞がそれに答えるように、鍵盤を叩き、細い足でリズムを取る。
俺も、セッションに加わる。
キュウィイイイーン!キュルキュルキュンキュン
エレキギターを速弾きする。
最後はやっぱりこいつだ、諷真がこんな高い音出ねぇだろって、音を大声量で引っ張る引っ張る。
みんな汗だくだ、ミッドは次のMVに使えるように、ショット写真や動画を預けてある機材で、取り始める。
汗が飛び散りベースを弾くタカヒコ
豪快にドラムを叩き、シンバルを音高く鳴らすホト
綺麗で長い指が奏でる、鍵盤を叩く黒髪の美女舞
リードギターを弾きながら、諷真とボーカルを合わせる俺
諷真は何時何処で撮っても絵になる素材だ、撮影する側としては一番困らないだろうな
休む事無く、2時間練習をぶっ続けでやる。
ゴンゾウさんがポツリと
「やっぱり、HANZOは別格ね、、、」
陽も暮れ、外は真っ暗になる頃、練習は終わった。
練習の回数は週一ペース。
後は個人練習とネットでやり取りする。
だからか、この週一の練習は中身が濃い。
半端なく疲れる。
体育会系の部活並みだ!
ミッドはこれから、撮影した画像や動画を加工して曲に合わせてアップする。
恐らく、今夜は徹夜だろう、、、
皆でゴンゾウさんに挨拶してスタジオを出る。
う、後ろにこえぇのが付いてくんぞ。
ホトが暗闇でも朗らかに
「どうしたの武士君、君の家はここじゃないの?」
武士が暗闇の中で異常に高い位置から見下ろしてくる
「駅まで、送ります。暗いんで」
タカヒコが笑いながら「子供じゃないんだから、大丈夫だよ」「送るっす」顔をタカヒコに近づけて譲らない武士、、、
結構頑固もんだなこいつも、、、
なんかそういうのが集まんだよな~