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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
29/107

俺達が作るデビュー曲

土曜日の朝、朝7時。


俺は、自分で作った詩を見ながら、食堂でツネさんの作ってくれた朝食をモリモリ食べていた。


そこに、諷真がやってきた。


「ちゃんと寝たか?」


俺が聞くと


「寝た」


とだけ帰ってくる。


「将軍は寝たのか?」


(えっ、俺の事心配してるの?)


「ああ、ちょっとは寝たから大丈夫だ。」


「それより、この詩を見てくれよ」


俺はほぼ徹夜で書き上げた、詩を諷真に渡した。


サビは散々悩んで


《偽りのない正義の目覚めは、心が通う法律成り》


と言う文句を何度もサビで使う。


曲名はJustice Law(正義の法律)という題名にした。


諷真は、何度も何度も読み直してくれた。


「いいなこれ」


「あと、舞が昨晩遅くに、俺達が作った曲をアレンジしてくれた。」


「早いとこ飯食って、アレンジ済ませてミッドに渡そう。」


「わかった」


俺達は急いで、朝食を取り、地下のスタジオに向かった。

シゲさんに、ミッドが着たら案内をお願いして


スタジオで、音合わせから始まり、曲撮りを始める。

舞のアレンジと、俺の書いた詩を曲に合わせて、修正しながら、何度も何度も繰り返される同じ作業。


あっという間に10時近くなり、ミッドの来訪をシゲさんが家内モニターで知らせてくる。


今更だが、とにかくデカい家なので、ほぼ何処の部屋にもつながる様にインターフォンモニターがある。


モニターは画面を移したくない時は、ボタンを押せば音声だけになる。

風呂上りなんかは、助かる機能だ。


程なくして、シゲさんに案内されて、ミッドが地下スタジオにやってくる。


ミッドは始めから、興奮気味でぶっ飛ばしていた。


「なになに、この機材。これ凄い凄すぎる。」


俺は沸点高いミッドに、冷蔵庫から冷えたお茶をペットボトルで渡し


「日曜日なのに、悪いな」


「いいって、いいって、将軍の家の地下にこんな所があるなんて知らなかったよ!!」


「まっ、お茶飲んで」


「う、うん、ありがとう」ゴクン。


一息つく、ミッドが落ち着いたところで俺が話す。


「ミッド、時間が無い。驚かずに迅速に行動してほしい。」


俺の真剣さから、ミッドは事の大事さを感じたらしい


「す、すまない。もう大丈夫。話して」


「諷真のデビューが決まった。」


「月9ドラマの主演とオープニング曲を歌う事になった。」


「!!」


ミッドは驚くが、言葉としては何も言わない。


「それで、主演は置いといて、曲作りに専念したい。」


「明日までに、デモを送らなくてはならない。」


「曲と詩、アレンジは大体決まっている。後はミッドの力が必要だ。」


「ここまでいいか?」


「り、了解」


「それじゃ、録音した、曲を流したうえで、舞のハモったアレンジ聞かせるよ」


「うん、お願い」


スタジオ内に響き渡る、諷馬の響き渡る高い声と俺のギター。


ミッドは黙って聞いている。


曲が終わる。


「良い曲だね。」


ミッドは素直に感想を述べる。


「それじゃ次に、今の曲を聞いて舞が、病室で録音した声な」


高く響く、女性の声、、、、


ミッドは真剣な表情で、聞いている。


歌が終わると、ミッドは


「うん、大体イメージ湧いて来たよ。お嬢(舞の事)のハモリはそのまま使っちゃおうよ。」


「病室で、スマホで録音したものだぞ」

俺が、思わず言わずにはいられなかった。


「うん、大丈夫。ここの機材借りて良い?」


「ああ、それは何の問題も無い」


「それじゃ、全然問題なし。お嬢の声を加工して音質上げて、曲自体の厚みも増して、それぞれの楽器入れて、曲全体を加工するよ。『かっこいい感じ』がいいよね」


「デモレベルなら、今日中には出来るかな?」


上着を脱いで、シャツの腕まくりをしてやる気モード全開のミッドだ。


「俺達に何か手伝えることあるか?」


「うん、大丈夫。集中したいから僕一人だけにしてもらっていい?」


「わかった、俺たちは上にいるから、用があったらそこのモニターで3番を押してくれ」


「了解、なんか久々に燃えるなぁ~」


ミッドは自分の持ってきたパソコンを機材につなぎ、セットアップし始める。


諷真がミッドに「すまんな」と声を掛ける。


諷真が謝っているよ、、、


それだけ、こいつなりに賭けているんだな、この仕事に、、、


挿絵(By みてみん)


俺と諷真は1階のメインリビングに行き、10人は座れるソファに腰かける。

相変わらず、体が沈み込む量、半端ないって。


向かい合って、諷真と座ると、ツネさんが冷たい炭酸の飲み物を入れて来てくれた。


飲み物を飲みながら、諷真に聞いてみる。


「っで、どうやってオーデション通過したんだよ」


「お嬢の言う通りやった」


「って、事は台本無視したの?」


「ああ、ただ睨みつけただけだ」


「それで、よく通ったな」


「俺もそう思う」


まぁ、こいつの雰囲気とオーラの見た目に加えて、歌を聞けば、その気になる大人は大勢いるかもしれないな、、、


それとやっぱり、KABUKIエンターテインメントの名前か、、、


この世界でも、大人の事情が(から)んでるんだな。


「それじゃ、台本もある事だし、演技の練習もやってみるか?」


「ああ」


俺はリビングに設置してある、プロジェクターを機動させスクリーンを降ろし、そこに台本を映す。


こう言う設備があるのも恵まれているんだろうな、、、


でも、俺が生まれた時からある物だし、ある物は使わないとな。


「裁判後半の一番メインになるシーンからやって、そこから役作りをして、落とし込もうぜ」


俺は曲作りと同じ方法で、演技も練習しようと持ちかけた。


もちろん俺は、作詞家でもないし演出家でも俳優でもない。


全部、俺の個人的な感覚だ。


「始めは声作りだな、この天生(あもう)悪役代議士を名指す所で音を取ろう」


「わかった」


「OKじゃ、《天生代議士あなたの悪事はすべてあばいたよ》このシーンで音を取ろう」


「天生代議士あなたの悪事はすべてあばいたよ」


「もうちょい、ゆっくり喋って、低めのキーで」


「天生代議士あなたの悪事はすべてあばいたよ」


「天生代議士で、一拍あけよう」


「天生代議士  あなたの悪事はすべてあばいたよ」


「よし、じゃ次、動きもつけて、ここは裁判所の法廷だと思って」


諷真は少し、自分でシーンをイメージして


背筋をピンと伸ばし、直立不動になり、右足を前に左足を右足の後ろに重ねる様に立つ。


(かっこいいなぁ、モデルよりいいんじゃねぇ)


そして楓真は、ビシッと右手を真っすぐに伸ばし、人差し指を突き付け、ハンパク間を取って、僅かだが、間が空くが、諷真の顔から目が離せない。


鋭い目つきで、睨む。


「天生代議士 あなたの悪事はすべてあばいたよ」


パチパチパチ


「素敵よ~」


唯母さんが、後ろで見ていたようだ。


「私が諷真君のファン第1号になっても良いかしら?」


「もちろんです。」


(こいつちゃんと、役者とプライベート分けてんな)


「それでは、僕は2号で良いかな?」


仁父さんもいた。


「おはようございます。」


俺は仁父さんと唯母さんに挨拶する。


「武将君、おはよう。これから舞の所に行くけど一緒にどうかな?」


俺は、少し考える。


「行って来い」


楓真が背中を押す。


「こっちはもう大丈夫だ、少しは将軍も自分の事を頑張れ」


「ああ、ありがとう。それじゃ、ちょっと行ってくるよ」


ツネさんに、地下室で作業している、ミッドの昼飯を頼んで、仁父さんたちと病院に向かった。



病室に行くと、驚いたことに舞は、ベッドに机を置いて、勉強していた。


「あら、お父さんにお母さん、武将も来てくれたんだ。」


唯母さんが「舞、昨日出産したのに、もう勉強なんてしてるの」


「お母さん、これでも私、もうすぐ受験生なんですよ」


仁父さんが「舞は何処の大学、目指しているんだ?」


「行くのなら、当然、東京大学よ!」


(えっ!!マジ?)


(出産、子育てしながら東大目指すの、、、なんか、舞ならやりそう、、、)


仁父さんは全く驚かずに愛娘を見やり


「うん、目標は高い方が良いね」


(お義父さん、それは自分の娘を過小評価してますよ、、、目標じゃなくて、舞ならマジで行くかもしれませんよ)



「だ・か・ら、勉強の邪魔だから、帰っていいわよ。」


愛妻は、無碍(むげ)も無く、退場を命ずる。


結局、俺と仁父さんと唯母さんは、尚武(しょうぶ)結紬(ゆいつ)の顔を見て、看護婦さん達に唯母さんが、一生懸命挨拶して回り、そして、帰宅の途についた。


病院にいたのはわずか30分ほどだった。



帰宅すると、デカいリビングで、一人演技の練習をしている諷真がいた。


俺達は、そっと邪魔しない様に、リビングの端にある和室で、ツネさんの入れてくれた、お茶をすする。


俺から見ても、諷真は多彩な才能を持っているなぁ~


っと、実感する。


僅か、少しの時間でかなり、演技も確実に上手くなっている。


始めは、セリフの棒読み状態だったのに、今は役に入り、なり切っている。


自分で自分を成長させるのが上手い。


舞やミッドにも言える事だが、天才に共通しているのは、集中力が半端ないって事だ。


ここ一番の集中力、持続力は当然ながら、並の人間常識を遥かに超える。


今でさえ、俺達が帰宅した事に、諷馬は全く気付いていない。



いい機会だったので、俺は仁父さんに聞いてみた。


家では、一切仕事の話をしない仁社長。


でも、これだけはどうしても聞いておきたかった。


「お義父さん、【取締役】について聞いても良いですか?」


「おっ、やっと聞いて来たね」


以外にも、喜んで相談に乗ってくれるようだ。


「簡単に言うとね、株式会社の取締役は、会社法で3人以上は必ず選任しなくてはいけないんだ。」


「主に社長や会長がなる、【代表取締役】。業務に責任を持つ【執行役員】。それと【取締役】、所謂(いわゆる)平取(ひらとり)】と呼ばれる3種類に大きく分けられるんだ。まぁ、あと【監査役員】もいるけどね」


「代表取締役は、当然ながら、業務全てに全責任を負う人の事だね」


「執行役員は、業務命令や指示を出し、責任を持つ人の事。」


「平取は、身内の会社とかだと、単なる数合わせ、節税に使われる事が多いね。それなりの会社だと、取締役でも大出世と言われるくらいじゃないかな、ただし取締役には任期があって、株主総会などで、解任される場合もあるんだ。」



「一般的に、副社長や常務、専務といった名称が付く人も、取締役だね」


「だから、会社をいかに設ける事が出来るようにする(・・)のが、取締役でそれぞれの役職で責任の重さが違うと言ったところかな?」


「ちなみに、取締役には失業保険は降りないんだ。」


「それだけ、普通の社員とは違った責任を持たなければならないと言う事かな?」


「それにね、取締役はタイムカードも無ければ、いくら休もうが関係ないんだ。逆に言うと、業績が悪ければ休みも取らずに働けって事になる。」


珍しく、長く説明してくれる社長だが、半分くらいしか意味が解らん。


要は、会社を儲けさせて、そこで働く従業員の生活を守る責任を持つと言う事かな、、、

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