表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
28/107

デビュー

俺と仁社長は、渋谷にある本社に戻り、それぞれ仕事をこなし、俺は18時には会社を出ていた。


もう一度、舞の病院に行き、改めて我が子との対面を果たす。


そっと、唯母さんが俺に寄り添い、話しかけてくる。


「武将さん、ここがゴールではありませんよ。これからがスタートです。」


「はいっ」


「でも、安心して下さいね、私達もお手伝いしますからね」


「お義母さん、ありがとうございます。」


「でも、この子達はとても恵まれているのよ、経済的には困らない、両親は若く健康で仲良し、贅沢な自宅もあって、執事やお世話してくれる人もいる。」


「世の中には、生きていくのでさえ大変な人たち、両親の離婚や経済的に苦しんでる子供達は数多くあるのよ。」


「武将さん、あなたは自分が特別なんだと言う自覚を持って舞や子供たちを大切にしてあげて頂戴ね」


心に染み入る。


この半年で、俺がKABUKIコーポレーションの創始者の曾孫(ひまご)だと言うだけで、どれだけ救われたか、どれだけ厚遇されたか、、、


今日一日取ってみたってそうだ。


都市銀行の頭取二人が普通の17歳の高校中退のガキに挨拶するわけがない。


蛇目野社長だってそうだ。俺が、火吹家当主だから、言う事を聞いてくれる。


俺が普通のガキだったなら、どうだろう、、、



そうだ。


俺はとても恵まれているんだ。


両親は他界していないが、友に恵まれ、妻や子供たちに恵まれ、親族に恵まれ、良き大人たちが近くにいてくれる。


生まれた時から、俺は既に恵まれていたんだ。


そして、この俺の子供達も恵まれてこの世に誕生してきた。


道を踏み外さないように、亡き父や母が俺にしてくれたように愛情を一杯かけて育てよう。


ここからが、俺の本当の意味でのスタートだ!


「わかりました。お義母さん、迷った時は頼っても良いですか?」


「ええ、もちろんかまいませんよ」


優しく微笑んでくれる、唯母さんだ。


やはり、心に染みる。



舞は1週間は入院するらしい、唯母さんがついていてくれるから安心だが、出来るだけ毎日少しでも会いに来ようと思う。


そこに、病院の通路の向こう側から一目でわかる奴がやってきた。


彭城諷真(さかきふうま)だ。


実に堂々と優雅に、歩いてきやがる。


絵になるどころか、看護婦さんでさえ、皆振り向くぞ。


俺の前まで来るまで、一言も口をきかず、愛想笑いもしない、勿論会釈なんて想像もつかない。


そんな不器用な奴が、俺に一言


「おめでとう将軍。」


っと、綺麗な声で囁きかける。


女性なら、この声と顔だけでイチコロだな、、、


「ああ、ありがとう、諷真お前の方は、オーデションどうだったんだ?」


そっけなく


「ああ、合格した」


(えっ!!)


「マジか!!すげぇじゃねぇか!!」


唯母さんが、口に手を当て


「病院ですよ」


っと、注意してくれる。


「すいません、お母さん」


「でも、ちょっと聞いて下さい。」


「諷真が月9のドラマ主演に抜擢(ばってき)されたんですよ!」


唯母さんが眼を大きく見開いて


「えっええええー!!」


っと、大声で悲鳴の様に、叫ぶ。


思わず俺は「しぃ~」と人差し指を口に当てる。


唯母さんも頬を赤らめて、恥ずかしがりながら


「凄いじゃない、諷馬君。スターへ一直線ね。私、未来のスターと一緒に暮らしているのね♡♡♡」


仁父さんには言えない、唯母さんの女性らしさを始めて垣間見た感じがする。


諷真は変わらずに


「将軍や舞の言った通りにしただけだ。」


「それに俺は歌手だ」


「まっ、オープニング曲も俺がやる事になったからいいか」


(えっ、な・ん・て言ったの?)


「ドラマのオープニング曲も、やるのか!!」


「きゃぁ、きゃぁ、凄いよ、凄いよ、諷真君」唯母さんも興奮マックスだ。


また、こいつは爆弾放り込みすぎだっつうの


「なんか、決まっていたアーティストが、病気になったらしくて、ちょっと歌って見せたら、監督とスポンサーのお偉いさんがやれってうるさくてな、何か決まっちまった。」


(おいおい、そこはもっと謙虚(けんきょ)に話せよ)


突っ込みどころ満載の天才アーティストだ。


「それより、将軍の子供見せてくれよ」


「あ、ああ」と言い、ガラス越しに足にバンドがはめられて、親の名前が書かれた子供たちが寝かされてる部屋の前まで案内する。


「左端の男の子と女の子の双子なんだ。」


諷真は、ジッと俺の子供たちを見つめる。


これが、尚武(しょうぶ)結紬(ゆいつ)の諷真との人生に大きな影響を与える、初めての対面だ。


「可愛いな」


「ありがとう、舞にも会っていくか?」


「そうだな」


相変わらず、言葉が少ねぇっての


コンコン


唯母さんが、病室の扉をノックして入室する。


大学病院の完全個室だ。


こう言う所も、経済的に恵まれているからこそなんだなと実感する。


「あら、珍しい諷真じゃない」


舞は弱り切っていた、午前中の舞とは別人の様に普段と変わらず声に力がこもった高音で話しかける。


「俺はこういう時、何と言っていいかわからんが、お疲れだったな」


「ありがとう、一応誉め言葉と受け取っておくわ」


唯母さんが、興奮しながら


「諷真君ね、ドラマの主演とオープニング曲を歌う事が決まったんだって!」


「デビュー前の新人にしては、よく出来た方ね」

こちらも相変わらず、諷真に対して辛辣(しんらつ)だ。


30分ほど、話をし、俺達は自宅に帰る事になった。

後は、看護婦さんが24時間体制で診てくれていると言うので、唯母さんも一端自宅に帰る事にした。

挿絵(By みてみん)


病院の一階には、シゲさんが直利不動で、俺達を迎えてくれる。

ロールスロイス ファントムの前で、、、


周りにいる人たちの目が痛い、、、


高級車に乗り込む、俺達一行。


車は滑るように自宅に向かいゆっくりと走り出す。


車内で俺は諷真に聞いてみた


「芸名とか決めたのか?」


「本名で行く」


唯母さんが、そこでも興奮しながら


「いいわよ、彭城諷真なんてかっこいいじゃない」


俺は唯母さんの興奮をよそに


「ドラマの曲作りはどうするんだ?」


「それが、問題でな明後日までにデモを送れってさ」


「明後日、、、明日は土曜日で休みだから、俺も手伝って仕上げようぜ」


「すまん」


「いいって」


子供の誕生に、諷真の曲作り、TAKKERU新会社設立、仕事の勉強、、、


1日24時間じゃ足りないよ。



自宅に戻ると、仁父さんは既に帰宅していた。


「お疲れ様です。お義父さん。」


メインリビングのソファに腰かける、社長に声を掛ける。

今帰宅したばかりの様だ、スーツ姿に、いつも愛飲しているアルコールも飲んでいない。


「舞と子供の所に、行っていたのかい?」


「はい、丁度 諷真とも病院であって、お義母さんと一緒に帰ってきました。」


仁父さんは、自宅ではほとんど仕事の話をしない。


頭の中を切り替えているんだろうな、俺なんかずっと、仕事のこと考えてるのに、、、


いずれ慣れるのだろうか、、、


唯母さんが、まだ興奮収まらずに


「お父さん聞いて下さいよ、諷真君がね月9のドラマの主演とオープニングの曲を歌うんですって!!」


「ほぅ それは、凄いじゃないか。」


「ありがとうございます。」

諷真は言葉少なく、お辞儀をする。


俺は自室に戻り、スーツを脱ぎ、着替えて自分の愛用ギターを持って、皆がいる大きなリビングに行き諷真に声をかける。


「早速、曲のイメージ作りからしようじゃないか」


諷真は俺を見て


「将軍は飯食ってないだろ」


「ツネさんにおにぎりでも作ってもらうよ、下のスタジオに行こう」


「わかった」


短く答えて、上着を脱ぎ俺と一緒に地下室のスタジオに向かう。


諷真には、火吹家の地下室の事を同居する時に、話していた。


電子ロックの暗証番号は、教えていないが、いずれ忙しくなったらいつでも入れるように、入り口とスタジオの番号は教えようと思う。


そもそも、地下室と言っても何部屋あるのかわからないくらいあり、その全てに電子ロックキーが付いており、それらすべてを把握しているのは、火吹家の金庫番、シゲさんだけだ。


万一に備えて、俺の私室にある金庫の中には、全てを書き示した書類が入っているが、開けた事も無ければ見る気もしない。


そもそも、私室に金庫がある部屋って、何だよって思う。


唯母さんが、言っていた、恵まれた事情と言うものだろうか?


スタジオに行く途中で、ツネさんにお願いして、おにぎりを地下室まで持ってきてもらうように頼んだ。


スタジオに入るなり、俺は諷真に話しかける。


「ドラマが、検察官が巨悪を倒す。っていう内容だから【かっこいい感じ】がいいんじゃね」


「お前的にどんなイメージにしたいんだ?」


「そんな感じだ」


(おいおい、付き合い長いから、俺は分かるけどさぁ、、、)


「お前のデビュー曲にもなるんだから、お前の長所が目一杯出る音域で、誰にも真似できないような、かっこいい歌作りだな。」


「大まかな曲作りは、俺らでやるとして、曲の厚みを増すのや音いじりはミッドがいないとまずいな、明日来れるかLineしてみよう」


俺は直ぐに、スマホを取り出し連絡する。

すぐさま既読が付き、返信が来る。


《ゴンスタ、将軍家?10時でOK?》


《家、よろしく》


「よし、じゃぁ曲のイメージ作りからだ」


こういう時、舞が居てくれるとすげぇ助かるんだが、仕方ない。

今回は俺達で仕上げよう。


それから、3時間ぶっ通しで曲を作っては直した。


途中、ツネさんがおにぎりを持ってきてくれたのを腹に詰め込む。

食事も仕事の一つだ。


「こんな感じで、後は詩だな。明日までに俺が考えておくから、続きは明日にしよう。」


「すまない」


こいつが人に謝る所なんて、俺以外には見た事が無い。

感謝してくれてるんだな、、、


よっしゃ、がんばるか!


デモを録音して、ミッドと舞のスマホに送信する。


ミッドには、曲作りの完成度を上げてもらう為に、舞にはやっぱり彼女の意見が聞きたい。


地下室からメインリビングに上がってくると、もう日にちが変わる時間だった。


仁父さんと唯母さんは初孫誕生を祝ってか、2人で珍しく晩酌していた。


「お義父さん、お義母さんまだ起きてらしたんですか?」


仁父さんが「やっぱり初孫が誕生すると言うのは、嬉しいものでね、つい飲み過ぎてしまったよ。なぁ、母さん。」


「そうねぇ、自分の子供とは違って、責任感が無い分、可愛い部分だけ見ちゃうのかしらねぇ~」


(そんな~17歳の俺に責任押し付けないで下さいよ~)


「武将君が、二十歳を過ぎていたら、是非一緒に相伴(しょうばん)したいところだけどね。」


「その年齢になりましたら、是非お願いします。」


と言い、俺は作詞作りの為に、自室に引き込む。

風呂は、作詞で行き詰った時の気分転換用に取っておこうと今は入らなかった。


自室にも風呂はあるから、直ぐに入れるからな。


曲作りで一番大事なのは、サビだ。


俺の作詞の仕方は、サビを先に決めて、後で周りを盛って行く方法が多い。


今回のテーマは《ヒーロー》かな?


強い、強靭、正義、、、、等々考えてみていると


コンコン


扉がノックされる。


誰だろう、、、


「どうぞ」


と声を掛ける。


そこには諷真がドラマの台本を持って立っていた。


「台本持ってきた。」


「俺も手伝うよ」


「アーティストは、寝るのも仕事だ。喉の調子を整えるのが仕事だ。」


「いずれ、こう言う仕事は専門家のスタッフがやってくれるようになるだろうけど、今回は俺にやらせてくれよ」


「彭城諷馬のデビュー曲は俺が、作詞作曲したんだぜって、子供に自慢できるようにさ」


「すまん、頼む」


「ああ、おやすみ」と言い、台本だけ受け取る。



夜中3時過ぎ、やっと大まかな詩は出来上がった。

シャワーだけ、浴びて寝ようとする。


俺のスマホにメールが届く。

見てみると、舞からだ


さっき送った、諷真の曲のイメージに対するコメントと舞の声で、ハモる様に曲のイメージを修正して録音されて添付データで送られてきた。


俺と同じ事を同じ時間に、愛する妻もやっていたのか。


思わず愛おしさが沸く。


「ありがとう、愛してるよ」


っと、照れ臭かったが、返信すると直ぐに


「私の方が、あなたより武将の事を愛してます。」


って、帰って来た。


負けず嫌いなんだろうけど、そこで張り合う必要性ある?


「おやすみZZZ」


っと、送ってその晩は寝た。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ