思春期の暴走と縁
俺が、社会人になって早くも半年が過ぎようとしていた。
相変わらず俺は、毎日忙しく働いている。
蛇目野社長と話し合っていた、新会社設立の件は、前向きに実現に向けて、葛城仁社長と話し合いが続いているとの事。
会社を立ち上げる。
一つの新しい事業を始める大変さを目の辺りにして、正直驚きしかない。
会社を作る事がこれ歩大変な事は思いもよらなかった。
まぁ、規模にもよると思うが、今回の事業計画では数十億の金額を投資しての新会社、新ブランド設立構想だ。
当然、失敗など許されない。
だが、事業に絶対安全は無いのだ。
リスクを背負って、挑戦するからその責任を一身に負うからこそ【社長】は給料が高く、皆の見本とならねばならない。
この社長と一緒に会社を大きくしたい。
こういう人間になりたい。
そういった、気分に出来るものが社長となる。
その資格無くして、社長となった会社の末路は【悲惨】になるだろう。
勉強していてわかったのだが、起業して30年続く会社は驚く事に起業した会社の0.1%ほどしかない。
3割以上の会社は起業して3年以内に無くなっているという事実。
驚かされる、現実の数々、、、
その現実の中で俺は、どう戦って行くのか!
それをひたすら考え、勉強する。
ー帝城高校ー
季節はやっと冬が終わり、春になる少し前。
2年1組特進クラスでは、いつもの様に授業が行われていた。
葛城舞(18歳に満たないため、戸籍に入っていないので旧姓で名乗っている)のお腹も妊娠9か月を超える頃になり、一目見ただけで、妊婦だと分かるほどお腹は大きくなっていた。
まぁ、異様なのはここは私立とは言え進学校の高等学校で、来ている服装は、列記とした制服と言う事だろうか、、、
女子高校生が妊婦で授業を受けている絵はさすがに、異常と言えば言えるかもしれない。
葛城舞は中央の一番後ろの席にゆったりと腰掛けられるよう配慮されていた。
特進クラスは、余程成績が落ちない限り、ずっと同じクラスで3年間を過ごす。
舞が今いる級友共、既に2年間一緒に過ごしてきた友人ばかりだ。
妊婦になっても、成績が全く落ちないのは流石と言うより呆れてしまうと同じクラスの常慶貴彦等なら言わずにはおられまい。
タカヒコは司法試験合格を目指して、勉強している。
舞とは学年トップを争うライバルである。
キンコーンカンコーン
丁度、昼休みの時間だ。
席を立ち、購買に昼食を買いに行く者、持参の弁当を用意する者。
様々に行動し始める。
そんな中
帝城高校3年生の男子が4人舞たちのクラスに入ってきた。
「お、いたいた。」
「マジかよ~妊婦だぜ!」
「腹でけぇなぁ~」
突然入室してきた3年生4人のい内、3人が葛城舞を見て騒ぎ立てる。
舞は全く無視。
3人は、更に冷やかしをエスカレートしてきて
「なぁ、どうやったら子供って出来るんだよ」
「教えてくんねぇ~」
等とふざけ始めた。
一緒に来た3年生の中の一人だけは
「なぁ、止めようぜ、こんなことは、、、」
っと、他の3人を止めようとしていたが、一向に冷やかしが止まる気配を見せない3年生の3人。
常慶貴彦が、銀縁の眼鏡を左手で押しやり、席から腰を浮かし、立ち上がりかけた時、、、
「ここは2年1組です。先輩達のクラスではありません。」
「出て行ってください。」
舞の親友の遠藤美月が、席を立ち3年生に向かって大声で叫ぶ。
途端に、クラスにいる級友たち、男女関係なく抗議し始める。
「そうだ、出て行け!」
「舞を馬鹿にするやつは、出て行きなさい。」
「冷やかしは、お断りですよ先輩!」
クラス中が、3年生の3人を排除に掛かる。
「帰れ!帰れ!帰れ!」
「帰れ!帰れ!帰れ!」
「帰れ!帰れ!帰れ!」
思わぬ反撃にあった、3年生たちは逃げるように教室を出て行く。
そこで、葛城舞は座ったまま悠然と
「皆さん、ありがとうございます」
と感謝を述べる。
ガタンと席に座る常慶貴彦。
当然だが、舞を庇う為に立ち上がったのだが、級友達の思いやりに出番を無くしたのだった。
思春期の高校生にとって、妊婦が学校にいるだけで興味の対象になるのは必然。
しかも、対象者は学校一の美人でマドンナ【葛城舞】である。
今日の様な、騒動も初めてではないが、致しかたない部分もあるだろう。
だが、舞の心臓はこんな事で、決して傷ついたり折れたりは絶対しない。
そして、授業も終わり、帰宅の時間になる。
学校の教員用駐車場には、いつもと同じくロールスロイス ファントムが止まっていた。
その横には、白い手袋をはめた昭和の執事然とした直立不動のシゲさんが立って待っていた。
舞は、武将がいなくなってからはいつもタカヒコが、車までエスコートしていた。
舞とタカヒコが、校舎から外に出ようとした時、声がかけられた。
昼休みに、騒ぎ立てた3年生4人のうちの一人だ。
タカヒコがスッと、舞の前に出て先に声を掛ける。
「何か御用ですか?先輩」
「昼休みの事をきちんと謝りたくて、止めたんだけど皆騒ぎすぎちゃって、、、」
「君には嫌な思いをさせてしまい心から謝るよ」
「すいませんでした。」
舞は大きくなった、お腹を支えながら
「なんで、先輩一人だけ来たんですか?」
気の優しそうな、先輩は
「他の連中にも謝りに行こうって、声を掛けたんだけど聞いてもらえなくて、、、だからせめて僕だけでもと思って、、、」
「・・・・先輩は卒業後、どうなさるのですか?」
舞は全く関係ない事を話した。
色白で顔にそばかすが残る先輩は
「僕の家は、そのシングルマザーだからさ私立の高校に通わせてもらった上に進学は望めないから、近くの工場で働くよ、母親にも少しは楽させてあげたいからさ」
「それに、僕には姉がいて、その姉が丁度君と同じように子供を授かっていてね、、、君はこの学校じゃ有名人だからさ、皆が騒ぐのもわからなくもないんだけど、、、女性が子供を産むのがどのくらい大変か身近に僕は知っていたんでね」
人の好い先輩は、自分の事を一生懸命喋ってくれた。
せめてもの罪の償いのつもりなのか、元々の性格故か、、、
どちらにしても悪い印象は無かった。
舞が、色白の先輩を見て
「先輩、お名前聞いても良いですか?」
「ああ、これは失礼したね、僕は3年3組の安藤聡って言うんだ。」
舞は鞄の中から名刺を取り出し
「良かったら、この会社に就活行ってみません?」
当然ながら、夫である火吹武将の名刺だ。
「京仁織物株式会社って、高卒の僕が行けるような会社では、、、」
「火吹武将君、、、たしか、君の、、、」
「ええ、私の父の会社なの、連絡しておきますから一度面接だけでも、受けてきたらどうですか?」
「えっ、それはよろこんで行かせてもらいたいけど、僕で本当に良いの?」
安藤聡はかなり動揺していた。
舞は大きなおなかを支えながらも、毅然と女王様の様に
「ええ、安藤先輩なら問題ありません」
太鼓判を押す。
「ありがとう、それじゃ行くだけでも行かせてもらうね」
感謝しながら、去っていく安藤聡先輩を見てタカヒコが一言
「ヒトの縁なんて、何処で繋がるかわからないものだな」
「もしそれを仕事にできたら、とても幸福な事じゃないかしら」
「そうだな」




