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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
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新会社設立

渋谷区にある、京仁織物株式会社本社ビル15階の最上階。

社長室にある来賓室の個室。


俺と仁社長が横に並び座り、正面にはジャメノ靴製造会社 社長が座る。


ジャメノ社長が、初めて、俺に名刺を渡してきた。

珍しく俺は慌てて、自分の名刺を500円で買った名刺入れから急いで出して、名刺入れの上に載せて、ジャメノ社長より先に自分の名刺を渡す。


そして、ジャメノ社長の名刺を両手で、受取名前を確認する。


代表取締役社長蛇目野 勝弘(じゃめの かつひろ)と書いてあった。


蛇目野社長は俺の名刺を同じく両手で、受取声を出して読む。

「火吹武将君、良い名だね」


俺は「ありがとうございます」とだけ答える。


蛇目野社長は、身を乗り出してそれでは仕事の話をしようと言って、俺をじっと見つめる。


俺は「よろこんで」と蛇目野社長の目を真っすぐに見つめ受ける。


蛇目野社長は、話を続ける。

「新しく、会社を出来れば、京仁織物さんと共同出資という形で作りたいんだが、どうだろうか?」


こういう話になると最早、俺の手には余り過ぎる。


葛城仁社長が、優しくスマートに話に入って来る。

「どういった意味で、その様なお考えになりましたのですかな?」


蛇目野社長は恥ずかし気に頭をかきながら

「もう、恥も外聞も無くお話ししますが、理由の一つとして、京仁織物さんとのさらに強固な関係を築きたいと言う事。」


「新しいブランドを立ち上げるとなると、我が社にとって、現在降ろしているメーカーさんの敵になると言っているような物です。それは避けたいのです。」


「そして、新会社には火吹君を取締役として迎えたい。これは葛城さんもお分かりとは思いますが、KABUKIコーポレーションとのパイプを太いものにしておきたいと言う大人の事情です。」


「最後に、火吹君が指摘した様に我が社は古い体質のまま、親族経営を続けてきた結果、悪習が蔓延り(はびこり)蔓延(まんえん)した、古い会社です。これを改善するには外側から強い力が必要だと判断しました。」


「以上が正真正銘、私の私信無い意見です。」


「どうでしょうか?」


葛城仁社長は、少し考えて

「経営権は、ジャメノさんが持ち、うちは外側から意見を言える立場にすると言う事ですかな?」


蛇目野社長ははっきり

「はい、そうです。発行株式の51%を内が持ち、49%を京仁さんに持ってもらい、京仁さんからは取締役として火吹君と他に2名、うちは親族でない者の中から代表取締役社長を選任して、他に3名取締役に入れます。」


思わず俺が、仁社長に叫ぶ

「僕に取締役なんて、まだ無理ですよ。」


葛城仁社長はにっこり微笑み

「君の夢に一番の近道にもなるとも思うがね、どうかな?」


思わずフリーズする。

(メ、メモリが足りない、、、)


仁社長は、紳士的に俺の気持ちを汲み取ってくれて、蛇目野社長に向かって


「では、前向きに検討すると言う事で、今日の所は如何ですかな?」


「わかりました。では良いお返事をお待ちしております。」

立ち上がりかける、蛇目野社長が思い出したように


「今後も、内との取引担当は火吹君でお願いできますかな?」


葛城社長が「それは、大丈夫です。彼にとっても御社は初めての法人担当ですから」


「感謝します」と言い、京仁織物社長室から出て行く蛇目野社長を俺は、自然に一緒にエレベーターに乗り玄関まで送る。


最後に蛇目野社長は「君には感謝しなくてはいけないな、私の雲っていた目を覚ましてくれたのだからね」


「そんな事ありません、僕は一生懸命仕事しているだけです。」

と握手して、お辞儀をして別れる。


第2営業部に戻ると、木下課長が再び俺の所に来て

「社長室にもう一回、行ってくれるか?社長がお呼びだ」


「わかりました」俺は慌てもせずに堂々と自然体で、返事をする。


再度、最上階の社長室の扉をノックする。


葛城仁社長自ら、扉を開け俺を迎え入れてくれる。


社長室のデスクの前にある、ソファに二人で向かい合って座る。


「今は、私達しかいないからぶっちゃけて話そう」


葛城社長はいきなり、ぶっちゃけて話し始めた。


俺はいつもと全く変わらずに、義理の父に話しをする。


「はい、社長はどうして僕の初めての担当にジャメノさんを選んだんですか?」


「あの、社長が以前から気に入らなくてね、君がブチ切れて取引を辞められればそれも良いかななんて考えてね」


「お義父さん、それは無いでしょう~」思わずぼやいてしまう俺だ。


「でも、武将君は僕の想像を遥かに超えた想定外な結果を残した。」


「これも、君の実力だよ」


「はぁ~」


大人の事情に翻弄され続ける、火吹武将であった。


ただ一つ、わかった事は大人を素直にさせるには、【権力】【名声】【地位】地位といったものが、非常に有効だと気付けたことだ。


今後の事は、またゆっくり考えるとして、30分ほど仁社長と話した後、俺は自分の部署第2営業部第3課に戻ってきた。


一番初めに飛んで来たのが、門田主任だ。

「社長の話は、何だったんだい?」

心配げに、俺の顔を覗き込む。


本気で俺の事を心配してくれてるようだ。

28歳で主任では、出世コースに乗ってるとは言えないかもしれないが、人柄はとても良い。


間違いなく、蛇目野社長より性格は良いだろう。


俺はにこりと笑い

「ええ、ご心配には及びません。ジャメノ靴製造会社さんとの関係も修復できましたし、問題はありません。」


門田主任は驚きの顔で俺を見てきた。


「えっ、あの蛇目野社長と上手くいったの?あんなに激怒していたのに、、、」


びっくりを通り越して、驚愕になっている。


新会社設立の件は、全くどうなるかわからないので言わずにいた。

俺はごく普通に自然に話した。

「ええ、話し合ったあったら、わかってもらえました。」


「あれほど、怒っていた人が、、、学歴第一主義の偏った(かたよった)人なのに、、、」


「火吹君、君はひょっとしたら、大物になるかもしれないね」


素直に感想を述べてくる、門田主任は悪い人間では決してないが、人が良過ぎると、出世出来ないのも事実なのかもしれないと思った。


それでも俺は、たとえ出世出来なくとも門田主任の様な大人になりたいと素直に思った。



その日、仕事が終わると、木下課長が俺に話しかけてきた。

「3課で、火吹君の歓迎会をやろうと思うんだけど、予定はどうかな?」


俺は勿論即答して

「ありがとうございます。大丈夫です。」


っと、お辞儀して返答する。


木下課長は朗らかに他の社員にも声を掛ける。

3課の社員の人は、全員参加してくれるそうだ。


3課全員で、8人いる。

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