母校
ハプニング続きの俺と舞の結婚式だが、ここで保東康臣こと、ホトがマイクを取り話し始める。
「皆様、本日は火吹武将君と葛城舞さんの結婚式にお越しいただきありがとうございます。」
「司会進行をさせていただきます。帝城高校2年4組 保東康臣です。よろしくお願いいたします。」
ハプニング続きで、時間も決まっている中、ホトは堂々と動じることなく、その体格にあった肝の座り方で司会を始める。
「続いては、火吹武将君の卒業式を執り行いたいと思います。」
事前に頼んでいた、担任の佐藤先生に視線を向け頭を下げるホト。
だが、ここでもハプニングが起きる。
「それは、私が変わろう」
佐藤教諭に変わって、壇上に上がったのは他でもない、帝城高校校長だった。
佐藤先生も直ぐに合わせて、大声で叫ぶ。
「帝城高校2年1組、火吹武将!」
俺は、大声で返事をする。
「はい!!」
ゆっくりと、父のお気に入りの着物で壇上に上がる。
壇上に上がると、客席に向かって一礼し、教職員に向かって一礼する。
そして、壇上の中央にある杏壇に立つ、校長先生の前までゆっくりと歩き、前で一礼する。
目と目が交じり合う。
校長先生はミッドが事前に用意していた、卒業証書を右手で持ち上げ、内容を確認すると、、、
スッと、ミッドの作った卒業証書を置いた。
そして、この年齢の人にはあり得ない程のよく通る声で話し始める。
「まず、始めに当校校長として、在籍する生徒の命を助けて頂き、未来を与えてくれた事に心より感謝申し上げます。」
ゆっくりと頭を下げる、校長。
そしてまたゆっくりと頭を上げ、俺を見つめる。
少しの間をおき、校長ははっきり話し始める。
「火吹武将君、君にはとても力のある大人が大勢見方についている。」
「これは、君にとって貴重な財産であり、心強い武器にもなる。」
一拍あけ、校長は俺の目をしっかり見つめる。
「君には、私から三つの言葉を送りたいと思う。」
「自分の心に気を張りなさい。」
「他人の心に根を張りなさい。」
「最後に、この世界に形を残しなさい。」
俺は大声で答える。
「はい。心に刻みます。」
校長は、柔和な顔で微笑みながら話す。
「国が定める、高等学校の単位を取得してはいないが、帝城高校が君の母校であることは変わりない。いつでも気軽に立ち寄って下さい。」
俺は、嬉しかった!俺の周りの大人は皆、素晴らしい。
「ありがとうございます!」
腰を90度曲げて、お礼をする。
会場中で拍手が起こる。
俺は、会場に向き直り、再度お辞儀をする。
すぐさま、司会のホトが話し込んでくる。
「校長先生、素晴らしいお言葉ありがとうございました。」
「続きまして、武将君と舞さんが参加しておりましたバンドグループHANZOの演奏をお聞きください。」
「準備まで、武将君と舞さんの生立ちをプロモーションビデオにしておりますので、ご覧下さい。」
壇上の前を塞ぐ様に、白い投射用幕が下りてくる。
こういう設備があるのはさすが名門私立高校である。
流れる映像は、武将や舞の赤ちゃんの時から、今に至るまで動画と画像を織り交ぜ、バックに音楽を流しながらプロジェクターで投影した。
赤ん坊の武将を追いかける、今は亡き虎雄の姿が映ると火吹家や虎雄に恩を受けた人たちは、涙を流さずにはいられなかった。
ミッドが編集した、思い出プロモーション動画の出来はとても素晴らしく、完成度の高いものだった。バックで流れる音楽は虎雄の大好きだった、曲が使われていたり舞の回想シーンでは、葛城仁(父)や唯(母)のお気に入りの曲や当時に流行していた楽曲を流していた。
舞は小さい時から、美人でおしゃまな一面を可愛らしく映像の中で表現していた。
小学生高学年くらいになると、ヒトより背も高く、スラッとした体格に、手足も長く早くも美しい女性らしさを持ちつつあった。
実際、約2年後には武将と同棲を始めているのだから、、、
大人たちは、懐かしさと儚さに胸を一杯に満たして、高校生たちは自分達の生立ちと比べたり、舞の可憐さにザワついたり、笑ったりしながら映像を見ていた。
思い出プロモーションビデオが終わる直前に、いきなり大音量で、楽器たちが楽曲を奏でる。
投射用白幕は、自動で巻き上がり登場するのは
HANZOだ!!
来客の大人たちは、メリハリのある式進行と演出に驚愕し、次の瞬間には感動に変わっていた。
いきなり、大音量で演奏が始まる。
高校生とは思えない程、全員それぞれの楽器を扱うのが上手かった。
保東康臣のドラム
常慶貴彦のベース
舞のピアノ&ハモリ
そして俺のギター&サイドボーカル
しかし、HANZOの真骨頂はこいつだ!!
ボーカル彭城諷真のマイクなしでも体育館中に響き渡る、ハイトーンボイスの大声量。
最前列の大人たちを飛び越して、後方にいる高校生たちが一気に盛り上がり、騒ぎ出す。
生のHANZOのライヴだ。
HANZOの活動として、今までも市民会館ホールやライブハウスなどで、定期的にコンサートライブを有料で行ってきたが、どのライヴもチケットは完売する盛況ぶりだ。
もちろん実力が、あるのは事実だが、御堂大智ことミッドの、ネットの情報系宣伝効果は絶大だ。
関東以外からも、ファンが来るほどだ。
HANZOのライヴは強力で迫力あり驚愕が感動へと変わる。
身長190センチ、小顔のイケメンでオーラたっぷりの諷真の歌声は世代を超えて、心へ染み渡る。
俺が、諷真と壇上中央で、背中を合わせて声をハモらす。
俺は諷真程、声が綺麗ではないが、声量と音は外す事がい。
幼少の時から音楽に触れてきた為、絶対音感が備わっているのだ。
それは妻の舞も同じだが
身長180センチの俺がエレキギターをかき鳴らし、諷真と壇上中央で歌う姿は実に【絵】になる姿であった。
若いファンたちは、熱狂した。
声をからし、諷真や俺の名を連呼してくれる。
俺は着物のまま、舞は白無垢のまま、激しい音楽をかき鳴らす。
最前列に並ぶ、大人達も完成度の高い音楽に聞き入っていた。
ノリのいい曲が、2曲連続続き最後の曲になる。
バラードだ。
いつもの事だが、諷真の独壇場だ。
今日は少し、構成を変えて、俺と舞が諷真の歌声に参加する。
自分で言うのもなんだが、思ったよりかなり上手く出来ている。
(うん、いいぞ!!)
(ここだ、舞来い!)
舞のコーラスが、ピアノを弾きながら、透き通るような高音で諷真と俺の歌声に乗っかってくる。
思わず、我ながら思う。
(すげぇいいぞ!!)
ジャン!!
演奏は終了し、諷真と俺が壇上中央で腰を折り客席に向かってお辞儀する。
大喝采だ!
会場はあり得ない程、盛り上がっていた。
泣き出す女の子もいるほどだ。
マルガッス・シュタインさんはアメリカ人っぽく
「ブラボー!ブラボー!」
っと、連呼していた。
一人、KABUKIエンターテイメント社長の水島浩二は思いふけっていた。
俺が、マイクを持ち話し始める。
「HANZOの活動は今日を持って、無期限の活動休止になります。」
女子たちの、悲鳴が一斉に沸き起こる。
凄い津波の様だ、、、
「続けてー!」
「辞めないでー!」
皆が落ち着くまで、しばらく俺はマイクを持ったまま待つ。
舞が、ピアノを弾き始める。
曲は
【蛍の光】だ、、、
静かに静かに流れ始める、蛍の光、、、
(本日はご来店ありうがとうございました的なやつか、、、面白い事やるな、、、)
俺がマイクで話し始める。
「みんなが、応援してくれた事は俺達にとってもすごく大切な思い出で、とても感謝してます。」
「それでも、俺達は成長して大人へなっていきます。」
「HANZOの活動は休止しますが、いつか必ず復活します。」
「その時は、また応援してくれると嬉しい。」
バックで流れ続ける、蛍の光、、、いつの間にかタカヒコのベースも入ってる、、、、
ホトもシンバルを静かにシャンシャン鳴らしている。
(嫌な予感、、、)
「ハァアアアアアーーーー」
彭城諷真の叫び!
即俺はマイクで絶叫する
「最後の曲です!みんなの心に届くと言いな!」
ハプニング続きの絶好調。
蛍の光ロックバージョン?超アドリブ編、、、
もうみんな好き勝手にやってる、、、
諷真も歌詞も無く、ただ声を張り上げ、時にはハミングしている。
舞に至っては、(それは蛍の光じゃないでしょう)と言いたくなるロックな曲調に勝手にアレンジしていた。
タカヒコは、マイペースにJAZZ風に自由気ままに、入っては出てい行く。
ホトだけはしっかりリズムを刻んでくる。
実は、このホトのドラムが一定のリズムを刻んでくれるからこそ、皆が自由に好き勝手出来るのだ。
あっちに飛びこっちにひっくり返り、あり得ないことしても、きちんとここに帰ってこれるのは、ホトのドラムがあるからだ。
ハプニングのロック【蛍の光】も終わった。
珍しく彭城諷真が最後に叫ぶ
「またな!」
会場は、熱狂と情熱と嬌声で溢れかえり、興奮の坩堝と化していた。




