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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
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一大イベント

桜木優香の発言は、爆弾そのものの威力を発揮した。

普段はそれほど目立たず、自分から発言する事などまずない女性だ。


色白で、スタイルもすらっとしていて痩せ型だ。

今まで持っていた印象とは全く異なる発言をした為、教室内は大騒ぎとなり、話し合いなど出来る状況ではなかった。


そこで、この男が立ち上がる


「みんな、驚く気持ちはわかるが時間も決まっている。話を聞こうじゃないか!!」


常慶貴彦(じょうけいたかひこ)である。


クラス一位を争う秀才は、皆に一目置かれている。

タカヒコの発言で、クラスは静かになる。


桜木優香は頬を赤くしながらも一生懸命、話を続ける。


「も、もちろん、結婚式には賛成するし、お手伝いもしたい。」


「この気持ちに整理を付けるために、一つだけお願いがあるの」


「火吹君と葛城さんと私で、演奏会をしたいの!」


「わ、私バイオリンを弾けるから、是非一生(・・)の思い出として持っていたいの!」


我儘(わがまま)なのは、百も承知です。でも、どうか、、、」


「いいわよ。」


言葉の途中で、舞がはっきりと言い切る。


(おいおい、コクられた(・・・・・)俺の気持ちは無視か?)


爆弾の余波が収まる前に、当事者の一人が許可を宣言した。


ざわつく中、ホトが大きな体と声で、話を戻す。


「それで、是非お手伝いのボランティアと式の参加を皆にお願いしたいんだけど、どうかな?」


「私、やります。」


「私も」「私も良いですよ」


「男手も必要だろ、俺達も参加するぜ。」


「なぁみんな!」


「おおぅ、何でもやるぜ」


こういう時、普段の行いが物を言うんだよな。


俺はこう見えて、社交的だし皆に分け隔てなく接している。

顔も充分、色男だと自分では思ってる。身長だって180センチあるし、スポーツも何でもこなすし、困っている人がいれば自分から声を掛けて手助けしているし、、、


ただ、近くにとんでもないイケメンがいるので、そっちの自信は大したことない。


舞は、語るに及ばず。


クラス、、、嫌、、、学校中の人気者であり帝城高校の女王様だ!


俺と交際しているのは、公然の秘密だし、、、


朝、高級車で一緒に登校して、帰りも同じく帰って行けば、秘密でも何でもない。


その二人の結婚式ともなれば、大騒ぎになるのは必須だ。


教壇に立つホトが「それじゃ、ボランティア参加してもらえる人は俺のスマホの番号、渡すからLineで連絡貰えるかな?」「式だけ参加の人は、メールで連絡くれよ」


と言い、全員に自分のスマホの番号とミッドが用意したクラウドサービスのメールアドレス書いたメモを渡しまくる。


式だけ参加の人は、ミッドが一括管理して、詳細を配信する事になっている。


ボランティアは、俺が管理して、それぞれの担当グループに分けて役目を分担する。


ホトはメモを渡し終えると、次の教室に向かって行った。


ざわつく教室と、主人公の俺達を残して、、、、


俺と舞の回りにいるクラスメイトが、興味津々で小声で聞いてくる。


「ねぇ舞さん、高校生で結婚で凄くない?」


舞は平然と答える。


「だって、子供が出来たから背負(しょ)うがないじゃない。」


一瞬、舞の周囲はブラックホールに引き込まれるように全くの無音と化す。


その反動で


「「「えー!!」」」


(まぁ、隠したっていつかはばれる事だけどさぁ、このタイミングでそういう言い方しなくてもいいんじゃね?)


っと、俺は密かに思う、、、


俺の予想通り、クラス中にあっという間に事実は伝播(でんぱ)され、ほとんどクラスの全員が、俺と舞を取り囲む。


やんや、かんや、やっとこさ~


パン!パン!


こういう時一番頼りになるこの男が、手を大きく叩き仕切る。


「ほら、みんな気持ちはわかるが、ホームルームの時間だ!先生が来る前に着席しよう!」


当然、常慶鷹彦だ。


渋々と、全員着席するが、、、


(ざわ)めきは、止まらない。


いつもと何ら変わった事は無いという調子で、細く長い足を組んで、座る俺の妻?は悠然とそして堂々としていた。


こういう神経の図太さは、見習いたいが、、、


無理だな、、、


俺には一生、、、


休み時間の度に、質問攻めにされる俺とは違い、不思議と舞の所には、人が群れない。


何だこの差は!


そうか、舞の回りには仲の良い女子が、舞をガードしているのだ。



人徳だな、、、



それに比べ俺ときたら、他クラスの人間まで来てるぞ。

ほとんど野次馬だろ~


私立の進学校と言っても、所詮は多感な年頃だ!

背負(しょ)うがないと割り切って、(もてあそば)れてやるか、、、


(はいはい私が悪魔の大魔王ですよ~)



やっと、学校が終わり帰宅すると、俺はとんでもなく、、、


疲れていた。


悪魔の大魔王は、精根尽き果てました、、、


リビングにある10人掛けのソファに、ゴロンと横になる。


そっと、毛布を掛けてくれる。


舞だった。


「お疲れ様。」


こういうちょっとした優しさにやられちゃうんだよなぁ~


「なんか、俺だけ、ひでぇめにあってたよなぁ~」

俺は(つぶや)くが、舞はピシリと一言。


「日頃の行いね」


(俺はこう見えて、そこら辺の奴より真面目で頑張ってる方だぞ!)


(それを言うなら、舞の方が悪女だろうが、、)

とは、絶対に言えない。


そこにツネさんが、お茶とお菓子を持ってリビングにやってきた。


「お坊ちゃま、舞お嬢様、お茶でもいかがですか?」


ツネさんは自分で話しかけていて、自分で不思議そうな顔をしている、、、


「舞お嬢様と言うのは、もうおかしいですよね」


(それを言うなら、坊ちゃまも充分やばいぞツネさん)


ツネさんはポンと両手を叩き

「今日からは、若奥様とお呼びしましょうかしらね~」


そこに葛城唯(舞の母)が、やってきて言う。


「ツネさん、そんなに気になさらずに【舞】で大丈夫ですよ」


ツネさんは笑顔で答える。


「それでは、舞様とお呼びさせていただきます。」


(それで、坊ちゃまの件はどうなったの?)

俺は、今日一日ずっと、悶々(もんもん)としっぱなしだ。


ピンポ~ン


チャイムが鳴る。


シゲさんが、無駄のない動作で、インターフォンの受話器を取る。


2言、3言話をして保留ボタンを押す。


「武将様、桜木優香様と言う女性がお会いしたいそうですが、こちらにご案内してよろしいですか?」


俺は、驚き「えっ!」っと思わず声が出るが、舞がすかさず「ご案内して下さい。」と答える。


シゲさんはインターフォンの受話器を取り、返答し迎えに部屋を出て行く。


俺は、修羅場を想像してしまい、変な汗をかいていた。


舞はごく普通に友人を迎えるように、ゆったりとしている。


5分もすると、桜木優香は火吹家のリビングにシゲさんに案内され現れた。


屋敷のデカさと豪華さに面食らっているようだったが、気を取り直して話をしだす。


「そ、その日にちもあまりないから、演奏会の打ち合わせをしておきたいと思って、自宅にまで来てしまってごめんなさい。」


桜木優香は左手に、バイオリンの黄色のハードケースを持っていた。

最近はバイオリンのハードケースもファッショナブルになったものだ。ショッキングイエローと言えばいいのか、エナメルがかってるはっきりした黄色だ。


若くないと持てないなぁ~などと考えてしまう俺だ。


舞は優雅にソファから、立ち上がり


「それじゃ、地下のスタジオで音合わせと構成を考えましょ」


っと、先頭に立ち歩き出す。


火吹家の屋敷には、実は地下室が広くあるのだが、関係者以外立ち入り禁止になってる。

何故かと言うと、防犯上高価な品物や書類、株券、金塊、骨董品(こっとうひん)など、火吹家が代々集めて来た財産が埋まっているからである。


舞は地下室の入口の電子暗証キーを押し、扉が一段奥に引き込み、ガクンと音がして横に自動で、開く。


扉の厚さは1メートル弱くらい?


銀行の金庫よりは、少し(・・)薄いかな、、、


言葉が出ない、桜木優香「、、、、、」


扉が開くと同時に、階段が現われ照明が自動的に点灯する。

階段もフカフカの絨毯(じゅうたん)が引いてある。


3人で、地下へ歩いていく。舞を先頭に、、、ここ俺の家だよなぁ~


地下に付くと、いくつも部屋があり、扉はすべて電子ロックキーが設置されていた。

この地下室全てを管理把握しているのは、実はシゲさんだけなのだ。


まさに金庫番。


ガラス張りの駐車場まであり、先代や先々代が集めたらしい、クラシックカーが何十台も並んでいた。

俺には今の所、そういう趣味はない。


17歳だから、当然免許もない。


この地下室は、屋敷前の大通りの地下を通り、迎いの火吹家所有の35階建てビルに繋がっているのだ。

非常時は、屋敷の正門以外からでも、出入りは可能なのだ。


地下室を10分ほど歩くと、総ガラス張りのスタジオが、見えてきた。

ミキサー室から、録音、編集室迄備わっている。


御堂大智(みどうだいち)こと、ミッドが見たら泣いて喜ぶ機材が盛りだくさんだ。


そう、このスタジオにはHANZ(_)のメンバーでも入った事が無いのだ。


彭城諷真(さかきふうま)ですら、この地下室の存在は知らない。


そこに、舞は初めて来訪した桜木優香を案内してきた。


舞はスタジオの暗証キーを押し、扉を開けると


「さぁ、ここなら思いっきり音が出せるわよ」


っと、言い桜木優香を招き入れる。


桜木優香の動揺は未だ、収まる気配が無かったが、舞はお構いなくピアノを自由に引き出した。


俺は立てかけてある、アコースティックギターを持ちバーカウンターにあるような高い椅子に腰かけ、ギターを爪弾く(つまびく)


自然と、音と音が交じり合い、心を繋ぐ。


無言で、舞は桜木優香をリラックスさせようとしているのだ。


俺と舞で、勝手に曲を引き出すと、桜木優香も黄色のバイオリンケースを開け、自分のバイオリンを取り出し、(あご)に乗せる。


タイミングを合わせて、いきなりロック調で入って来た。

中々の腕だ。

きっと、俺達と同じように小さい時からバイオリンを習っていたのだろうなぁ~


俺自身も、音楽が嫌になった時期もあったが、続けていてよかったと今はいない両親に感謝してる。


(上手いぞ!)


(いい感じだ。)


舞の得意とする、裏拍を取るピアノに見事に合わせ音がぶれる事も無く、見事に奏でる。


(HANZ(_)以外で、こんな気持ちになる人間にあったのは久しぶりだ。)


1時間も自由に、音楽を弄び(もてあそび)満足すると


舞が桜木優香に尋ねて来た


「こんな、感じでどう?」


桜木優香は興奮していた。

頬は紅潮し、額から汗を流し息が上がっていた。


「桜木、大丈夫か?」


俺が声を掛ける。


「だ、大丈夫です。」


「こんな、気持ちのいい演奏は初めてです。」


「もう、これで満足した気分です。」


舞は微笑みながら「じゃ、後は構成を上で考えましょ。」


「お互い、どんな感じかは(つま)めただろうから」


「そうだな、ちょっと水分取るか」俺は自然な形で、桜木優香のバイオリンケースを持ってやり、1階のリビングに戻った。


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