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KABUKIコーポレーション  作者: イー401号
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嘆願(たんがん)

「先生~頼みますよ。校長先生に聞いてみて下さいよ~」

ホトの声だ、担任の佐藤先生に例の結婚式の話を頼み込んでいる。


「それは、無理だろうなぁ~気持ちはわからんでもないが、そもそもこの問題自体、まだ片付いておらんからなぁ」


帝城高校2年2組担任の佐藤先生が、ホトに向かって困った顔をしている。


「葛城は進学するようだが、高校生で出産、育児、進学なんて、正直俺でも無理だと思うぞ。」


「葛城がここに在籍していられるかだって、正直分からん。」


「そんな、、、」


ホトは教師たちの反応の悪さに自分の考えの甘さに気付いたが、ここで引くわけにはいかない。

俺は、この程度の困難を乗り越えられなくて、将軍と一緒に起業するなんて、夢のまた夢だ。


俺には粘り強い、交渉しかない。

努力と根性で何とかするんだ!!

自分に発破(はっぱ)をかける。


しかも、将軍が学校を去るまで時間も無い。

急いで形にしなくてはならない。


彭城諷真のような特殊能力は俺にはない。


常慶貴彦のような頭脳は持ち合わせていない。


御堂大智のような技能も俺にはない。


俺にあるのは打たれ強さと土俵際でのせめぎ合いで一歩も引かないことくらいだ、、、


佐藤教諭を追いかけて、廊下をドスドス走っていく。



同じ頃、帝城高校【校長室】では、校長がテーブルをはさんで葛城仁と話し合っていた。


校長は恰幅(かっぷく)の良い、人の好さそうな人相の中に厳しさを持ち込んだ、立派な大人に見える。


「葛城さん、いつも当校に多額の御寄附ありがとうございます。」


「いえ、これからの事も考えますと、もう少し寄付金を増やした方が良いのではないかと考えております。」


「これから、ッと言いますと、娘さんの件ですな」


「そうです。娘の舞はこのまま進学を望んでおります。」


「校長先生始め、教員の皆様のお力添えを頂きたく、またそれに見合った御寄附をさせて頂こうと思っております。」


校長は難しい顔をして

「在学中に、結婚して親になるという前例は当校ではありません。」


「また、思春期である他の生徒への影響も考えなくてはなりません」


葛城仁は袋に包まれた、四角いものをテーブルの上に乗せた。

「保健体育の実習とまでは言いませんが、いずれ生徒たちもひとの親となるのです。身近にそういう実体験があるのは悪い事ではないと思いますが、、、」


テーブルの上に乗せられた布を開くと100万円の帯封(おびふう)をした札束が5束、、、500万円あった。


「とりあえず、こちらは無理を申し上げます迷惑料として寄付させていただきます。」


校長は「・・・・・・・」


葛城仁は更に「ご無理ついでに、娘と火吹君の結婚式をこの学校の体育館で、是非執り行わせていただきたい。」


校長が慌てた顔で

「葛城さんそれは、、、」


仁はすかさず

「教員の方々が使っているパソコンも大分古いものでしたね、新しいものに取り換えましょう」


校長は再び

「いえ、そういう問題ではなくて、、、」


仁が畳みかける

「校門の扉も大分、傷みが激しいようですね」


校長「・・・・・」


「葛城さん、あなたの財力があれば、高級一流ホテルで芸能人の様な結婚式を開くこともできるのではありませんか?」


「何故、当校にこだわられるのですか?」


葛城仁は胸を張り、校長の目をしっかりと見つめきっぱりと語る。


「それは、彼らが自分で決めたからです。」


「無理を承知で、2人を心から祝いたいという友人達の気持ちに大人として陰ながら支えてあげたい。ただ、それだけです。」


校長は深く考えこむ。


「・・・・・・・」


外で、休憩時間なのか生徒たちが、校庭で普通にサッカーをして遊んでいる声が聞こえる。


それとは正反対に校長室では深い沈黙に包まれていた。


校長がやっと喋り始める。


「私の末娘にも、先日子供が誕生しましてね。私には3人目の孫なんですが、、、」


「それは、それは、可愛いもんです。目に入れても痛くないというのは本当ですな」


「この帝城学校の理事長は、私の親戚でしてな、、、」


「なんとか許可を取ってみましょう」


葛城仁はテーブルに(ひたい)を押し付けて

「感謝いたします。」


校長は最後にニヤッと笑いながら

「約束した件は、よろしくお願いいたしますよ」


「それは、任せて下さい。」


仁は自分の胸を右拳でドンと叩き、お辞儀をして校長室を後にする。



ー放課後ー


ホトが職員室に駆け込み担任の佐藤先生の所まで行き、頼み込む。

「先生、本当にお願いしますよ。」

無理は百も承知だ。

断られても、断られても押し切る。

その覚悟で、やってきた。


佐藤教諭はホトの方を向き

「よかったな保東、許可が出たぞ。」


「!!」


余りの肩透かしに、びっくりして声が一瞬出なかったが、直ぐに


「ありがとうございます。先生!」


佐藤教諭は「来週の日曜日、午後1時から5時までだ。準備片付けも入れてな。くれぐれも、学校側に迷惑掛けないようにな」


「はいっ、わかりました。」


ドスドスドス


教室に戻り、まだ残っていたミッドに声を掛ける。

「結婚式の許可出たぜよ~」


「本当?」


「来週の日曜日。1時~5時まで、急いで準備しないと間に合わないな」


ミッドがノートパソコンを開いて、立ちあげながら

「まず、式次第と企画、招待者リストと連絡方法、衣装から椅子、受付、それに思い出をプロジェクターで流そうよ。」


「それは僕が、将軍達に画像データ送ってもらって作るから大丈夫として、、、」


ホトが「やる事が山積みで時間が無いな、、、」


「クラスの連中にボランティアを頼もう。」


「よし、まずは式次第と企画を決めて、明日から各クラスを回って協力してくれる人を集めよう。」


ホトは自分で言う様に、粘り強さが彼の強みであるのは間違いない。

だが、彼の一番の魅力はこの行動力こそなのだ。


身体には似合わない、フットワークの軽さと決まったら即動き出す。


誰にでもあるものではない、最大の魅力である。



ー【ゴンスタ】ー


午後5時半


彭城諷真(さかきふうま)保東康臣(ほとうやすおみ)御堂大智(みどうだいち)と何故か土門武士(どもんたけし)が集まっていた。


学校は既に下校時間が過ぎているし、集まれる場所と言えばここしかないのだ。


常慶貴彦(じょうけいたかひこ)は塾に行き、火吹夫妻は不在だ。


ミッドがいつものように、司会進行役を買って出る。

「コンセプトから決めて行こうよ」


「それは、勿論結婚式だろ。」ホトがちっちゃな目を真剣にキラキラさせながら言う。


ミッドは「そうんなんだけど、各クラスからボランティアの協力をしてもらうのと同時に、やりたい事なんかも聞いたらどうかな?」「例えば、HANZO()の活動中止宣言とか、将軍の卒業式なんかどうかな~?」


「そうだな、じゃぁ明日の朝ホームルームの前に聞いて回ろうぜょ」ホトが、仕切って今日は終わりかと思いきや、低い声で話に入ってきた。


「警備は俺達に任してください。」


身長2メートルを超す、土門武士である。


他校の生徒も入って来るだろうから、警備は必須で乱呪(らんじゅ)のメンバーにやってもらえば効果絶大だ。

暗黒の最強軍団に逆らう奴は、いないだろう、、、


ホトが「本じゃ明日の朝だな!」と元気よく言う。


最後に諷真が「俺は何をすればいい?」


ただ、立っているだけなのに絵になる男だが、珍しく話に加わる。

元々、こういったイベント関係は無関心な奴で、周りからも敬遠されがちで、よく言えばオーラがある奴だが、将軍の話となると別らしい、、、


ミッドが合いからず、くるくる回る可愛らしい目を諷真に向けて


「諷真は、入り口で立って居てくれば大丈夫。」

「雑用はこっちでやるから大丈夫だよ」


「わかった」


短くいつものように返答する。天才だ。


そして、その日は解散する事になった。



ー翌日朝ー


帝城高校2年特進クラス


ホームルームが始まる前に、他クラスの保東康臣(ほとうやすおみ)が黒板の前に立ち、大声で皆に話しかける。


「みんな、朝から悪いんだけど、ちょっと俺の話を聞いてくれないかな?」


ざわつく、クラス中の視線がホトに集まる。


俺と葛城舞(かつらぎまい)常慶貴彦(じょうけいたかkひこ)は、事前に話を聞いていたので、黙って席についていた。


クラスの一人が叫ぶ「他クラスの奴が、朝っぱらからどうしたんだよ?」


ホトは全く動じることなく堂々と話し始める。


「来週の日曜日、このクラスの火吹武将君と葛城舞さんの結婚式をこの高校の体育館でやる事になったんだ、そこで皆に手伝ってもらいたい。」


寸間、、、、


「「「「「えー!!」」」」


女子が、騒ぎ立て、男子はザワツク。


ザワザワザワ


常慶貴彦は黙って、銀縁の眼鏡を触っている。


舞は、自然体。

何かありました~?ってきな態度で自然に席についていた。


俺は外見はどうあれ、内心は恥ずかしいやらこんな大事になるとは思ってもいなかったので、少し動揺していたが外見は、ごく普通にしていた。


クラス全員の視線が、俺と舞に集まる。


その中で、一人桜木優香(さくらぎゆうか)が驚きの発言をしてくる。


「私、火吹武将君が好きでした!」


(なんだって、、、)



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