発動
月曜日、快晴。
一週間の始まりだ。
快調!!快便!!
大事なことだ、、、、
各自 己一人で戦い続けて
修練の毎日の総仕上げ
待ちに待った。
そう、俺たちの始動の時だ。
総仕上げ、、、、そして
やっと準備ができた、始まりへの第一歩。
俺は京仁織物株式会社 戸塚営業所へ
妻の舞は、シゲさんと共にKABUKIコーポレーショングループ本社ビルへ竜治叔父さんに今後のサポート役としての指導を受けに出かけた。
彭城楓真はいつものようにメディアの仕事をこなしながら渡米の準備に余念がない。
楓真と共に渡米することになった、火吹衛士隊最強を誇る身長2メートルを超す巨人土門武士もいつもと変わらず、任務と自己鍛錬に励んでいた。
この男に緊張や動揺という言葉は全く当てはまらない。
ある意味頼もしくもあり規格外なのはその見た目以上にメンタルな部分かもしれなった。
常慶貴彦は火吹財閥の歴史を聞き俺たちの未来の一翼を担うため。
渡米時期を二日後に超前倒しして渡米し法界トップのハーバード大学に留学する。
日本の司法試験を合格している彼にとってはアメリカの司法資格取得には、ハーバード大学のロースクールに通い、認定コースを取得しアメリカでの司法資格Bar-Examに受験合格するのが普通なのだが、彼は特待生としてハーバードに行きロースクールの司法コースはすでに取得済み扱いという特別枠となっておりロースクールに通いながらもBar-Examを受験するという流れだ。
本人の努力のたまものだがアメリカにおいて一番大きな影響力のある【MONEY】と権力という力を持った大人の干渉が全くなかったと言えば噓になるかもしれない事実であった。
全ての真実を知らぬ法界戦士は、生活に必要な詳細の打ち合わせをミッドと共に様々な情報を交換していた。
御堂大智ことミッドは先日成田空港で縁が結んだ希道直真君の居住と常識問題から様々な問題を丹念に一つ一つ潰して回っていた。
いかにもエンジニアらしい行動の仕方だ。
しかし、帰宅した後はあまりに変化した、ミッドの体形を見るに見かねて、一流のエンジニアらしからぬという理由で侯葺縁さんの指導の元、衛士棟にてダイエット&格闘護身術の鍛錬に強制的に駆り出されて毎晩夜には大汗をかいて心身ともに疲れ果てていたのは仕方ないのかな?
そして、保東康臣ことホトは、COOBデザイン株式会社 本社最上階にある社長室室長の仕事をこなしながら、俺から頼まれた寸動永子さんの受け入れ準備に細かいところまで他人に任せずに自分でこなしていた。
これが今の現状だが、ここから激動の日々がそれぞれ始まっていくのだ。
俺が25歳を迎える2年後までに
俺自身はやることは既に決まっていた。
メディアでも公然と話した無駄、危険、環境汚染、最先端を極限まで進化させた【ゼロシティ】という構想構築は俺の頭の中にしかない。
だが、KABUKIコーポレーショングループを継承すると聞いた、俺にはゼロシティ以外に歴史を変えるほどの可能性ある どうしても欠かせないやりたい事業があったのだ。
その準備と現在の仕事の引継ぎに新しく京仁織物株式会社 社長室室長という職務を覚え自己鍛錬することだけでも時間がいくらあっても足りないほどだった。
だが、俺は焦らずしっかりと足元を固めていった。
チームの各員鍛錬に忙しい中でもサポートを受けながら一つ一つ確実にこなしていった。
あり得ない胆力と強靭な体力で
ところは変わり
戸塚にある俺の現在地。京仁織物株式会社 戸塚営業所所長室では、列をなして人がごった返していた。
それを有能な秘書寸動永子さんがサッと捌きながら部屋に案内していた。
所長室には、顧問相談役の十柄氏源吉さんと副所長の五十吾茂三さんが同席していた。
俺は所長室のデスクの前に立ちそれぞれ次から次になだれ込んでくる人間にそれぞれ言葉をかけていた。
今は
「火吹所長、いよいよ本社勤務復活ですな。」
「新倉営業本部長もわざわざ、横浜本社から足をお運び頂いてありがとうございます。」
そう、今俺と話しているのは戸塚営業所時代メインバンクであった横濱銀行 支店長から大抜擢で営業本部長まで昇格した新倉 誠 取締役員であった。
一介の横濱銀行 戸塚支店 渉外営業部長だった彼が【火吹武将】と会い、支店長からの営業本部長という大抜擢の昇進を果たした男が、横濱銀行本社がある【みなとみらい】から武将の移動を聞き駆けつけたのである。
しかも横濱銀行頭取茂宗 十蔵と一緒に!!
「しかし頭取までご一緒とは、どうされたんです?」
白髪の矍鑠とした初老の男性は、柔和な表情で
「そんなつれないこと言わないで下さい。私共 銀行屋にとり火吹様は未来投資の憧れであり宝そのものですから。新倉君がご挨拶に伺うと聞いたもので、同行いたしたまでです。」
「そうですか、ご丁寧にありがとうございます。」
この頭取は確か、マツウラ商事さん融資の時に軽自動車に乗ってきた好感もてる人柄だったな、、、、
今も変わらないようだ。
俺が2年後にKABUKIコーポレーショングループ社長に就任することはいわば極秘中の極秘。いわばトップシークレットだ。
身内以外誰も知らないことだ。
口にのせてしまっては、犯罪になるケースも出てくるほどの問題だ。
そう、インサイダー取引。
俺がKABUKIコーポレーショント社長になると知れたとたんにKABUKIコーポレーショングループの株価が上がるか下がるかは俺にはわからないが、それに便乗して大金を手にすることは法律で厳しく禁止されている。
「私自身、至らぬことも多々あると思いますが、頭取の様な方から見られて、お気付きの点はどんどん御指南頂けると大変嬉しくありがたいと思います。」
「ほっ、ほっ、ほっわしの様な地銀頭取のジジィから火吹財閥本家当主に意見することなどりえないお話ですが、火吹様は本気でおっしゃっていられるようですな。」
「もちろん、本気ですよ。」
「その一言を聞けただけでもここに来た甲斐がありましたな。それではお一言だけよろしいですか?」
「はい。」
俺は自然体で、全く構えずに手を前で組んで頭取との会話を真剣に楽しんでいた。
「財力、権力、地位、名声。火吹様は世で言う欲の全てを現在既にお持ちでいらっしゃいます。それを維持するためには他人の模範となり他者の尊敬の念を集めなければならないことは既にお身に着けておられるようですので、こんな年寄りが言えるとしましたら【ご健康】にはお気をつけ下さいませ。休むことも立派な仕事ですよ。と言うことくらいでしょうか?」
「ありがとうございます。頭取のお言葉、そしてお人柄を私は決して忘れることは無いでしょう」
「新倉営業本部長もこのような上司とお仕事ができて、幸福ですね。」
「ははは、、、頭取はこう見えても厳しいところは大変厳しく、、、、」
威厳ある一言が会話を遮る
「新倉君。」
ただの一言で済ませてしまうのは立派なサラリーマンの証だ。
「こ、これは大変失礼いたしました。」
一般標準より体積ある身体を可能な限り小さくして、新倉営業本部長は出過ぎた一言を訂正する。
立派な大人達だからこそできる一流のサラリーマンコミュニケーション術。
時間に追われている俺は、惜しみながらも二人と握手して別れた。
そして、次に所長室に飛び込んできたのは
これまた、標準より体積のある俺にとっての一番初めの担当法人である。
ジャメノ靴製造会社 社長 蛇目野 勝弘であった。
「大変ご無沙汰しております。蛇目野社長。」
俺はスッと右手を出し挨拶する。
両手で俺の右手をつかみ感情を露わにする、生きていれば俺の実父より年上の男は熱く語り始める。
「いやいや、火吹君がここ戸塚に来てから一度も顔を出してくれんから本社に戻ると聞いて仕事を全部キャンセルしてきたんだ。」
俺は苦笑しながら
「社長、仕事をほっぽり出すのはまずいのではないですか?」
「そ、そうですな。し、しかし火吹所長のおかげで我社の売り上げと利益は過去最高を達成して、今後の経営人事も決まり一区切りしたもんで、何はともあれ火吹君の顔を見に来たということだよ」
「ありがとうございます。今後の経営人事ということは?」
「あ、ああ。前に火吹君からも指摘されていたように我社は親族経営で悪習がはびこっていたのでな。ここいらで能力ある若者に託して、実績ある実務経験者に経営を委ねることにしたんだ。」
「それで、社長は今後どうされるんですか?」
俺は気兼ねなくごく普通に尋ねたつもりだが、本人の考えは想像を超えていた。
「私は還暦も超えているので、隠居しようと思ってます。」
「え!!隠居はまだ早いのではありませんか?せめて会長職で監督された方がいいのでは?」
「火吹君にそう言ってもらえるととても嬉しいのだがね、、、、、私も妻や家族を今まで随分蔑ろにしてきたもんじゃからここらでその埋め合わせをしようというのは、、、、、建前なんだがね、、、」
「実は、、、、ガンが見つかっての、、、まだ手術すれば生きられるそうじゃが、、、、もう現役の仕事は体が悲鳴を上げております。」
俺はしっかりと蛇目野社長の瞳を見て、じっくりと考える。
その瞳の奥には、長年培ってきた経営者としての覇気がユルリとまだ燃えていた。
「そうですか、まずはゆっくりご静養ください。そしていつかまた必ず一緒に仕事しましょう」
俺は右手を出し握手を求める。
両手で俺の手をつかみ今にも泣きだしそうな蛇目野社長は嬉しそうにただ一言
「ありがとう火吹君。」
「僕に何かできる事があれば、なんでもおっしゃって下さい。」
思わず老兵の瞳からポツリと滴り落ちる、、、、
涙。
その場にいる全員が同じ気持ちであることは間違い様がないがそれを言葉にするのは難しい。
年齢、性別、責任感など人によって感じる内容は同じでも感じ方は異なるからだ。
「十柄氏顧問役、すいませんが蛇目野社長を玄関までお見送りお願いできますか?」
多忙を極める今、俺にできる唯一の気遣いであった。
同年代の十柄氏顧問役を指名したのは、同年代だからこそ分かりあえる気持ちがあると思えたからだ。
若い女性、寸動永子さんや近藤直子さんではわからない境地があると俺は考えた。
「かしこまりました。蛇目野社長、わしですいませんが玄関まで送らせて下さい」
「最後まで面倒をかけてすまんな火吹君。それに皆さまにもよろしくですじゃ」
涙腺に涙を沢山ためながら歴戦の老兵は所長室を後にした。
俺は所長室の扉が完全に閉まった後もずっとお辞儀しっぱなしであった。
蛇の目社長の病魔との戦いに勝ち復活してくることを切に願い、、、、
「所長、大丈夫ですか?」
優しく小声で話しかけてきてくれるのは、俺と共に今後も戦地に赴くと決めた 寸動永子係長であった。
「すいません。次の方をお通してください。」
次に祖調質に現れたのは、、、、、
柔和な老人と矍鑠と威厳を放つ男性二人であった。
「ほっ、ほっ、ほっしばらくぶりじゃね。」
イッシン食品ホールディング会社元社長、かつて戸塚駅が大雪で電車が止まり困窮しているところを武将達に助けられ、その後のマスコミ対応などでお世話になり 今ではたまに食事を共にする仲にまでになった、創業者と息子の現社長 壱伸延清だ。
「ほっ、ほっ、ほっ、火吹財閥当主もいよいよ動き出したようじゃな?」
「!!!」
(この人は俺がKABUKIコーポレーショングループ総帥になることを知っている。)
(一時代で上場企業にまで成功して、息子に後を継がせた起業家ならではの感の鋭さと経験でかぎ取ったのだろう)
「大変残念ですが、これからは今までの要にお気軽に食事もいけそうにありません。」
まったく関係ない会話をしたが老獪は、頷くだけで全てを理解して飲み込んだ。
「一年に一度くらい、、、いやわしが死ぬ前にもう一度だけは一緒に食事したいものだな」
「そ、そんな今生のお別れではありませんし、、、、」
俺の一言で、老人の目つきが変わった。
「上場企業の経営をなめてはいかんぞ。日本の首相よりよほど忙しく責任も重い物だ。」
「失礼いたしました。」
黙って、俺はこうべをたれる。
(こういう人間を俺は大好きだからだ。俺に意見を言ってくれる人間は限られている。しかも経験も人柄も俺より数十倍も優れた人間の意見だ。真剣に俺の為を思って言ってくれてるに違いない)
「お父さん、せっかくの昇進祝いを言いにきたのに、いくら火吹君でもびっくりするのではないですか?」
壱伸ホールディング現社長 壱伸延清の一言で、その場の緊張感は解かれた。
俺は全く緊張していないし、逆に楽しい時間を止められてしまい少し残念に思ったくらいだ。
しかし周囲の人間には、威厳と迫力が圧力となって押し付けていたようだった。
近藤さんの顔がすっかり怯えている。
俺は微笑みながら自然体で
「会長、私の失言は認めます。が、僕には今後もそういったご指導をどんどんお願いいたしたします。」
「ほっ、ほっ、ほっ、火吹財閥当主は度Мなのじゃな」
「お父さんそれは、いくらなんでも失礼ですよ」
息子がとりなすが
俺は全く気にせずに
「はい、仕事に関しては貪欲で度Мです。」
「ほっ、ほっ、ほっ、相変わらず君は楽しい人間じゃて、わしの人生最後に君に会えたのは宝物じゃな。是非わしの葬儀には出席してくれよ」
「それは、約束できません。」
「なぜじゃ?」
「僕の両親が他界してから、僕の好きな方の葬儀に行くなんて僕には約束できません。」
「そうじゃったな、、、、君の両親は、、、、」
「ジジィも耄碌したようじゃ。気遣いが足りんかったの、ではわしが死んだら」
「大きな声で笑って下され」
「あの口うるさいジジィがやっと逝きよったと」
「がっはっはっはっは~」
昭和の一時代を作り上げた、老練な戦士は最後まで豪快で迫力に満ちていた。
「まったく~父が大変失礼を言いましたね。どうか気になさらずに今後ともお互い精進してまいりましょう」
壱伸延清社長の一言でなんとかその場は丸く収まった。
実は壱伸延清社長とは仕事上の付き合いも新たに続いており、イッシンホールディングという会社は主力は食品を作ることだが、グループ会社には物流や冷凍倉庫、スーパーなど多岐にわたる。
その中で火吹武将の会社であり、会った時は五人しか従業員のいない会社だったのが、いまではCOOBデザイン株式会社の子会社となっている、COOBデザインコーテイングハウス株式会社の社長である清水豪壱氏が手掛ける、夢のようなコーティング試行工事を物流全ての車両、倉庫の屋根外壁などに使ってもらっているのだ。
そのかわりではないが、KABUKIコーポレーション子会社のKABUKI食品にイッシングループの食品をPB品として製造納入していただいている。
その時も竜治叔父に一言相談しただけだったが。竜治叔父の決断は早く決定的だった。
「かまわないよ。担当の者を行かせる。」
たった、その一言だけで何十億というお金が動くのだ。
今考えてみれば、あの時から俺の考えに【異】を唱えることなど竜治叔父の頭の中には無かったのだろうな。
そのような経緯となって、今では友人としてだけではなくビジネスパートナーでもある来客された二人である。




