姉御
東帝国ホテル【光輝乃間】では、未だ興奮冷めやらず若者たちの心は熱く熱く燃えたぎっていた。
元旧友たちの初めての同窓会?
(そもそも俺も楓真も帝城高校中退だからなぁ~)
っは、俺が中退卒業?してから5年。
それぞれの現状を確認しあうひと時でもあった。
当然一番目を引いたのは、先ほど退場していった
彭城楓真というこの短期間で世界的トップスターに登り詰めたスーパー芸能人。
俺やホト、妻の舞やタカヒコといったそれぞれの活躍は別として、やはり帝城高校という私立進学校卒業した旧友達もそれぞれに確かな歴史を刻んでいた。
舞の親友である遠藤美月さんは明治大学経済学部4年生で、三菱UFJ銀行総合職に内定が決まっているそうだ。
コロナが空けて経済が本格的に回り始めて、日本が初めて気付いた。
【人出不足】という現状。
優秀な人間ほど、各業種問わず引っ張りだこである。
まして、本当に優秀という言葉が当てはまる人間は、日本に留まらず外国企業への就職と海外勤務を希望する。
いわゆる良い人材程、海外に取られてしまうという日本という国の国力の魅力のなさが露呈してしまったのだ。
近い話でいうと妻の火吹舞は、海外の会社から就職のオファーが引っ張りだこであったし、先日アメリカから帰国した御堂大智ことミッドも日本に帰国する時に、沢山の会社 果てはアメリカ合衆国からも就職してほしいと声をかけられ引き留められたそうだ。
彼に限らず俺たちの場合は、やりたいことが既に決まっていてそれを熟す為に必要上アメリカという地で自分力を磨いたのは、あくまで通過点でしかないのである。
また彼の夢は、【火吹武将】と共にあるである。
まぁ~それは武将のチーム全員に言えることだが、、、、
彼らならば、どんな好条件を提出されようとその会社に自分の未来全てを預けることはない。
火吹武将という人間が存在する限り
帝城高校同窓会?
も、そろそろおひらきの時間となり、妻の舞がマイクを持ち最後の締めの言葉を軽やかに話し出す。
「皆さん、本日は急なお誘いにお越し頂き誠にありがとうございました。」
「そろそろ終了の時間となりますので、最後に皆さんの未来が輝かしく素晴らしいものになるように万歳三唱で締めましょう」
舞は横にいる俺に向かって小声で
「武将音頭をお願い」
俺はすぐさま、一歩前に出て両手を上にあげ、声を張り上げる。
「みんな!!それじゃ上着を脱いで、大きな声で元気よく締めようじゃないか」
「「「おうっ!!」」」
男達は、上着を脱ぎ女性は、持っているグラスやカバンをテーブルや椅子に置く。
俺は準備が整ったところで、腹に力を入れる。
「ここにいる、みんなの未来が輝かしく幸福であることを祈~って!!」
会場中に響き渡る俺の声は、皆の心と腹にドスンと響き力がこもる。
「「「「「バンザーイ」」」」」
「「「「「バンザーイ」」」」」
「「「「「バンザーイ」」」」」
最後の締めの万歳三唱が、色々なハプニングイベント付きの今日の会場東帝国ホテル【光輝乃間】で一番皆の心に刻まれた一瞬であった。
火吹武将という人間の一言一言がリーダーシップをとる人として人間力。
人を自然とひきつけ、この人とならいっしょに行ける。
生きたい!!
っと思わせる最大の魅力だ。
時間となり今日のイベントは終了しようとしてたが、皆の興奮する顔にはこれで終わってしまうのが残念でならないという気持ちが強く表れていた。
だが、俺は妻の舞やホトやミッド、タカヒコや縁さんに目配せしてそれぞれ声をかけながら退席させていった。
俺は別れを惜しむかのように沢山の旧友に囲まれていたが、
一人一人に声をかけ、男性には背中を叩いたり、女生とは握手したりとスキンシップを取りながらそれぞれ出口へと案内していく
「お前、大手電機会社に就職するんだってな、手に職付けた奴はこれからの時代強いぞ頑張れよ」
「社会は中々、優しくはないぞ。中退した社会の先輩として言っておくからな」
「婚約したんだってな、おめでとう。確か君の家も会社経営してたよな、跡を継ぐんだな。頑張れよ。へこたれた時は連絡くれよ。アドバイスなら経験豊富な俺に任せろ」
俺が、調べたわけではないが妻の舞の豊富な情報力から各個人の近況を聞いていたので、それぞれに声をかけゆっくりと会場の出口へと向かっていく。
ホトやミッドやタカヒコもそれぞれの友人たちと話しながら、退席を促す。
縁さんに関しては、圧倒的な大人の色気で強引に押し出してしまう。
そしてメンバー以外誰もいなくなった会場で俺は
会場の片づけを始めているスタッフ一人一人に声をかけていく。
「今日は、ありがとうございました。」
「騒いじゃってすいませんでしたね」
「汚してしまって、申し訳ありません」
一流のホテルスタッフも俺の言葉に思わず仕事する手を止めてお辞儀しながら
「こちらこそ、大変ありがとうございます。」
「またのご利用を心よりお待ちしております。」
出口付近で俺を見ていたメンバーは、俺の気遣いに対して
(将軍の気遣いはやっぱり凄いんだな)
(将軍はまだまだ俺たちの気付かない部分をフォローしてくれるんじゃな)
(タケマサ様の自然な行いが皆を引き付け模範を示してらっしゃるのね~流石ですわ)
小声でタカヒコだけ隣にいる舞に向かって話しかける。
「適正な金銭を出してサービスを受けているのになぜ金銭を出している方が気を遣わねばならないんだ?」
舞はタカヒコの銀縁の眼鏡の奥を覗き込むようにして
「前にも言ったと思うけど、お金を出した方がもらう方より偉いなんてことはないのよ」
「確かに法律では売買契約に関しては、対等だな」
「これも前に言ったけどね、その法律法律っていうの辞めた方がいいわよ、タカヒコ。あなたが優秀なのは私たちだけが知っていればいいことでしょ。他人にこれ見よがしに自分は優秀な法律家です。なんて言いふらす必要は全くないわよ」
「わかった。その言葉は肝に銘じよう。しかし将軍は何故ホテルスタッフにまで気を使う必要があるんだ?」
「武将は優しいのよ。それとどこに【縁】があるかわからないから武将のいる空間にいる人たち全員に気を遣うのよ。そこから仕事が生まれるかもしれないし、昨晩の成田空港みたいなこともあるからね。」
「それとね、これが一番重要なことなんだけど、
同じ時間。
同じ場所。
同じものを
一緒に見てもいてもね、武将はとんでもない発想や見方をするのよ。正直、私やミッド、あなたも含めてメンバーの変わりは少数でしょうけど、いないわけではないわ、でも武将の変わりはどこにもいないのよ」
「それが私たちのリーダーなのよ」
横で聞いている唯一の大人である侯葺縁がフッと微笑み
「武将様が特別なのは今に始まった事ではありません事よ。それよりもわたくしには皆様が、その年齢で彼の素晴らしさを理解できていらっしゃることの方が凄いことだと思いましてよ」
「縁さん、ありがとうございます。」
舞はまっすぐ輝くような黒髪が垂れ下がり床につくほどまで、お辞儀をして答える。
「でも、以前にお話ししたと思いますが私たちは縁さんと違って、まだまだ未熟です。」
「アドバイスや時にはお叱り頂くことも私たちにとっては良い経験なんです。」
「ホトが縁さんの会社で修業したことと同じように私たちにも、もっともっと厳しくご教授してください。」
麗しの美女はしっかりと舞の瞳を見てその覚悟を感じ取り、茶化すのではなく真剣に口を開いた。
たった一言。
「畏まりました。」
舞は、縁さんの本気の言葉と態度に対して全く引くことなく
「縁さん、その言葉使いも止めませんか?私たちはいわば、縁さんの弟子です。」
「ほほほ~舞様はとても面白いことをおっしゃいますが、、、、、」
「それは、出来ません。」
はっきりと拒絶する。
「大人には大人のルールがありまして、それを破ってしまうことは他の者への示しを崩してしまうことや自分に対して驕りが生まれてしまいます。以前、KABUKIエンターテイメント社長の水島様がおっしゃっていたことと同じことだとご理解くださいませ。」
KABUKIエンターテイメント水島社長は武将から年下の自分に敬語を使わないでほしい。という希望に対して、今でも全く変えていない。
舞は一瞬で理解して
「それでは、私たちは縁さんのことを【姉御】とお呼びすることはかまいませんか?」
「!」
「ええ、、、まぁ~公の場でなければ、、、、」
「しかし、舞様も武将様化が大分お進みのご様子でございますわね」
「ほほほ~」
舞は愛想笑いもせず、黙って
「お褒め頂いたと捉えさせていただきます。」
「姉御」
それを黙って周りで聞いていたメンバーたちは、黙って心の中でうなずいていた。
※※※※※※※※※※※※
東帝国ホテルでの同窓会兼再開を祝す会は無事終了して、帰宅の車中の中である。
車の中には、俺と舞と縁さん事 姉御とホト、ミッドがいた。
もちろん運転するのはシゲさんだ。
俺は運転するシゲさんに声をかける。
「シゲさん、竜治叔父さんにアポ取ってもらえますか?」
先ほど、帝国ホテルで話し合っていたことを実行しようと俺は考えていた。
希道直真の研究場所の相談だ。
シゲさんは、KABUKIコーポレーション現社長の火吹竜治叔父に相談するのがいいだろうと提案してくれた。
俺はそれをこれから実行しようと考えていた。
丁度今日は日曜日だし
しかし老練な戦士は俺の先を呼んでいた。
「火吹竜治社長は、すでにお屋敷にお越しになっております。」
「えっ!!」
俺は思わず声が出る。
俺がどう考え、どう動くか想定して更に一歩先をシゲさんは読んで手配を済ませていたのだ。
なんと、、、、
凄い!!
これが、オヤジの右腕だった人の考えと行動力なのか!
明らかにこれまで俺に接してきた在り様ではない。
俺を一人前と認めたからこそ、一段ギアを上げてきたのだ。
老練な実力ある強者に認められた時の喜び。
一言
堪らない!!
ロールスロイスファントムは、静かにそして威厳を放ちながら虎ノ門にある火吹屋敷に滑り込んでいった。
衛士棟のわきにある来賓用駐車場に、竜治叔父の黒塗りの高級車が止められていた。
ゴクン
思わず、俺は喉がなるほど緊張していた。
竜治叔父とは子供の頃から可愛がってもらい、共にこの屋敷で暮らしていたのだ。
オヤジとオフクロが他界するまでは、、、、
それが、どうしてだったのか俺は知らなかった。
俺が成長して、舞と同棲生活を始めてから竜治叔父がこの屋敷に足を運んだことは、ほんの数えられるばかりであった。
シゲさんが手配して、KABUKIコーポレーション社長がその日のうちに会ってくれるなんて普通はありえない。
社会で働くようになって気付いた、大人の暗黙のルール。
これから俺が話す内容がそれだけ重要なことだという証明だ。
シゲさんが運転するロールスロイスファントムは屋敷玄関前で静かに停車して、これまた何時ものようにシゲさんは素早く運転席から飛び出しそっと、後部扉を開けて直立不動の姿で立つ。
俺はやや緊張しながら、ぎゅっとこぶしを握る。
その僅かな俺の気持ちを察してくれたのは、妻の舞だけだった。
彼女は常に俺を見守り必要なことを全力で実施してきた。
彼女がこの屋敷に転がり込んできた理由も
【あの時】俺を一人にしては置けない!!
っという単純だが強い思いからである。
そんな美しく優しい彼女がスッと俺の脇に立ち、俺の腰に手を回し、優しく背中をさすってくれる。
子供をあやすようにそして周囲には全くわからないように
俺は不思議とそれだけの行為で驚くくらい落ち着けた。
「サンキュー舞。」
舞にだけ聞こえるように囁く。
そこに麗しき女人の声が優しくかかる
「武将様、もし火吹竜治社長と大切なお話があるのでしたら、私どもは席を外して参りますが、、、、」
侯葺縁さんの言葉は最後まで発することなく、途中で遮られた。
「その必要はないよ。侯葺さん。」
玄関で休日にも関わず、高級スーツ姿の男性の声が反論を拒絶しながら権威と威厳と迫力をもって発せられた。
KABUKIコーポレーション現社長である
火吹竜治叔父である。
その後ろには叔母であり竜治叔父の妻である、火吹京香さんの派手すぎない着物で彩られた姿が目に映り込んできた。
「皆さんにも関係のある話だから、遠慮なく同席してくれたまえ」
火吹家の本業であるKABUKIコーポレーションの社長夫妻が本家の屋敷とは言え、俺の若造に玄関まで出迎えることなど起こることのないことが現実に起きていた。
これだけでも今後の話がただらなぬことだと想像がつく。
俺は唾をごくんと飲み込み
「竜治叔父さんわざわざ足を運んでいたただいて、申し訳ありません。」
「かまわないよ。」
竜治叔父は、いつもと少し違った緊張感と雰囲気で俺に話してくるが、その言葉の奥底にあることが何なのか、今この時点では俺には全く想像できなかった。
そこにいいタイミングで、ツネさん事、松茸常子が皆に声をかける。
「皆さま、玄関ではなんですから、中へお入りください。只今お茶をお入れしますから」
このメンバーの中でもいつもと変わらず、火吹家に尽くしてくれる老練な夫人はササッサと俺の後ろに回り込み、皆を屋敷の中に押し込む。
うん、押し込むと言うのが一番妥当な言い方だ。
そして、30人は優に入れるリビングに椅子を取り出し全員が竜治叔父と隣に座る京香叔母を囲むように座る。
俺は竜治叔父の向かい正面に座らせられた。
同居する義理の父であり、俺の勤める京仁織物株式会社社長葛城仁と妻の葛城唯と共にその場にいた。
身内ではここにいないのは、俺と舞の子供である
今年6歳になる尚武と唯結2人の子供だけである。
最近ではほとんど顔を見るだけで、一緒にいることができないが、すでに立ち歩き言葉も随分うまく話すようになってきていた。
子供の頃は女の子の方が成長が早く、二人でよくケンカの様なものをしているがいつも兄の尚武が妹の唯結に泣かされっぱなしであった。
体格も言葉も全てにおいて、妹の方が格段に成長が早く今の尚武では勝負にならないほどであった、、、、
オヤジギャグではない。
そして、これから俺たちが想像もできない事実が話されようとして、緊張感をパンパンに含まらせながら火吹本家屋敷リビングは誰も言葉を発することなく、視線を竜治叔父に合わせていた。




