火吹武将(カブキ タケマサ)17歳
今日も、良い天気だ!
「学校に行くぞ、舞」。
「ちょ、ちょっと待ってよ。女の子は準備するのにいろいろ時間がかかるのよ~」
俺はパンを口で銜えながら、黒の皮靴を履く。本当は革靴よりスニーカーの方が好きなんだけど、学校指定だから仕方ない。
「置いてくぞ!舞。」
「待ちなさいってば」
走って玄関までくる見目美しい高校2年生。葛城 舞、中学校2年生の時から一緒に暮らしている。
俺が言うのもなんだが、その辺の綺麗とか可愛いって、レベルじゃない。
一緒に歩いていて、スカウトやらモデルやら何度、勧誘された事か、、、
手足は長く細く顔はとても小さく整っていて、目は切れ長の小さな口は蕾の様だ。
身長175センチ、体重???、痩せ型だが、出る所は出ていて、特に印象的なのは背中まで伸びた真っすぐ伸びた黒髪が艶やかな女性だ。
そこへ、送迎の車が静かに滑り込んでくる。
黒のロールスロイス ファントム、車両本体価格5570万円、、、
白い手袋をはめ、黒色のスーツに身を包み、背筋をピンと張り髪の毛は白髪交じりだが、全て後ろに整髪料で固めている。
いわゆるオールバッグって奴だ。
一部の隙も無い容姿に身を包んだ、父の時代から仕えてくれる執事、【しげさん】こと、重道 勘蔵55歳。口が堅く、信用のおける大人だ。
颯爽とファントムの後部扉を開ける姿も、凛とした空気感を作り出す。昭和の臭いを漂わせる俺達の信頼厚い保護者!
俺、火吹武将17歳、私立帝城高校2年生。
身長180センチ、体重70キロのちょい痩せ型、血液型B型、自分で言うのもなんだけど、まぁ良い男の部類に入るんじゃないかと思う、、、
帝城高校は小等部、中等部、高等部、大学と一貫の名門私立学校だ。
俺と舞は小等部から入学している。
実は俺の父親と舞の父親は同じ大学の同期で結婚した年齢も初めて子供を授かったのも同じと言う、、、
言わば、超幼馴染の腐れ縁って奴だ。
父親同士は勝手に、冗談で俺達が大きくなったら結婚させようなんて話をしていたとかなんとか、、、
舞の親父さんとは、よく合うし自宅にもよく来る仲だ。
いぶし銀の様な、渋さの中に少しだけおふざけの部分があるちょっと風変わりな粋な大人だ。
俺はそこが大好きだ。
名前は葛城 仁。日本織物会社の社長さんだ。よくは知らないが、相当儲かっているらしい、、、
今、俺達が一番ハマっているのは、【バンド】だ。
【HANZO】と言うバンドを舞を入れた6人で活動している。
YouTubeのフォロワーも10万人を超えている。
俺も舞も2歳から、ピアノを習っていたので、音楽は好きだし、楽曲活動は作るのも歌うのも大好きだ。
あの一体感と、楽器同士、ボーカルと競い合う感じが気に入っている。
何しろ個性的な奴らばかりのバンドだから、勝手にアドリブ始めるなんて日常茶飯事だ。
俺もかなり好き勝手やらかしている時もあるが、、、
将来についてはまだ、何も考えていないが、【商人の血】はしっかり受け継いでいて、いずれ起業しようと漠然とは考えてはいる、、、
そして、ファントムは静かにゆっくりそして、堂々と走り出す。
東京都港区虎ノ門、いわゆるオフィス街って町だ。
俺達の自宅は曾祖母の代からここ虎ノ門にでっかいオフィスビル5棟は立ちそうな広さの土地に自宅を構えている。
車が敷地を出る迄にいつもの様に、舞は髪を結い、リボンを結ぶ、俺はパンを食べ、ネクタイを結ぶ。
それくらいの時間が、門を出る迄かかるのだ。
別に俺が作った財産ではないので、偉くも何でもないのだが、生まれた時からあるのだから仕方がない。
帝城高校は車で、高層ビル群を抜けて桜田通りから曲がった大きな病院の2キロ先位にある、今年、たしか創立90年を迎える有名私立高校だ。
車で30分くらい行くと、学校近くはガラリと雰囲気が変わり高級住宅地になる。
帝城高校までの一本道に入った所で、女子高校生の団体を見かける。制服は帝城高校の生徒たちだ。
シゲさんが物静かに話す。
「彭城様がお困りの様ですが、お乗せしましょうか?」
彭城 諷真【HANZO】のメインボーカルで舞と同じく、小等部からの付き合いだ。
俺はシゲさんに助けてやってと言うと、ロールスロイス ファントムは女子高校生の群れの側に静かに、ゆっくりと近ずき、車の窓を開けて俺が彭城に声を掛ける。
「諷真乗っていくか?」
諷真は直ぐ、俺達に気付き女子を達をかき分け、車に乗り込む。
女子の群れの中に埋まっていた、男子一名救助成功。
「助かる。」
と言い、サッとシートベルトをしめる諷真。
身長182センチ、体重65キロの超痩せ型。血液型は俺と同じB型。
同性の俺が言うのもなんだが、こいつはやばい。
何がやばいかって言うと、まず容姿だな。
こんな男がいるのかと思えるほど、良い男っぷりなのだ。
線が細く、ちょっと中性的なのが更に庶民とはかけ離れた存在にしている。
腰回りは細く、ケツは小さく腰骨の位置が異常に高い。
足も手も細くて長い。指は女性の様に綺麗ですべすべしている。
細く長い首に乗っかる顔は、小さくまとまっていて、特に印象的なのは首から下の印象とは正反対の目力だろうか?
目だけは、強い意志と男強さを強く主張している。
髪の毛は特に染めたりしないで、黒髪をワックスで前に巻きながら垂らしている。
他を寄せ付けないオーラが全身から放っている。
どうして、俺の回りはこんなにも、美男美女ばかりなんだと文句が言いたくなるようだ。
舞が俺の横に座る、超美男子に気軽に話しかける。
「今日も、相変わらず取り巻きが凄いわね」
「ファンサービスだ、仕方ない。」
言葉少なに答える、メインボーカルだ。
やばいのはこいつの歌もやばい。
俺もギターとボーカルをやっているから、わかるが世の中に【天才】と言う奴がいるとしたら、こいつの事だろうなと思う。
高音から低音迄しっかり出る声はよく通り、とても綺麗だ。
ボイトレとかしていないというのに、こいつの歌声は一度聴いたら絶対忘れられない美声だ。
そんな、天才が本気で努力している姿を間近で見ていると、この世界で生きていくのは俺には無理だと痛感させられる。
こいつは高校2年生にして、将来プロになる事をしっかり考えていて、いまするべき事を全力で頑張っている。
口数は少なく、こういう容姿だから、友達は少ない。
だが、俺は夢を夢で終わらせずに戦う諷真が好きだ。
いつもの様に、教員用入口から車は校内に入り静かに停止する。
(舞の親父さんと俺の家がかなりの金額を学校に寄付しているらしく、特別待遇として許可してもらっている)
流れるような動作で、シゲさんが運転席から降り後部扉を開けてくれる。
諷真と俺と舞は車から降り、教員用入口から学校内に入る。
シゲさんは静かに
「いってらっしゃいませ、武将様」
っと、矍鑠として腰を折りお辞儀をする。
俺はシゲさんに
「今日は帰りにスタジオ行くから、帰りは舞と電車で帰るからツネさんにご飯は遅くなるって言っといて下さい。」
「かしこまりました」
と低い声で、丁寧に答える。
ツネさんとは、曽祖父の時代から火吹家に仕えてくれてる家政婦さんだ。家も火吹家の敷地内に立っていて、代々俺んちの家政婦を継いでいてくれている。
ツネさんで丁度三代目にあたる。
料理自慢の信頼おける少ない大人の一人だ。
シゲさんも家族共々、自宅をうちの敷地内に建てており、息子さんは、一流企業で働いているが、いずれ当家の執事業を継ぐらしい、、、
俺達は高級車を降りて、校内に3人で入って行く。
俺と舞は2年生の特進クラスにいるので、同じ教室だ。
こう見えて俺も、早慶上智くらいは狙える頭はある。
舞は学年でも成績1位と2位しかとった事がないらしい、、、
天は二物を与えず。
なんて言った奴、呼んで来い。
才色兼備にお嬢様ときたもんだ。無いもの探す方が大変だっつうの
「おはよう。」
声を掛けてきたのが、学年成績を舞と争う、常慶 貴彦。
【HANZO】のベーシスト。
嫌な事にこいつも、頭が良くてハンサムなんだな。
ただ、印象が【クール】に感じるのか、隙が無いのか余り女子に騒がれてるようなことはない。
身長175センチ、体重60キロの標準よりちょっと痩せた感じ、銀縁の眼鏡が知的さを醸し出している。
髪型は今時、7.3にきっちり分けてハードなジェルで固めている。
マイがにっこり笑いかけ
「タカヒコ、今日の模試勉した?」
タカヒコは銀縁の眼鏡を左手の薬指で軽く上げて、キラリと眼鏡が光る。
「模試ごときで、私が勉強などするはずがないでしょう」
「いいから座れよ」
俺は立ったまま、気取ってるタカヒコに冷やかし半分で言う。
舞とタカヒコは勉強に関しては、強敵なライバルだ。
高等部、外部入試トップで入学してきたタカヒコとは、直ぐ仲良くなり楽器も弾けると言うので、バンドに誘った。
こいつは楽器の扱いは相当上手いが、音楽基礎が親父さんの影響で【JAZZ】なのだ。
やたらとセッションしたがるし、アドリブ満載の演奏家だ。
めんどくさいやら、勝手やるくせに【嫌味】がない。
頭が良い奴はコミニュケーション能力も相当高い。
余計な事は言わない。
人を傷つける事も言わない。
自分を必要以上に自慢しない。
少し、女性恐怖症があるように見える、、、
こうして、いつもと変わらない一日が始まっていくのだ。