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宿屋
しばらく歩き続けると日も落ちて暗くなってきたので、
一軒の宿屋に泊まることにした。
こじんまりとしているが、きれいな木造の宿屋で、
着物姿のヴァルキリーのおかみさんが笑顔で迎えてくれた。
「一泊、銅貨三枚です。」
「お金、もってる?」
「一文無しだ。」
……私は絶句しながら、ポケットから一枚の銀貨を取り出した。
おかみさんはニコニコしながら私たちを部屋に案内してくれた。
……しかし
「ベッドが一つしかないんだけど?」
あのおかみさん、私たちを恋人同士だとでも思ったのかしら?
とんだ間違いだわ。
「じゃあおれ、床で寝るわ。」
当然のように言った彼を見て、私は思わず声を上げた。
「床でっ!?……カゼひくわよ?」
あなた、いったい何を考えてるの?
「何って……別に慣れてるし。
むしろ床のほうが寝心地がいいって言うか……
研究中によく床で寝てたから……」
彼はあわてるようにそう言った。
この人やっぱり、よくわからないわ……
次回は、彼の話です。