科学オタク
『彼』の話はおわり。
私視点に戻るわよ。
屋敷の外に出た私は今、まちを歩いています。
「にしても……派手なやつがおおいなあ。」
彼が感心したように言った。
「はで?」
「ほら、髪とか目の色がさ。うわっ、あいつなんかピンクじゃん。」
……そうかしら?
私から見ると、あなたの黒い髪と目のほうが珍しいけど?
「えっ、そうなん!?」
ええ。黒い髪なんて、始めて見たわ。……いや、違うわね。
たしかあのタビビトも、そうだった気がする……
「そういえば、あなたに聞きたいことがいくつかあるのよ。」
「おう、何でも聞いて!」
……
いちいちリアクションが大きくてうっとおしいわ。
「あなたは、なんで私の屋敷に来たの?」
外に出てみてわかったけれど、私の屋敷は街からかなり離れたところにある。
ふつうの者がふらっと立ち寄るような場所ではないはずだ。
「そりゃあ、目の前にあったから、だろ。」
はあ?
「こりゃあ入るっきゃねえな!と思って。」
この人、思考回路がよくわからないわ。
「そしたら、中におまえがいて……
まあその、なんつーか……」
なによ、はっきり言いなさいよ。
「ひ、ひとめぼれっていうのか?なんか変な気持ちになって。」
そう言うと彼は、真っ赤な顔でそっぽを向いた。
なっ、なによ。
そんなこと言われると、私まで顔が熱くなってくるじゃない。
「そういえば、あなたの名前を聞いてなかったわね。」
「おれ?おれはただの科学オタクだよ。」
科学オタク?
変わった名前ね。
「いや、そいういことじゃ……まあいいや。」
そういうと、私と彼は真っ赤な顔で歩きつづけた。