かわいいコロ
タカシん家のコロは、ころころころころ肥満気味。
ふさふさふさふさ伸び放題。顔が埋もれた毛むくじゃら。
だけどね、太ってるけどね、フリスビーを投げると、風より速く走っていく。
遊ぶのがすきで、一晩中だって庭を走り回ってるらしい。
近所迷惑には、ならないんだと。コロは、とても静かな犬だ。
ころころころころころろろろって、葉っぱまみれになるのが大好き。
タカシはコロの上に、給食で出たビワの種をまいた。
毎日欠かさず水をやるから、なんか知らないけど芽が生えてきた。
コロはタカシに水をかけてもらうたびに、ころころころころ土の上を転がった。
そう言えば少し前に、『カツラむき』という遊びがはやった。
通行人で怪しいヤツの頭をさらす、という正義の遊びだ。
オレとタカシは百円ずつかけて、カツラかカツラじゃないかの当てっこをした。
そこで活躍するのが、コロだ。
「コロ、アイツはカツラだ。やってこい」
タカシがそう声をかけると、コロは光りと同速度でとびだして、おじさんの頭の高さまで飛び……しゅ〜ん、ふわっふわって……ニセモノの髪の毛を舞い上がらせる。
「ち、百円すられたぜっ」
なんか、いつもオレが負ける。
おじさんは慌てて、乱れた髪の毛をかぶる。
そんなコロの好物は、ポテトチップスだ。
オレとタカシが食べてると、きゅぅーんって鳴きそうな顔をする。
タカシは線香に火をつけて持ってくると、やわらかく盛っている土の上にさした。
立ち上る煙りを眺めながら、タカシはクスクス笑う。
「お前も、こりねーな」
コロの死因は、ポテチの食べ過ぎによる糖尿病だ。