〜プロローグ〜
「「愛しの娘達、これからあなた達は、様々な困難に立ち向かうことになると思うけど、私たちの自慢の娘だから、大丈夫よね。
本当は、いつまでもあなた達を守って、成長を見ていたかったわ。でも、それはもう出来なくなってしまうの、こんな私達でごめんなさい。」」
「ふわぁーん」
「もう、朝になったのね。さぁ、朝食の準備をしましょう。」
少女は、すっと上体を起こし、少女より一回りも二回りも大きい天蓋付きのベットから、ゆっくりと床へ足をつき、立ち上がる。
静かに歩きながら、多くの衣装が仕舞ってある衣装部屋へ、部屋着を脱ぎながら歩く。
衣装部屋に入ると、気に入っている服へ手を伸ばし、袖を通しゆっくりと着る。
彼女の服は1人で着替えるには時間がかかる物が多いため、普段は、メイドのアンリさんに着替えを手伝ってもらっていた。
アンリさんへの感謝の気持ちを抱きながら、着替えを進める。
着替えが終わり、衣装部屋を出ると、部屋の真ん中にある、広く、大きい羽毛の絨毯を通り部屋の扉に手を当て、少し力を入れ扉を開ける。通路を出て、左へ曲がり厨房を目指す。通路には大きな窓と鎧が交互に遠くまで続いている。
通路の点々と続く窓から外を眺め、歩きながら厨房がある場所をゆっくりと思い出す。
厨房に最後入ったのは、小さい時に迷い込んだ時以来かしら。こちらの方で当たっているわよね。少し不安になって来たわ、まぁ私のことだから間違いないでしょうけどね。と思いながら歩いていると、木で出来た大きい扉が見えてきた、扉は少女にとって壁のように大きく、とても重い。しかし、その扉には二重扉のように、人ひとりが通るに困らないほどの大きさの扉があった。
扉の近くに木の板が落ちていることに気付き、その板を見ると厨房の文字が書いてあった、どうやらその板は厨房の部屋を示すための名札みたいだった。
「名札が床に落ちてしまっているじゃない。危うく厨房であると、気付かずに通り過ぎてしまうところだったわ。まったく。」
床に落ちている、厨房の名札を拾い、中の扉にある金具を引き扉を開け厨房の中へ入って行く。
厨房の中は、長く使われているだろうと思わせる、細かい傷などが付いた食器棚や大きなテーブルがあり、そこに調理道具、食器が置いてあった。
床や壁は石で出来てあり、そのせいか少し、ひんやりとした空気が漂っていた。
食材が置いてある場所を見つけるため周りを見渡す。ふと、料理長のウルガさんの事を思い出し、日頃から料理の作り方と食材料の置き場所を、教えて頂けば良かったと後悔し、少し自分の不甲斐なさを感じてしまう。
近くのテーブルに名札を置いた後、食材が置いてある場所を探すため、厨房の奥へと進む。
少し歩みを進めると、食料庫と書いてある名札を見つけ、そこの扉を開ける
倉庫の中は日が当たっていなく、暗くて中がよく見えなくなっていた。
「暗いわね、そう言えば火の魔法があったわ、灯りに使いましょう。」
右の掌をゆっくりと前に出し、詠唱を唱える。
「太陽の源に命ず、我に力を貸し与えたまえ。…少しお借りしますね。
Fuego luz」
詠唱と共に小さな炎が掌の上に現れる。
「まぁ、今の私には、これが限界なのかしらね。もっと頑張らなくちゃ。」
炎の灯りを頼りに、食料庫の中で食材を探す。
「まだ、お野菜などが有りますね。良かったわ。
何を作ろうかしら、ってオムレツとサラダしか作れないのですけど。卵はあるかしら、あっ! 有りましたわ。二人分は優に有りますわね。」
卵を4つと野菜を少し持ち、食料庫から出る。厨房の中央へ移動し調理の準備をする。
「以前、ウルガさんにご指導を頂いた時は、この厨房でお調理をしていないから、上手くいくかしら、少し不安ですわね。
でも、モノは挑戦よね、頑張りましょう。」
慣れない手つきで調理を始める、少し時間が経ち料理が出来上がった。
オムレツとサラダは二人分あり、そのオムレツのひとつはやや黒くなった。
「2つ目が綺麗に出来ましたし、結果オーライよね!」
自分を慰めるようにつぶやき、完成した料理をワゴンに乗せ、運ぶ準備を始める。
ワゴンで料理を運ぶのが初めてで、その体験を楽しみつつ、厨房を出る。
料理を運ぶ先は、厨房を出て右斜め前にある大広間である。
彼女はいつも、反対の扉から大広間に入るため、厨房側の扉から入るのは、新鮮に感じ気持ちが少し高揚する。
「さぁ、料理をテーブルへ並べましょうか。」
ワゴンに乗った料理を一つ一つ丁寧にテーブルへ乗せ、朝食を食べる準備をする。
準備が整ったと同時に、反対側の扉がゆっくりと音を立てて開き、そちらへ視線を向ける。
扉から今起きたばかりと言わんばかりに、大きなあくびをしながらウサギの人形を抱えた少女が入ってきた。
「もう、今起きたばかりなのかしら? ルリ、あなたいくら妹でも、私たちは双子なんだから、もう少し私くらいには、しっかりしてくれてもいいのよ?」
ルリはまだ、眠り足りないような寝惚け眼でよたよたと近寄り、ペコリっと音が出るんではないかという感じで、軽く頭と下げた。
「ごめんなさい。マリお姉様と居ると安心しちゃって、つい…。」
話しながらも、眠気という魔物にやられてしまい、ルリの頭が船を漕いでいる
「こらこらっ! ルリ! 立ったまま寝ないの、器用ね全く。その器用さを違うところで見たかったわ、もう。ほら、朝食を食べましょう、せっかく私が用意してあげたんだがら。」
朝食という言葉を聴いた瞬間、ルリは、パッと目を開き今までの眠気が嘘かのように、スタスタとテーブルの方へ向かい、椅子に座った。
「マリお姉様、早く食べましょうよ、お料理が冷めてしまうわ」
キラキラした眼差しでマリを見つめる。
「もう」
ルリをみて、少しため息を吐いてから続けた
「そうね、お料理が冷めてしまったら、もったいないわね。それでは食べましょう。」
朝食を食べながらルリに話をかける。
「ルリ、食べながらでいいから、これから話すことをちゃんと聞いてね。」
口をもぐもぐさせながら、小さく頷くルリ。
頷くのを確認してから話し始める。
「あのねルリ、私たちはこのお家に住み続けることは、もう出来なくなってしまったの。だからね、これからは二人きりで旅に出ようと思うの。ルリ、私と一緒に来てくれるかしら? もちろん私は、あなたの事を守るわ、どう?」
話を聴き終わったと、同時にルリは手に持っていたスプーンをテーブルに置き、まっすぐマリを見つめ答えた。
「マリお姉様、私、昨夜1人でずっと考えてたの、私たちのお城がこんなになってしまって、お父様もお母様も、アンリ、お城のみんなが私たちから居なくなってしまって、とても悲しかった。でも、こんな時でも、マリお姉様は、私の事を真っ先に考えてくれる、自分だって悲しいくせに…」
ルリの瞳から大きな雫が頬を伝わりポツリポツリとテーブルへ落ちる。
涙を拭う事をせずに続ける。
「だからね、私は、マリお姉様のために魔法のお勉強をいままでよりもっと頑張る、そして、お姉様が私を守ると言うならば、私はお姉様を守る、私たちがいれば、何処に行ったってもう、悲しむ事はないと思うの。」
涙を拭い、マリへ笑顔を向ける。
マリは、驚いた顔をしていたが、ルリへ微笑み返す。
「ルリ、あなたがそんなに考えてくれてたなんて、私、嬉しいわ。
早速、朝食を食べましたら旅の支度をしましょう。これから長旅になるわ、だって、
私たちをこんな事に陥れた人達を探して見つけ出して、罪を償って頂かなくては。
私たちへ、憎んでも憎みきれない罪を犯したのだから」
城の中は荒らされており、廊下の鎧などは倒れていて、城の兵士達の返り血で汚れている、床や壁は爆発が起きたように黒く焼けていて、大きな穴があちらこちらに開いていた。
少女達は食事を終え、旅に出る支度を始めた。
「「最後に、あなた達に黙っていた事を伝えます。本当は、もう少し大きくなってから、話そうとお父さんと話していたけど、今しかもう伝える時は無いので伝えます。お姉ちゃんは、この前、私たちにお話してくれたよね。あなた達の魔法は、普通の人が習得する事が出来ない、あなた達の特別な能力があるの。流石私達の娘ね
そして、あなた達の本当の能力を目覚めさせるためには…」」
ここで、手紙が終わっている。
この手紙のことは、ルリにはまだ、話せていない。
個人で描いていたイラストの設定の妄想が膨らんだので書いてみました。不定期でコツコツと書いていこうと思います。変な文章かもですけど、大目にみてください。