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水縹
猫は気まぐれに軽い足取りで、淡い緑の中を走っているが、そんな猫とは裏腹に、僕はサンダルの脚に擦れる感触に苦戦していた。
普通の生活をしていればこれ程までに草木に呑まれることは無いだろうし、ここに来る前は確かに自然と触れ合いたいとは思っていたが、そんな直接的な意味で触れ合いたかったわけじゃない。
やっぱりここに来たのは間違いだったな、と僕は顔を顰めた。
どれぐらいたっただろうか。暑さと足元の悪さで僕が少し苛立ちと疲れを覚えてきた頃、やっと草が少し薄くなったけもの道が姿を現した。
クタクタになりながら足元だけを見て走っていると、猫がにゃぁご、と鳴いた。
捕まえたぞと前を向くと、視界に飛び込んできたのは木造の縁側だった。
呑気に尻尾を揺らす三毛猫、蝉の声に混じって微かに聞こえる扇風機の音と、そしてその扇風機で涼む青いノースリーブのワンピースを着た少女。
その瞬間僕の心臓はトクン、と大きく跳ねた。耳の方まで体温がグッと上がっていくのがよくわかる。