11.適『性』試験
年下の彼女が出来ました。わーい。
しかしギリギリ十六歳。どれくらいギリギリかって言うと昨日まで十五歳でしたって言うくらいぎりぎりで十六歳。それでも結婚できる年齢ではある。合法である。神様ありがとう。
でも彼女は箱入り娘なんです。女学校で育った純粋培養の。世間ズレしてない。無垢って言うのかな、もちろんいい意味で。こんなおじさんとホイホイ付き合っちゃうような娘ですから。
でもだがしかし。無垢だからこそ手を出しにくいということもある。触れるもの皆傷付けてきた不器用なこの身が憎い。
こういう娘に許されるのはどこのラインまで? 恋のABCとかどこまで御存知なのか。子供の作り方を聞いて「コウノトリが運んでくるんです」とか言われたら罪悪感で首を吊る自信があるよ!
慎重になるんだ。落ち着け、素数を数えろ。セーフティーラインを見極めろ。
手を繋ぐ、キスをする位ならいくら何でもOKだろう。舌を入れるのはどうだろうか。過剰に肌が触れ合うのは? 撫でるまではイケるか……揉むのは……挟むのは……。そして究極的にドッキング状態まで持って行けるのか。
さりげなくいこう。さりげなく。紳士的に。
なぜこうも焦っているのか。
それは今現在、オレの部屋で二人きりだから。そしてベッドに二人横並びで腰掛けているから! こんなチャンスは年に一度あるかないかだから!
ちなみにご両親からは公認である。公認でなければこんな状況にはしてもらえない。ただしお義父さんからは「節度を守ろうね。コロスよ」と釘をさされている。だから場合によっては今日が命日となる。本望だがな。
さりげなく近寄る――OK。
そっと手が触れ合う――OK。
顔を近づけてキスを――焦るな、まだだ! お互いの目が合ってはにかむ彼女。つられて笑うオレ。幸せ。
「叶恵さんはさ、同じクラスの娘が、こういう時、何をしてるかって聞いたことある?」
あくまで友達の話だよ。ここから彼女の性の知識を引き出すよ。全俺が賞賛を送るファインプレーだよ!
「あの、はい、あります。許嫁がいる友達も多いですし、こういう風になったって話も、教えてもらいました」
「へ、へー、そうなんだ。高校生だもんね。そういう娘もいるよね。その時はどんなことしてたって聞いたの?」
「それは、ええと、今の私達みたいに同じベッドの上に座って、か、からだがですね、もっと密着してるというか」
「こう?」
二人の間に隙間がないほど寄せ合い、肩を抱いて文字通り密着する。
「あ、あああ、横、じゃなくて、膝の上に乗って、後ろから抱きしめられたって――」
「なるほど。こうか」
言われた通り、叶恵の細い身体を抱き上げて膝の上に乗せ、肩の上から腕を伸ばして上半身を抱きしめる。
「それから?」
「それから――肩越しにキスを――んむっ」
ちゅっちゅ、ちゅっちゅ。嫌がられている様子はない。むしろ、うっとりって感じ。いいぞ、いい流れ来てる。でも舌を入れるのはやめておいた。ディープなやつは刺激が強すぎるかも知れないからな。ふふふ。
「キスのあとは?」
「……っぁん。はい。キ、キスのあとは…………」
どぎどき。近距離で「っぁん」って言われるの超エロいな。
「同じ布団で一緒に……」
お、お、同じ布団で!? 一緒に!?
「将来のことを話し合いながら寝たそうです」
ぽっと顔を赤らめる叶恵。内心でガッカリする俺。
へたれ! 実にへたれ! お前、そこはさぁっ! あとの人のこと考えてさぁっ! アレしやすいように前例を作ってくれないとさぁっ!
あー、だめだ。もうだめだ。友達の許嫁がヘタレのせいで俺もギブアップだわー。こんなおじさんが前例も無しに叶恵みたいな若い娘に手ぇ出せないわー。もうだめだわー。
まあね。仕方ないね。お義父さんに「コロスよ」って釘刺されてるしね。
「寝るにはまだ早い時間だよね」
「そ、そうですね。もうちょっとこのままで……」
「じゃあ一緒にお風呂入ろうか」
「へぁぇっ!?」
慌てふためく叶恵を抱きかかえて浴室へレッツゴーだ!
そして感謝しろよ後続の若者達。俺のおかげで『一緒にお風呂には入れる』という前例が出来るのだからな!
はい脱ぐ-。そして脱がーす。裸わーい。ほんでお湯溜めながらシャワー浴びーる。いえーい。
勢いがあればなんとか出来るもんだな。わっはっはっ。
あ――でも――――洗いっことか……どぅふふふふ、どうしよっかな。照れるわー。
「指が! 指の動きが! え、えっちぃです!」
「エッチな男は嫌いかな?」
「――っ――――ん――――うぅ――――んやぁ?」
小動物っぽい。かわいい。
詳細は省くがお風呂場でぬるぬるしてコチョコチョしてきゃっきゃうふふでした。
一線は越えてない。お義父さんにコロコロされちゃうから。
でも幸せ。どぅふふふふ。