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第30話 ~決戦当日.1──ガーンバルド城塞王国、戦闘態勢~

 決戦当日。


 ノットとドラゴンが何時に、どの方角から現れるかは意見が別れた。ノットに転送円を遠隔で生成する能力があると推測されるためだ。

 ただ、転送円を用いた転送魔術は、移動手段として最上級のものだが、その繊細さから、妨害手段もある程度存在した。

 でなければ、王国に爆弾をひとつ転送して終わり、ということになりかねない。実際、そうなった国は存在するが。


 そこで、あらゆる不安定な予言装置、あるいは預言者によって導き出された、ノットが現れると思われるエリア()()の転送を妨害することで、前回のように大量のワイバーンを無限に送り込まれることを阻止する方針となった。もちろんその気になれば、付近一帯全ての妨害は可能だが、全エリアを妨害すると、襲撃を先送りにされかねない。

 2度出し抜かれた時とは違い、今度はしっかり上空方面の転送円生成も妨害してある。


 転送円に対する妨害は、ノット側も感知できる。この「ここから来い」と言わんばかりの、あからさまに罠、あるいは挑発とも取れるガーンバルド側の選択に対して、ノット側は乗ってくるだろう、と考えられていた。


 理由は明白だ。

 古龍ベルダドラゴンが、()()()()()()()()()からだ。

 あらゆる戦略も罠も技術も技も、生物としての格が違う、というだけで打ち破られてしまいかねない。


 つい先日ベルダドラゴンに滅ぼされた北方軍の中には、ガーンバルドが仕込んだスパイも何名か含まれていた。

 ただし、情報らしい情報は得られなかった。最後の通信は、"一瞬"、"全滅"、”絶望"といった、断片的なものばかりだ。それほど瞬く間に壊滅したという事実は、これから起こる戦いの厳しさを容易く想像させた。


 ノット側が現れるのは、正午頃と予測されていた。理由は前述の各種予知、及び「ノットは朝起きられない」「起きてからの準備も遅い」「前日に準備をするなどありえない」などのデレム・アザレア・テレーゼの情報などによるものだった。



 『こちらはガーンバルド城塞王国、環境省・自然環境局・自然災害対策課です。国民の皆様にお知らせします。本日9時より、予定通り"世界樹の息吹"の試運転を行います。8時より、本日中の該当地区への立ち入りは禁止されます。まだ該当地区にいる方は、避難誘導員の指示に従い、速やかに所定の避難所に移動してください。繰り返します……』


 国内中心部にて、アナウンスが流れ続けている。


 "世界樹の息吹"の発射が行われれば、"世界樹の息吹"発射装置の周辺、及び世界樹周辺はしばらく人間に害が及ぶ高濃度の魔力に汚染される。

 本来、"試運転"で誤魔化してはいけないところだ。ただし、真実を公表して生じる混乱よりはマシと結論付けられた。また、ノット側が現れなかった場合は発射されることはないため、実際に"試運転"で終わる、という理屈も一応存在した。


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 ~~ガーンバルド城塞王国 ワイバーン厩舎~~


「C隊パミック、交替しに参りましたッス!」


 ワイバーン部隊は、決戦前夜から、予期せぬ奇襲に備えて上空から国全体を哨戒していた。ワイバーンというより騎手の負担を考慮し、4時間交代制である。

 転送円は封じているが、普通に上空から襲撃してくる可能性は充分にありえる。


「ご苦労。天気は変わらずだ。天候情報は?」

「はっ! 天気は変わらず快晴の予報ッス!」


 前回のノースランドドラゴン戦で、ノットは天候を操作してきた。そのため、天候の変化にも注意が払われ、天気予報魔術士と連携が密に取られていた。


「ドラゴン出現に、ワイバーンが動揺しないとも限らん。手綱を離すなよ!」

「うぉッス! ウチの子はへーきッスけど! 行ってくるっす!」


 パミックはワイバーンに跨る。ワイバーンは軽く吠えると、快晴の空に舞い上がる。

 

 現在時刻は10時。決戦予想時刻は12~13時だ。その時間帯に担当が割り当てられている面々は、つまりワイバーン部隊の中でも精鋭揃いだった。


「よしよし、いい子ッスね」


 パミックは担当場所に向かいながら、ワイバーンの状態を確かめるべく、空を縦横無尽に走らせる。

 飛行船の通行予定ルートは特に注意して観察する。

 間もなく飛行船の出発時刻だ。


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 ~~ガーンバルド城塞王国 飛行船発着所~~


 飛行船発進時刻になり、発着所にはけたたましい音量の警告音が流れていた。赤いランプが明滅し、視覚でも危険を知らせている。


『最終目視チェック完了! 異常なし! 乗組員は乗船、それ以外は退避、急げ!』

『メイン魔導タービン起動! タービン1~6に魔力伝導開始!』

『魔力隔壁、完全封鎖確認! 魔力漏出無し!』

『グレートピラー魔導タービン起動! 魔力回収速度、予定範囲内! 隔壁内魔力濃度上昇無し!』

『全ロック解除完了! 空中静止ヨシ!」

『全乗員配置確認、よし!』

『魔力防壁展開! 強度10%で安定!』

『ナビゲーション機器チェック、コンプリート! システムオールグリーン! 船長(キャプテン)、いつでも全力どうぞ!』



『よし! 聴け、お前ら!』


 ギィルの、"補正された"、"元々の"熱苦しい声が、船内に響く。

 

『この船は試作船(チャレンジシップ)だ、気合と根性で浮かびはするが、いつ燃え上がるかわかったもんじゃねぇ! そんな船に乗ろうって大馬鹿どもが、オレは大好きだ!!』


 船内から歓声が上がり、船を震わせる。


『ただし命令だ! オレより先に死ぬな! オレが死んだら好きにしろ! どうせならドラゴンのどてっ腹に突き刺さって死ね! オレたちは前を向き、前に向かって叫ぶ!! 行くぜぇえっ……"黄金行進(ゴールデンゴール)号"……発進っっっっ!!!』


 轟音と共に、飛行船が上昇を始めた。



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