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第2話 ~秘書と合流~

「というわけで、今日からよろしくな」


 ザウが拍手で迎え入れると、新しい秘書──ヤイ・ゴックスは、露骨に嫌そうな顔をした。


「……なんであたしなのよっ!」

「いや、お前が来たんだろっ」

「あの態度で察しなさいよっ!バカなの!?」


 確かにヤイは、面接に受かろうという感じではなかった。そのつもりだったとしたらただの礼儀知らずだ。

 しかしそうとわかったザウは、逆に採用して驚かせたくなったのだった。ザウはそういった若者らしい感性を持っていた。未熟とも言えるが。

 

 このザウの決断には、上司のアオイも予想外だったものの、「まあ……後でどうとでもなるからいいけどね」といった、大人の距離感で対応した。

 実際のところ、アオイはザウが、というより龍災対策室が具体的な成果を挙げることをさほど期待していない。

 なので、ザウが誰を選ぼうと大勢に影響はない、という認識だった。また、防衛戦闘局のヤイから、有用な情報を得られることもあるだろうから、これはこれで旨味はあるのだ。


 さて、龍災対策室は、環境省塔内にある余った部屋を雑に整理して設けられた。

 そのため、全体的に埃っぽく、部屋の端には、いつからあるのかさえ不明な古い資料が、ひとまとめにして除けられたりしている。

 机は6つあるが、Vの形をした氏名標は2つしか用意されていない。つまりザウのものと、ヤイのものだ。


「はぁ……サイッアクよ、こんなの……国を守る英雄として歴史に名を残すあたしのプランがべこべこじゃない……」


 (すっげえ野心家だ…)とザウは少し感心した。ザウもそういう話を、聞く分には好きなのだ。


「でも、ベルダドラゴンをなんとかしたらすっげえ英雄だろ?」

「装備も人手もゼロゼロのゼロでどうしろってのよっ!」

「えーっと、そりゃまあ……知恵と工夫?」

「ふん、素人はこれだから……。いい?虫がヒューマンを殺せるのは、毒があるからよ。毒がなかったら、何をしても踏みつぶされるだけでしょ」

「……つまり、龍に通る攻撃があればいいってことだろ?お前、どのくらい強いんだ?」

「はぁ!?あんたのウン百倍よ!!……じゃなくて」


 そこでヤイは、急に真面目な顔になり、爪を噛みながら考え始めた。


「……ワイバーンは倒せるわ。でも、龍はまだない。長生きしてる龍ほどマナを溜め込んで強くなってるらしいから……属性解析して、専用の武具を作って、専用のスキルを磨けば、2・3回怯ませることぐらいはできるわ」

「そりゃあ……結構、凄いんじゃねーの?」


 そもそも龍は、基本的に立ち向かうべき存在とされていない。崇めるべき対象だ。

 理由はシンプルに、強すぎるからだ。自然災害と似ている、防ぎようのないもの。

 国レベルの力と、歴史に名を残すレベルの力の持ち主を集結させてようやく勝ち目がわずかに出てくる、という具合だ。

 それを踏まえると、ヤイはかなり大胆なことを言っている。そしてその見立ては実際、大きくは外れていなかった。


「……で、どうすんの?」

「え?」

「あんた室長でしょ。仕事あるなら言ってみなさいよ。なかったら防衛戦闘局ウチに帰るわよ」

「あ、ああ……そうだな。まず……」


 ザウは、アオイに言われた差し当たっての仕事を思い出す。


 まず、巨龍ベルダドラゴンの実態調査。どう対処するにせよ、判断には龍に関するあらゆる情報が必要だ。

 被害調査。目撃者からの聞き取り。残留物の捜索。残留マナの分析。歴史書を紐解く必要もある。

 襲撃のタイミングに規則性はあるだろうか? 予測することや、調整することはできるだろうか?

 追跡手段があれば、龍の住み家を突き止めることも可能かもしれない。難易度は高いだろうが…。

 どんな武器や魔法なら通じる? 試してみたら、龍は反撃してくるだろうか? 龍を刺激せずに試す方法は?

 ……などと一気に考えて、ザウはくらくらしてしまった。


「ちょ、ちょっと大丈夫?」

「いや、うん……ダメだな、先のことばっか考えちゃ。とりあえず被害調査から始めようぜ。こんな居心地がいいところいたら、眠くなっちまう」

「はぁ? ここが? 影の国ってこんな感じなの?」

「いや、もっと真っ暗だけどな」


 そんなことを話しながら、二人は調査に出発した。

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