第16話 ~"ミュール平原龍襲" 決着~
「ったく、見事なもんですよ、大型獣課の皆さん。兵士の士気も爆上がりです。
……でもねえ、もうちょいと協調性ってもんを見せてくれませんかねぇ!?」
ドラゴンを打倒して、本部になんとか到着したザウ、ヤイ、ベアリウスの三人を、クローズはなんとも言えない感情で迎え入れた。三人組は余力があるため、引き続きワイバーンとの戦闘を行っている。
「キョウチョ……セ……?」
「ナニソレ……?」
「ソレ……ドコノ筋肉……?」
「そこだけチームワークを見せるな!!」
「ダッハッハ。で、クローズよ。空はどうなった」
ベアリウスが肩をゴキゴキ鳴らしながら尋ねる。クローズはため息をついてから、
「おかげさんで、転送円は破壊できました。ただ思ってたんと違いましたが」
「ほう?」
「飛行船でも飛んでるもんだと思ってたんですがね。実際にゃ、空に転送円が描かれてました。しかも複数の転送円を合わせて立体的に……つーか球状に」
クローズの言葉に、ベアリウスは感心し、ヤイは困惑し、ザウはよくわからないのでキョトンとした。
「ほう。珍しい型なのか」
「珍しいっつーか、シンプル高レベルすね。既存のやつより安定性が高く、連続で使えてんだから。ま、特大の大砲でぶっ飛ばしてやりましたが」
「クローズに壊せる強度ではなあ」
「だーもう、いつまでもガキ扱いはやめろ下さいよ。んで? ここに戻って来た以上、一旦もう戦えないんでしょう? もうワイバーンの増援はないし、帰ります?」
「いや、我はこいつらの護衛だ。しばらく休んだ後、残党狩りを楽しませてもらおう」
「そりゃ戦闘狂なことで。んじゃ、そっちの二人は救護エリアで……」
「いや。転送円で疾く帰してくれ。そろそろ再使用出来る筈だな?」
「はい? 不可能じゃねえですが、こっちの設備じゃどうにもならねえ負傷者を送りたいんですがね」
「転送円の件もだが、早急に報告させたいことがある」
「ふぅん……。ま、オヤジがそういうなら」
話し合いは纏まり、三人は転送円のところまで移動した。ベアリウスは二人を見送る。
「ではな、影の、それに未熟者。二人合わせれば、多少は食いがいがでるやも知れんな」
「ういす。こっちが食えるよう頑張るす」
「ぜえぜえ……精進します……」
ヤイは疲労困憊のため、人型に戻ったザウの肩を借りている。
ドラゴンとの戦いで欠損したザウの右腕は、まだ復活していない。断面は黒ずんでいる、というより黒そのものだ。
転送円が輝き、ヤイとザウ、そして重傷者数名を王国へと転送した。
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「ああ。よく戻ったね」
ヤイとザウを出迎えたのは、アオイだった。少し息を切らし、髪が乱れている。
「ういす。なんとか──」
ぎゅっ。
ザウが何か言い切るより早く、アオイは両腕でしっかりザウとヤイを抱き締めていた。
「ちょちょちょ……」
「はは。アオイさん、大げさす」
「大げさなものか。戦場なんだぞ。よかった……」
アオイは噛み締めるように呟くと、すぐに二人から離れた。
それから、
「さて、切り替えていこう。何か報告することがあるんだろう? 治癒術士は手配してあるから安心してくれたまえ」
二人を促しながら、移動を始めた。
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治癒術士の治療を受け、ヤイの見た目上の傷は回復した。とはいえ体内の魔力の流れはすぐには治らないので、しばらく安静にしている必要がある。
ザウの傷は治癒魔術では治らない。充分な栄養を摂取する必要がある。
「ふぅむ、なるほど……進化した転送魔術か……」
アオイは腕を組んで眉根を寄せた。
三人はアオイの執務室で、接客用の机を挟んで話し合っていた。
三人の前にはコーヒーが置かれている。ヤイのものだけミルク入りだ。
「はい。それとドラゴンと戦闘して、わかったことがあるんですが……」
「なんだい?」
「より大きなドラゴンに傷つけられた跡がありました。お陰で楽に勝てましたけど」
「楽だったか……? いてっ」
訝しげにヤイを見たザウの脇腹をヤイが小突く。
「それは……例えば、ベルダドラゴン級の大きさかい?」
「はい、例えば」
ヤイは迷い無く頷く。
アオイはふぅ、と天井を見上げる。
「なら、これも"龍災"の一部ということになるね。最強のドラゴンと、高レベルの魔術師が手を組んでいるとなると……やれやれ」
「そういや、第一部隊のほうはどうなったんすか?」
ザウとヤイが援軍に行ったのは第二部隊のほうだった。
同時刻に、第一部隊もドラゴンに襲われていたはずだが……。
「ああ、それなら……」
アオイが答えようとするのと同時に、部屋のドアがノックされた。
「環境大臣。ダロウ様とテレーゼ様がいらっしゃってるでち」
「ああ……丁度いい。入って来てくれ」
「??」
ザウが「誰?」という目でヤイに助けを求める。ヤイが呆れながら、
「テレーゼさんはわかるでしょ。この前の"天文台"の人。ダロウさんは……第一部隊、隊長よ。つまりガーンバルド最強の一個人ってこと」
そう答えていると、扉が開かれた。




