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時間屋さん~運命の修復使2016冬~  作者: ジョセフ武園
選ばれなかった幸福
4/8

運命不良者 神辺旭~その4

「ねぇ~、あさ君。」

「あさ君は、えりの事…………好きだった?」

「えりが………もし…………」

「もしね?」

「綺麗なままだったら…………」

「あさ君の…………お嫁さんに…………」

「してくれた?」




――――――――――――――



「と、言う訳で。私達は貴方の『不良品の時間』を修復する決断を聞く為に、こちらの人間界にやって来たということなのです。」

少女の説明は、どうやら終わったようだ。


しかし。

俺には、何一つ納得出来ない。

例え、車の窓の外の景色を見せられたとしてもだ。


32年の人生で学んだこと。


『他人の甘い話は信じるな』だ。


後悔した運命を、過去に戻ってやり直せる?


バカな。

少なくとも、俺が体験した

『人生』といったものには

そのような

戯言は


ない‼


「いい加減にしろ。

 なにが、目的かは知らんが。

 あんた達のしている事は、犯罪だ。

 今すぐ、車から降りるなら

 警察にだけは言わずにおいてやる。」


俺は、精一杯の威勢を放った。

嘗められてしまったら、どうなるか分かったものでない。



小金原(こがねはら)恵梨香さん…………」

「‼」

「な、何故お前が、その名前を‼ 」

突然、少女から発せられた名前に、俺の頭は真っ白になる。


「知ってますよ。だって、貴方の運命の修復は


 彼女の運命の修復にもなるんですもの。」


俺は、気付けば、その少女に掴みかかろうとしていた。

「キャ。」

しかし、俺の手はその見えている筈の少女の身体を擦り抜ける。


「む、むむむむ、無駄です。わ、私達は貴方達とは違う『天界使』なのです。じ、じじじじじ実体は貴方達に見える場所には、あああああああ、ありません。」

「アズメ。落ち着け。解っているなら。落ち着け。」

助手席の男が、少女にちゃちゃを入れているようだが、俺は更に混乱していた。

見えている。

こいつらの声も、はっきりと聴こえる。

だのに、触れれない。

身体をすり抜けてしまうのだ。


「わかった………」

二人が、俺の方を向く。

「もう一度…………

 もう一度、詳しく説明をしてくれ。」


―――――――――――



俺は、約束の時間よりも、随分早く待ち合わせ場所に着いていた。


「お待たせ~~あさく~~~ん。」

その背後の掛けられた声に、俺の胸は激しく暴れる。

見たい。

と言う気持ちと

恥ずかしさが

同等の力で、俺を縛り付ける。


「よしよし。遅刻してないなんて、偉いじゃんか。」


小さな頃から。

こいつを見ている。

お互いが違う『性』なのだと、意識し始めたのは

いつからだったろう?


ああ。


俺は、着飾った恵梨香の姿を見て思い出す。


そうだ。中学校の制服を着たこいつを見た時。

本当に『可愛い』と、俺は心底思ってしまったんだ。


そう、今現在の俺と

同じ様に。


「さー、じゃあ。今日はしっかりと、エスコートすんだよぉ。あっさくん♪」

そう、明るいトーンを言葉に混じらせて、俺の腕を両手で抱きしめてくる。


「ど、どわああ。や、やめんかい。」

慌てて、振り解く。


「嬉しいくせに。」

俺に、聞こえるように、あいつはボソッと呟いていた。


「それにしても、寒いねぇ。早く映画館に行こうよ。」

そう言うと、また俺にくっついてくる。


冬が、はっきりと身近に感じる季節。

周囲は、それに確かに冷やされ、凍える様な寒さを帯びていた。


ただし


二人が重なっていた部分だけは


例外であった。

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