私じゃない!
《起きたかな?》
《まだみたい・・・クスクス》
《まだだね。 ね?》
《早く起きないかなぁ・・》
「・・・う・・ん。」
《起きそうだよ!》
《早く早く!》
《クスクス・・》
せっかくいい気持ちで寝ているのに、たくさんの声が聞こえてうるさそうに手をバタバタさせる穂里。
それでもやまない話し声にとうとう起きるハメになった。
「もう! うるさいんだけど!!!」
!!!
耳元でする話し声に怒鳴りながら目をさます穂里。
だけど、目を覚ましてもそこには何も無かった。
「え!? なにこれ!!」
穂里の視界に入るものは木、木、草、木。
つまりどこかの森の中であった。
「ちょっと待って? 私、学校行こうとしてたよね? 確か大家のおばあちゃんに挨拶して、いつもの道を歩いて・・で、どうしたんだっけ。」
穂里はいつものようにアパートを出てから挨拶をして、そして歩いてすぐの角を曲がった所で記憶が途切れていた。
「で、気づいたらここってどういうこと? ウチの近くに森なんてあったっけ?」
穂里が住んでいた所は都会では無いが田舎でもなく、それでもある程度の中心街だったので近くに森なんて無かったはずなのだ。
「ああ、もう! どういうことよ!!」
訳がわからなくなって、頭を両手で抱える。
「え?」
そして気づく。
穂里の髪の長さは肩までつくかつかないか・・といったセミロングだったはず。
それなのに今の長さは胸よりかなり下にきていた。
しかも、真っ黒だったその色は金のような茶のようなその中間の色になっていた。
そして、学校に行く為の制服を着ていたはずなのに、踵まである白いロングドレスのような服になっている。
「どういうこと?」
自分の姿が変わっているらしい事に急いで周りを見渡すと、少し離れた所にある小川を見つけ、そちらに走っていった。
そしてその小川で自分の姿を確認して絶句した。
その姿は、目は空をそのまま移しとったような空色、そして髪の色はさっき確かめたのと同じ金茶、肌は以前も白かったがそれにも増して透明がかった白さになっている。
そして、以前の穂里とどことなく似ているが、でも似ていない美少女が不思議そうに小川の中からこちらを見ていた。
「私が私じゃ無い!!」
そしてその口から出る声も今までより少し高めになっており、驚くのはそればかりじゃなく日本語を話しているはずなのに小川の中の少女の口の動きでは日本語を話していない事だった。
《ねぇねぇ、何に驚いているの?》
《川の中に何かいるの?》
自分の姿が変わっている事に放心していると、穂里に声をかけてくるものがあった。
「いえ、ちょっと自分が自分じゃなくて・・・」
その声に応えるように声を出し、そして声が聞こえた方を向くが、そこには誰もいない。
「は?」
確かに聞こえたはずなのに??と頭にハテナマークをちらしながら回りを見ると、穂里の回りを様々な色が囲んでいた。
それは、赤や青などのはっきりした色もあれば、薄ぼんやりとした白のようなピンクのような色もあり、そして一つ一つは野球のボールのように丸く光っていた。