世界の終わりに。
「もう駄目なのか。」
ある国の王様は言った。
「この世界の終わりが来ているのかもしれない。」
ある国の占術師は言う。
「まだなんとかなるかもしれないのに諦めるのか!!」
ある国の勇敢な若者が言った。
それはこの世界の空が七色に光り、日が暮れるはずなのに太陽は落ちず、鳥は一斉にはばたき、水は徐々に枯れていき、作物も次第に元気が無くなっていた。
そして言い伝えは紡ぐ。
〔この世界が終わりを迎える時、空は輝き、鳥ははばたき、草木は枯れ、井戸も枯れる。 それは神が与えた終焉の時。何人たる者もこれを回避すること出来ず。〕
この世界に昔からある言い伝えの言葉で、どの国でもその言葉は代々受け継がれてきた。
誰が言ったのか、どの時代が言ったのか。
それは誰も知らない。
だけど、世界が終わるその時はやってくる。
それはその世界では当たり前のように言われてきた言葉だった。
だが、ある神殿の神子が神からの言葉を受け取った。
【世界を終わらせたくなくば、精霊の子供を大切にせよ。
そうすれば世界は終わらず、そして幸せな未来が待っているだろう。】
その言葉は一言一句違えずに各地に広まった。
だが、精霊が見える者などいない。
魔法が使えても、精霊を感じることなどできない。
精霊の子供とは何か。
知らないものは探しようもない。
そして強欲な者が現れた。
我こそは精霊の子供の親だと。
それを信じた者によって世界は救われると信じ、まやかしの子供は大切に大切にされ、その親もただの下級貴族であったのに上級貴族へと召したてられた。
皆、それが嘘だとは気付けなかった。
その家の子供は生まれつき白髪、赤眼のアルビノで、見えない物が多少見えるだけのただの子供だった。
だが、見えない何かが見える。
それだけで、精霊の子供とされた。
その家の子供は自分が世界で一番偉いのだと
勘違いしていた。
そして性格も傲慢になっていった。
自分の言う事が正しい。
自分の言う事を聞かない物は切りすてる。
そして。
それから10年後。
未だ草木は枯れ続け、そして井戸もゆっくりと干上がっている。
鳥は姿を見せない。
人々の間ではゆっくりとだが、その子供が精霊の子供では無いのではないか?
そんなうわさが聞こえ始めていた頃。
そんな時、世界からはじきだされた一人の少女が、惑いの深き森に落ちた。
だが、それを知る者は未だいない。