領主様に報告?
すみません。
諸事情により不定期更新になります。
なるべく早めに更新したいとは思ってます。
ブルードに用事がある為ギルドへと10日ぶりに来たミノリ。この街に来た時はこんなにこの街に滞在するとは思ってなかったが、殆ど宿にいたとは言え時々買い物も少しだがしていたミノリはこの街の雰囲気をとても好んでいる。
宿の食事を手がける事でミノリの名前が徐々にだが有名になってきているのだが、当のミノリはその事には一切気づいておらず、買い物に出た時に声を掛けられて果物を貰っても(いい人が多いなぁ)くらいにしか思っていない。
この街を好きになっているとしても、ミノリの帰る場所は精霊達のいる森だ。
お風呂の事があるので、毎日とはいかなくても時々森には帰っているのだが、1日のうち一時間程度の為精霊の皆からは早く森に帰ってくるように言われている。
10日経ったこの日、やっと宿屋での食事がある程度目処がたった為、森に帰ることにしたミノリだが、ブルードに最初会った時に言われた野菜の安い所や、武器、防具などを売っている場所を教えて貰おうとギルドの前までやってきた。
「お昼前にはギルドにいるはずだってヨルドさんが言ってたからこの時間なら大丈夫だよね。」
いつもじゃないが、たいてい依頼を受ける為お昼前にはギルドにいるはずだとヨルドに教えて貰ったミノリはそう呟くとギルドの扉を開いた。
ーーーーーーーーざわざわ。
ギルドの中は依頼を受ける為であろう冒険者で溢れかえっていた。
掲示板の前にいてどの依頼を受けるか迷っている人。
すでに決めて受付を待っている人。
パーティを組む為なのか、「〇〇の森の採取、助っ人求む!」など大声で叫んでいる人など、様々だが、ミノリが入っていった途端、少しずつ波が引くように静かになっていく。
これは、10日前にこのギルドにいた人達から話を聞いていたのか微かに「治癒魔法の使い手ってあの若いのが!?」などの声が聞こえてくる。
(やっぱり目立ってるのかなー。)
治癒魔法が原因だろうとミノリは思っているのだが、それだけが原因ではない。
宿屋の台所からミノリが出てきたのを見ていた冒険者や、一番最初にミノリがアレンジしたスープを飲んだ冒険者達がギルドの中にいて、止まり木亭の食事が格段に美味しくなったのはミノリのおかげだと話しているせいでもあった。
ミノリとしてはやってしまったのはしょうがないと開き直って(治癒魔法のせいだと思っているため。)ギルドのなかを見回してブルードを探すことにした。
だが、そんなミノリを受付にいる人が見つけ、奥の扉へと走っていき、そこからカートルードが出てきたのをミノリは気づかなかった。
「ミノリさん! 良い所へ。こちらに来て下さい!」
カートルードはすぐにミノリの側へと行き、そう言うとミノリを連れて二階へと上がっていく。
ギルドの二階は休憩所兼、Aランク以上の依頼受付場所になっている。
通常、依頼を受けるのは一階なのだが、緊急案件や、Aランク以上のモンスター討伐の依頼書は二階になっている。
これは下のランクの冒険者が下手にランクの高い依頼を受けられないようにする為の措置として行っている。
その為、二階には冒険者の姿は無く、ミノリはカートルードに休憩所に座っているギルドマスターの元へと連れてこられたのだ。
「こんにちは、ミノリさん。 あれからギルドに顔を出さないのでどうかしたかと思っていたよ。」
ミノリを見てそう話しかけてきたのはギルドマスターのシューリアだ。
実はミノリがギルドに来なかった理由は知っているのだが、それを話してしまえばこれからシューリアが言おうと思っていることが続かない為、話題の一つとして口に出したのだ。
だが、そのことを知らないミノリは「あれから色々あって。」と、苦笑する事で答える。
「ま、いいんだけどね。 依頼を受けにくるかどうかは冒険者の都合次第だし。」
そう言って目の前にあるカップからお茶らしき物を一口飲むシューリア。
「今回、ミノリさんにどうしても受けてもらいたい依頼があったので、すまないがカートルードにギルドへミノリさんが来たら私の元に連れてくるようにお願いしてたんだよね。」
ミノリを自分の前の椅子に座るように言った後、すぐにシューリアは要件を切り出した。
「実はこの街に住む領主様の依頼でね、ミノリさんの力を借りたいんだよ。」
10日前にミノリが治癒で冒険者を治したこと、ミノリがアイテムボックス持ちであることを領主に報告したとシューリアはミノリに語る。
ギルドマスターの務めとして大事な治癒術使いがこの街に現れた事、アイテムボックス持ちの冒険者がいる事を報告せざるを得なかったとシューリアはミノリに謝った。
「ギルドで決まっている事なので、ミノリさんには事後報告になってしまったが、すまない。」
実際、ミノリが来てから了承をとって話すはずだったのだが、あれから中々ミノリは来ず、それなのに領主からは治癒術使いが現れたと噂になっているが、どういう事か!と散々問いただされ、話すことになってしまっていた。
シューリアは話の為何度か止まり木亭に足を運んでいたのだが、ヨルドやマーナがミノリから教えて貰う料理を優先した為、ミノリを買い物に頼んだという経緯がある。
「別に構いません。 ギルドでの規則なんですよね? ギルドに登録したからにはギルドに従いますし。・・ま、色々強制とかされれば考えますが、報告だけなら私に異存はありません。」
「強制とかはしないが、依頼があれば受けてくれるかい?」
報告に関しては異存はないと言い切ったミノリに言いにくそうに話すシューリア。
「依頼ですか? え?もしかして指名とかあるんですか??」
普通に採取などの依頼は受けるつもりのミノリ。
だが、シューリアが言っているのはそういうことではないようで。
「そうなのよ。 その領主様直々の依頼がね。」
シューリアが持っていた依頼書を受け取り読むミノリ。
そこには冒険者ミノリ指名依頼書とあった。
その内容とは治癒依頼であった
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〔冒険者ミノリ指名依頼書〕
領主、カマルディアの屋敷にて治癒術を要する案件につき、ランクの高い治癒を使える冒険者ミノリに指名依頼をお願いする。
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(治癒依頼ってことは怪我かなにか?)
「お願いできないかしら。 領主様の依頼なので、私からお断りができないのよ。」
依頼書を読んで考えるミノリにシューリアはミノリの両手をとって懇願する。
ブルードに会いにきただけなのに、どうしてこうも次から次へと巻き込まれるのか。
だが、治癒を必要としていると聞けばやはり気になってしまう。
「わかりました。とりあえず領主様の所に行ってみます。」
今日、ギルドにきたのはブルードに会う為だったので、シューリアに伝言をお願いしておく。
「安い野菜の店と武器と防具の店に今度案内して下さいってお願いしますね。」
必ず伝言を伝えると約束したシューリアに手を振ってギルドの二階から降りていく。
「すみません。 この街にギルドを作るときに領主様にご尽力いただいていますので、ギルドとして領主様の依頼はなかなかお断りできなくて。 受けて下さって感謝します。」
ミノリの横を歩きながら話すカートルードに苦笑を溢し、(色々あるんだな。)と内心思う。
「それじゃ、行ってきます。」
カートルードにそう言ってミノリはギルドを出て行く。
ギルドの中ではヨルドからミノリがブルードに会いに行くと聞かされていたブルードが、ミノリを見つけて「おーい!」と手を振っていたが、他の冒険者の騒めきに紛れミノリには聞こえていなかった。
そして、ミノリの後を追おうとしていたブルードを遮ったのはカートルード。
「すみませんが、ミノリさんは大事な依頼の最中です。 ギルドマスターが呼んでいますので、ブルードは奥の部屋へ行って下さい。」
カートルードにそう言われ、ミノリを追うのを諦めたブルードだった。
お読みいただきありがとうございます!
誤字、脱字は後日読み直してなおします。