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精霊に愛されし早少女  作者: 月宮 (つきのみや)
私がこちらに来た日々は
13/18

これがこの世界の美味しいごはんです!?

冒険者が続々と帰ってきてあっと言う間に人でいっぱいになった冒険者ギルド。

その中をブルードの後ろをついていきながら歩くミノリ。


(泊まるつもりなかったのになぁ。)


内心で溜息をつくが、決まってしまったものはしょうがないと割り切るしかない。


「止まり木亭はこのギルドを出て少し行った先にある。 まぁ、ちょっとボロいが飯は格段に美味いから。」


そう言って話しかけてくるブルードに、そういえばこの世界の食べ物って食べたことないな。と思う。


「すいません。案内お願いしちゃって。 この街に来たばかりなので全然わかんなくって。」


ただ、買い物に来ただけなのに色んな事に巻き込まれて(常識を知らない為)結局森に帰れなくなった。 精霊にはチビちゃん達が(ミノリが泊まるって伝えたー!)と言っているので1日だけならまぁいいか。と前向きに思うことにする。


「いや。 バグスを助けてもらってるのにこんな事しか出来なくて逆に心苦しいが、ま、この街のことなら何でも聞いてくれ。 安い野菜売りの場所とか、若い女の子だと喜んで値引きしてくれる武器屋とか教えるしな。」


(安い野菜かー。 帰る前に場所聞いとかないと。 武器?うーん。とりあえず杖が欲しいからそれも聞かないとね。 やっばりちょっとでもお金は残しときたいし。うん。)


ブルードの耳寄りな情報に1日で大金を手に入れた割には節約を心がけるミノリ。


人をかき分けやっとギルドを出ようとした時、ブルードに声をかける人が多い事に気づく。


「ブルード! 今日は大丈夫かー?」

「お?バグスはどうした?」

「可愛い子連れて! 新しいメンバーか?」


など。 気安く話しかけてくる人の多さ。


対するブルードも「おう!」「いや、バグスはちょっとな。」「違う!まぁ、案内だ。」と、答えている。


「ブルードさんって人気者?」


あちこちからかけられる声に気になって聞いてみると、「いや。 親父がちょっとな。」と返ってくる。


ブルードのお父さんが冒険者で、今は辞めて鍛治師をしていると言った。 しかも冒険者ランクはB。 そのお父さんのおかげで冒険者になってからは他の冒険者の人によく気にかけられているとのこと。 そして鍛冶師としても結構有名で「まぁ、だからかな。色々話しかけられるのは。」と話してくれた。


そんな話をしながら冒険者ギルドを出る二人。


ギルドを出て初めて薄暗くなっている事に気付いたミノリは(あぁ、だから泊まる事になったのか。)と納得していた。


お昼過ぎにはこの街についたはずなのに、すでにこんなに薄暗くなっているとは気づかなかった。

冒険者ギルド内は魔法で常に一定の明るさを保っているそうで、中に入ると時間を忘れるとブルードも話す。


そして暫く歩いたミノリは「ここだ。」というブルードの言葉に自分がある一軒の家の前にいる事に気付いた。


そこには家の前に小さな家の形をした看板をぶら下げており、ブルードが言うにはこれが宿屋の印だとのこと。


(それにしても・・)


確かに外見がボロかった。

屋根は比較的綺麗なので、雨漏りはしないだろうが、周りを囲っている塀はひび割れがすごいし、宿屋自体も木造なのかその木が黒ずんでいる。

ブルードが開けようとした扉の取っ手もちょっと力を入れたら取れるんじゃないのか心配するくらい。


ミノリが宿屋を見て呆然としているのをよそにブルードは扉を開けて入っていく。


「ヨルドはいるかー?」


その声に我に返ったミノリも後に続くように宿屋へ入った。


(へえー。)


宿屋の中は酷い外見とは違い意外にも綺麗だった。


床は綺麗な木が敷き詰められ、ミノリの世界のフローリングのようだし、ブルードが声をかけてもたれているカウンターも磨かれてピカピカしている。そして、その奥から少し厳ついミノリのお父さんと同じくらいの男の人が出てきた。


「おう! 誰かと思ったらブルードじゃないか。 どうした!」


「客を連れてきたんだよ! ギルドの新人だからよろしくな!」


カウンター越しに話す二人に近づいていくミノリに気付いた宿屋の主人がこちらを向く。


「お前さんがギルドの新人か! いやー!こんなに可愛い子が冒険者とは世も末だなぁ!」


ミノリを見てそう言う宿屋の人。


「ワシはこの宿屋をやってるヨルドっつーもんだ!よろしくな!」


カウンター越しにミノリに手を出してきたので慌ててミノリもその手を取って握る。


「ミノリといいます! よろしくお願いします。」


「やだよ! 若い子を見たら手を握るオヤジなんて!!」


ミノリが挨拶したすぐ後にそう言ってカウンター脇の階段を降りてきたのは女の人。


「わたしゃ、この宿屋のマーナってもんさ! このオヤジの連れ合いさね。」


ミノリが挨拶のために握ったヨルドの手を軽くつねりながらにこにこと話すマーナ。


「いててててててて!」


そう言ってミノリの手を離したヨルド。

そんな二人の様子を見て(仲がいいんだなぁ。)と感心しながらマーナにも挨拶をする。


「ミノリと言います。 今日はよろしくお願いします。」


そんなミノリの挨拶に続くようにブルードが二人に話しかける。


「このミノリさんは俺の恩人なんだ。 ギルドからの紹介だが、俺に頼む。」


そう言ったブルードにマーナはうんうんと頷き、ヨルドは「じゃ、ギルド引きのお前さんだな。」と三人だけの会話をする。


「??」


よくわかっていないのはミノリだけ。


そんなミノリにマーナが宿について説明する。


「ここはギルド認定の宿でね。 ギルドから紹介された人は2割引なんだよ。 通常泊まるのは1泊大銅貨5枚だから、ミノリさんだっけ?は1泊大銅貨4枚で泊まれる。 食事は朝と夜の二回。 昼は銅貨2枚で作る事も出来る。 トイレは一階にあるが共用なんで気をつけておくれ。 」


1泊2食付きで大銅貨5枚が安いのか高いのかミノリにはよくわからないが、ギルドの割引が効くと聞いて喜ぶ。


「じゃ、俺はこれで。 今日は本当にありがとな! 店の事で聞きたいことが出来たらギルドへ来てくれ。 バグスもまだいるし当分ギルドへ顔を出すつもりだから。」


マーナの説明を終えて部屋に案内してくれるというのでついていくことにしたミノリにブルードが声をかける。


「ありがとうございました。また聞きに行くと思います。 」


ブルードはこの街出身なので自分の家があるらしく、そろそろ帰るようだった。

安い野菜売りの場所や、武器屋の事もあるので聞きに行くことを告げるとブルードは手を上げるこで返事をすると帰っていった。


マーナの案内で二階にある部屋へ行くとそこはベッドと一人分の机と椅子、それと靴を置くためのだろう棚があるくらいだった。


(一人だもん。 ちょうどの部屋だよね。)


狭すぎることもなく、かと言って広いわけでもない。

ちょうどの空間がそこにあった。


そしてミノリが部屋に入るとマーナは夕食が出来たら呼ぶからと、一階に降りていく。

一階からは宿泊客だろうか、少しざわめいたような声がするが扉を閉めると静かになった。


(ふーん。防音結界があるのか。)


部屋の中をよく見てみるとかすかに魔術の痕がある。

外の音を遮断するのと、中の音を外に出さない為の結界があることに気づいた。


「結構いい宿屋なのかな。」


(ミノリーここでお泊り?)

(いい宿屋ー)


チビちゃん達も気に入ったのかあちらこちらでピカピカ光っている。

ギルド推薦の宿屋なので、勿論そこら辺にある宿屋とは少し違うらしい。


とにかくアイテムボックス持ちのミノリは荷物を出すこともなくマーナに呼ばれるまでベッドに座ってゆっくりと過ごした。


「ミノリさん。 食事の時間だよー。」


少しするとマーナの呼び声がしてミノリは下へ降りていく。防音結界があってもマーナの声が聞こえるという事は恐らくこの部屋のどこかに魔石が組み込んであるのだろう。 伝えたい部屋に魔力を通すと魔石が反応して伝わるということになっているらしい。


とにかくごはんを食べるために一階へと降りていく。


この宿屋でごはんを食べる所は階段を降りてカウンターとは反対にある扉を開けたところにある。


ミノリがその扉を開けた途端、ザワザワとした喧騒が聞こえ、宿に泊まる人やここで食事だけする人が集まっていることに気づいた。


(こんなに人がいるなら食事も期待できそう。)


「すまないね。 ちょっと人が多いが空いてるところにかけとくれ。」


ミノリに気づいたマーナに言われて奥の方の空いてる所に腰掛ける所にした。

大きいテーブルの周りには木のようなコップを持った男の人達が、笑いながら楽しそうに食事をしている。


4人掛けのテーブルには冒険者だろう、剣やハンマーを椅子の近くに立てかけている男女混合の人が座って顔を寄せ合って話している。


ミノリは唯一空いてる二人掛けのテーブル席に座り、興味深そうに壁や周りを見て食事がくるのをまっていた。


「おまちどうさま! 今日のオススメはオークの炒め物だからそれにしといたよ。 ウチの一番人気だからね!」


そう言って、マーナが持ってきたのは肉と野菜を炒めた物に黒いパンと野菜の浮かんだスープがついたものだった。

そのそばにはフルーツも盛られていて美味しそうに見える。


「いただきます。」


一言いって野菜炒めのような物を口に運ぶ。


「・・・ん?」


一口食べた後にパンもちぎって食べるミノリにマーナも「ゆっくりねー。」と言い置いて次の注文を忙しそうに受けている。


(え?これがこの街で一番美味しい宿屋の食事なの?)


確かに周りの人を見てみると「やっぱりヨルドんトコが一番だ!」「他のところじゃこうはいかねぇ」など絶賛している。


だが、日本の飽食になれたミノリにはこの味が美味しいとは思えなかった。


肉と野菜を炒めた物はかなり味が薄いし、肉の臭みも少しする。 パンは固いまではいかないが、柔らかくなくどうやら付いているスープに浸して食べるらしい。

そのスープもただ、野菜の味のするだけのスープだ。お湯に塩と野菜を入れただけのような味だ。




(これがこの世界の美味しい食事なの?)


美味しくないごはん→主人公がなんとかする!

そういうのが好きです。


異世界の食事は美味しくない!のありきたりがセオリーかなと(^艸^)

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