なんでこうなった??
またもや静かになったギルド内で、未だミノリは椅子に座っていた。
「あのー、報酬はまだでしょうか。」
お金の事を言い出すのはちょっと嫌だったが、早く買い物を終わらせて森へ帰りたいミノリは仕方なく声をかける。
「ちょっとまってね。 今、何だか信じられない言葉を聞いたような気がしたものだから。」
「マスター。 聞いたような気がしたではなく、確かに聞きました。」
「え? アイテムボックスって本当にあったのか?」
「あれってスキルだよなぁ。 初めて聞いたわ。」
シューリア、カートルード、ジェイル、ブルードの順番に話したのを聞いて、ミノリは(え?またやっちゃった?)と、冷や汗が止まらない。
「あの、バックとかありますよね?拡張の。」
チビちゃん達が話していたので、拡張バックはあるはずなのだ。 なのに、アイテムボックスが珍しいわけないと思っているミノリはやはりどこかズレている。
アイテムボックスはスキルとして扱われる。 これは、空間魔法を持っている人物がいないと思われている為なのだが、この世界のアイテムボックスというのは本来空間魔法に属する。
空間魔法持ちが、自分の持ち物を別の空間に保存する為の魔法なのだが、いつしか空間魔法を使えるものが減り、アイテムボックスはスキルとしてしか存在しなくなっていった。
現在の拡張バックを作るのは空間魔法師が作成するものではなく、無属性魔法にあたる。
清潔や、浄化、灯り(ライト)などが無属性魔法にあたり、バッグを拡張する為の魔法、拡張も無属性になる。
だが、普通一般の拡張バッグは入る物が決められており、時間経過もある。
なので、食べ物を入れて置けば腐るし重さも10kg以上の物は入れることができない。
ミノリはお金をアイテムボックスへ入れるといった。
アイテムボックスは拡張バッグと違い、入れたものが本人にだけ分かるように頭に浮かぶ。
しかも空間収納なので、どんなに思い物や大きな物をいれてもミノリの魔力次第で入り放題なのだ。別の空間に整理整頓されて置かれていると言った方がわかりやすいだろうか。
お金も現在の手持ちが頭に浮かぶので、ミノリにとってはギルドカードに入れるよりは出し入れしやすいアイテムボックスへ入れた方が楽だと考えている。
(もし、私に何かあっても任意でアイテムボックスの中身はうつせるし。 外に出すこともできるし。 バッグみたいに盗まれる事もないしね。 それに無理やり中身を取り出そうとしてもロックがかかるから便利だよねー。)
だが、ミノリ以外の考え方は違う。
アイテムボックスはスキルだ。
アイテムボックスを持った者がもし亡くなれば、ボックスの中身は二度と戻らないと思われている。しかも、アイテムボックスを持つ者を脅してその中身を奪いおうとする者がでるかもしれないのだ。
アイテムボックスを持つ者がいないからこそおこる齟齬である。
「ミノリさんに頼めば、荷物なんて運び放題じゃない! 凄いスキルを持ってるわー!」
ギルドマスターの喜びように少し引くミノリ。
スキルでは無く空間魔法だと今さら言えない。
治癒でさえ驚かれているのだから、これ以上面倒臭いのは嫌なのだ。
「そ、そうですねー!あははは。」
そんなやり取りをしているうちにギルドの外が騒がしくなってくる。
「報酬はカートルードが手続きするから。」
冒険者達が戻ってきた様子に急いで席をたつシューリア。
その言葉を受けて懐から袋を取り出すカートルード。
「こちらが今回の治癒料金になります。 ミノリさんはどちらの宿に泊まるか決めていますか?」
袋を渡されると同時に宿を聞かれるが、元々買い物だけしようと思っていたミノリが宿を決めているわけもなく。
「ブルード。 ミノリさんに止まり木亭へ案内してあげて下さい。 こんな時間なので、恐らく他の所は無理だと思いますので。 バグスさんは1日こちらで預かります。 ジェイルはメインの物を持っているなら出して手続きしてください。」
次から次へと指示をだすカートルードへ声を挟むことも出来ず、ミノリはこの街に留まることが決まってしまった。
(か、買い物が〜〜。)
そんなミノリの様子を伝えにミノリの側にいた光の玉のいくつかが森へと飛んでいく。
(ミノリはお泊り〜。)
(お買い物もまだなのーー。)
ミノリの事をチビから聞いた精霊達はもっとこの世界のことを教えてから街へ行かすのだったと今さらながら頭を抱えていた。
そしてミノリは何故こうなったのかわからないままアルタインの街へ泊まる事になった。
(なんでこうなった??)
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