まだギルドから出れません。
「えー! とにかく、ミノリさんの使用した治癒術は神殿でも大金貨1枚以上の寄付を持って行うものです。ギルドで治癒師に支払っている報酬額は大型討伐などの非常時でさえ大銀貨5枚程度しか支払われません。 それでもミノリさんは構わないのですか?」
シンと静まり返ったギルド内でシューリアがミノリに改めて報酬の確認をする。
この世界のお金は銭貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、晶金貨となる。
銭貨10枚で銅貨1枚、銅貨10枚で大銅貨1枚。大銅貨10枚で銀貨、となる。白金貨や、昌金貨などはいわゆる国や貴族のトップなど少数が使用するのみで一般には出回らない。
このお金の価値により、神殿の寄付で大金貨1枚以上というのがかなり法外な値段だとお分かりいただけるだろう。
普通に家族4人で暮らすなら、大銀貨2〜3枚あれば一か月は余裕で暮らせる。
ギルドから治癒師への報酬が大銀貨5枚というのはかなり破格なのだろう。
「こんな治癒を施して貰って申し訳ないが、大金貨1枚は用意できないんだ。 大銀貨1枚とこれから先君の言うことを聞くというのではどうだろう。」
「俺の方もまだDに上がったばかりでそんなに手持ちがないんだ。 何とか大銀貨1枚くらいなら用意できるんだが・・。」
そう言って申し訳なさそうにミノリを見るジェイルとブルードの様子に両手を前に出し横に振っていらないことを告げる。
「だから! 大したことはしてないんです!! ギルドから大銀貨5枚でも貰い過ぎなのに、お二人からなんて貰えません!! それにジェイルさんのパーティは犠牲者がいるんですよね? 私に支払うより、その亡くなった方の遺族に上げて下さい。」
確か、入って来た時に女の子が犠牲になったと話していたはずだ。
自分と同じような女の子なのだろうか?と思うだけで亡くなったその子の為に使って貰いたいと思う。
「メインが死んだと言ったなジェイル。 それは本当か。」
私達の会話を聞いてジェイルへと話しかけるシューリア。
「ああ、俺が見たときすでにシルバーウルフに首を噛まれていた後だった。 ウルフ狩りの最中にどうやら回り込まれていたらしくてな。後ろはシルバーウルフ、前は今まで戦っていたウルフ。後ろのシルバーウルフがメインや他のウルフに気を取られてる間に逃げるしか方法が無かったんだが、こいつが・・ルードがメインを助けるって引き返そうとしちまって。。このザマさ。」
意気消沈としながら襲われた時の事を話すジェイル。
「メインには気の毒だが、それも冒険者としての運命。 確かあの子は野菜売りのドーダの娘だったな。 ドーダにはこちらから連絡しておこう。」
そう言って他の人に指示を出すシューリア。
治癒が済んだ二人も念の為、奥のベッドへと運ばれていった。
「さて、ミノリさん。 ジェイルとブルードはああ言ってるが、本当にギルドからの報酬だけでかまわないのかい?」
その場に残ったシューリア、カートルード、ジェイル、ブルード、そしてミノリの5人。
近くにあった椅子に座るようシューリアに促され、丸いテーブルを囲むようにしてそれぞれ腰をおろした。
「かまいません。 既に薬草を売ってお金を貰ってるのに、ちょっとした治癒だけで大銀貨5枚ですよ? 本当にこれ以上いりません。」
「ああ、君があの薬草を持ち込んだ人でしたか。 あの、紫草とチルの実はとても助かります。 最近ハイポーションとハイマジックポーションの流通が滞っていて材料も品薄だし困っていた所だったんです。」
薬草の事を話すとすぐにカートルードが反応する。
「紫草にチルの実!?」
そしてジェイルとブルードがその言葉に驚いたように声を上げた。
「あれは惑いの森か、エナス山にしかない物だよな?」
「エナス山でも最近魔獣が増えて入手が困難だと言ってたぞ。」
商人の間で最近エナス山の麓に魔獣が度々あらわれて、薬草が少なくなっていると噂になっているようだった。
「そういえば、ボードにも張り紙あったよな。」
「ああ、確かあれはC相当の依頼のはずだが。」
そんな二人の会話を聞きながら知らないふりを続けるミノリ。
「ま、どういった経路で手に入れたのかは問いません。 ボルトンが言うには、あれはきちんと採取された物だと報告がありましたので。」
「きちんと採取?」
聞き慣れない言葉にカートルードへと聞き返すミノリ。
「誰かが採取した物をもしあなたが横取りしているのなら、薬草にその残滓が残ってるんです。 紫草とチルの実はちょっと特殊でね。 採取した人物の魔力を纏っているんですよ。 鑑定すれば誰が採取したのか簡単にわかります。」
薬草や実などの採取依頼で時々おこるのが横取りだと言う。 ギルドに帰ってくる前に採取した薬草をとられ、盗った人物が買い取りに訪れる。
だが、薬草や実には魔力が多少だがある。
採取する際、その魔力が採取した人の魔力に薄く染まる。
買い取りをするのは鑑定持ちなので、その持ち込まれた薬草が盗まれた物かそうでない物なのかがすぐにわかるらしい。
「持ち込まれた紫草とチルの実は薄くですが、ミノリさんの魔力に染まっていたそうです。なので、買い取りに関しては問題ありません。」
買い取りの時奥から出てきたおじさんがボルトンと言う人で鑑定持ちだったようだ。
(ガハガハ笑ってたけど、意外に凄い人だった?)
「とにかく、ミノリさんのおかげでしばらくはハイポーションとハイマジックポーションは大丈夫だし、大型討伐もそろそろ終わってみんな戻ってくる頃だろう。 報酬はギルドカードへ入れるかい?それとも渡した方がいいのかい?」
シューリアの言葉に買い物をしにこの街へ来たことを思い出したミノリ。
(ミノリ忘れてたー?)
(お買い物ー!)
周りの精霊もそんなミノリを見てキャラキャラと笑っている。
「えーっと、アイテムボックスがあるのでそのままもらえますか?」
とにかく急いで買い物をして森まで戻らないとこの街に泊まることになると気づいた。
だけど、またもやミノリの発言に固まる4人。
どうやら、まだまだギルドから出られないようです。
おかしな所は活動報告などでご連絡ください。
感想はすいませんが閉じさせてもらってます。
メンタル弱いので(´・_・`)