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精霊再起の簒奪者  作者: 芹沢歩
第二章
18/154

018 エピローグ

 ◇


 ルシードがキュール村へ向けて歩くその後姿を見て、アルマリーゼは思う。

 今回の戦いでは、想像していたものとは違い、問題があった。それは、ルシードの魔力の回復の早さ。

 ルシードは剣に魔力を通して戦ったが、最初にアルマリーゼがルシードに対して調べた剣に使える魔力量はたったの一回だ。アルマリーゼ本人が判断したのだ、間違いはない。

 ミレット村の時は、ただ魔力の回復が早いだけだと思った。けれど今回、ルシードは常に魔力を通して戦ったのだ。魔力の回復が早いなどという一言で片付けていい問題ではない。

 戦いもそうだ。ルシードはイメージに体が追いつかないと嘆いていたはずだ。それが今回、全盛期のテーオバルトには遠く及ばないにしても、問題なく動けていたようにアルマリーゼには見えていた。ここ数日での成長が早すぎる。

 自分に使用者の魔力を回復させるような能力や成長を促す能力はない……はずだ、とアルマリーゼは自身の能力を評価している。だとすれば、ルシードの能力かとも思われたが、ルシードはなんの能力も持たないただの人間だ。殺した者の中にも、そのような能力を持った者はいない。

 では、他に何か……たとえばアルマリーゼをこの世界に召喚した者が、アルマリーゼの知らない能力を付加したとでも言うのだろうか。精霊召喚にはリスクを伴うが、ある程度、持たせる能力の方向性を決めることができるのだ。ありえない話ではなかった。


 ――何も弊害がなければいいけれど……。


 アルマリーゼは当初、ルシードにたいした期待はしていなかった。それが今では心配するほどとは自分でも可笑しくなる。

 綺麗な星空。初めての食事。そのどれもがルシードにもたらされたものだった。

 ルシードとならば王都へ向かう旅も、楽しいものになるはずだ。


 そこでルシードが口にした言葉を、アルマリーゼは思い出す。

 『英雄』

 ルシードは英雄になれるだろうかと考える。ルシードの望んだ英雄に。その時のことを想像して、口に出る。


「もし、いつかあなたが英雄と呼ばれる日が来たなら、その時は私があなたの――――」


 最後まで口には出さない。アルマリーゼはレナードのもとへ向かわなければならないのだ。それに、戦争でも起こらなければ、英雄などと呼ばれることはない。その機会は訪れないだろう。


 アルマリーゼがついて来ないことを不思議に思ったのか、ルシードが振り向いた。考え込んでいるうちに、かなりの距離が開いてしまっていたようだ。

 もしも、の時間は終わりだ。アルマリーゼはルシードの背中を追って、ゆっくりと歩き出した。

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