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バルバロイ  作者: ずかみん
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たぶん、そんなことは問題じゃなかった

 アリーの父親、ピーター・エバンスは、娘を守るために司法取引を提案した。

 娘を罪に問わない見返りとして、北米社会に潜伏する、アフリカ系イスラム原理主義者のテロネットワークについて、有益な情報を提供できる、というしたたかな提案は、FBIにとってとても魅力的だった。


 そもそもFBIは、十二歳の少女を監獄へ送ることについて、最初から乗り気じゃなかった。

 最近、いくつかの不祥事が続いたので、今回は美談でまとめたい。そんな手前勝手な都合が、FBIの方にもあった。


 ピーター・エバンスは優秀なコンピューター技術者だったけれど、それ以前に、手段と成果の相関関係をわきまえたビジネスマンで、なによりも一人の父親だった。


 ピーター・エバンスCEOは、テロ組織の虜囚から、FBIの重要参考人をへて、やっと自分の腕の中に戻った娘を抱きしめて、号泣した。


 父の涙に驚いて呆然と抱きしめられているアリーの様子は、世界的なニュースで報道された。


 アリーの性格についてなんの知識もないテレビ報道は、無垢な天使とか、美しすぎる人質とかいった、適当で無責任なテロップを垂れ流し、とうとう日本でもアリーの非公式ファンクラブができる始末だった。


 日本の有名な電子掲示板サイトでは、アリーがテログループに乱暴をされたか、されていないか、みたいな議論が起こっていて、それを見た唯斗は腹をかかえて笑った。

 こいつら、まるでなにもわかっていない。乱暴をされたのは、アリーじゃなくて、テログループの方だ。


 アリーの父親は、自分の個人的資産に生じた損害について、何一つ言及しなかった。

 たぶん、そんなことは問題じゃなかったのだろう、と唯斗は思う。


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