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バルバロイ  作者: ずかみん
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まだ勝負はついていない

 立体駐車場の中は、ゴミやスクラップでごった返していた。

 フロアの片隅には放置されている車両さえある。フロントガラスがピンクのスプレーで塗りつぶされた車は、おそらく浮浪者のシェルターとして使われていたものだ。


 全周の情報に神経を研ぎ澄まし、なおかつ、速度を緩めることなく、唯斗は敵影を追った。


 あちこちに浮浪者の生活痕があった。焚火の痕や、放置されたトイレ代わりのバケツ。騒ぎが起こるまでスラムみたいな状態だったのかもしれないけれど、唯斗の見る限り、周囲に人影はなかった。


 敵ピクシーのタイヤ痕が、視覚野に強調表示されている。

 ライン取りの癖や、状況判断の潔さで、リジエラで戦った相手だと分かった。中国製戦車【穿鎧】に乗っていた敵。唯斗たちと同じレベルで場数を踏んだ、優秀な兵士。

 

 走行痕に不自然な曲線を発見して、唯斗は急減速した。ノーズダイブして前のめりになったピクシーの鼻先をかすめ、【フランキスカ】が炸裂した。


 立体駐車場は、待ち伏せに適した構造だ。

 足をとめて振り返るだけで、敵は必ず射線上に現れる。


 唯斗は、鉄筋コンクリート構造の外側に、無人機(ドローン)を飛ばした。構造外部からの視点で、敵ピクシーの位置を確認する。


 さらに無人機(ドローン)の高度をあげると、無人機の映像は展望エレベーターに乗っているようなパノラマになる。最上階にオフィス風のフロアがあった。

 殺風景なオフィスの窓際に、唯斗はアリーの姿を見つけた。ドレスのような服を着ていて、強化ガラスの壁面に両手をついていた。


 無人機(ドローン)の姿を目で追うアリーと、視線が交差した。

 助けを求めているようにも見えたし、なにかを非難しているような顔にも見えた。

アリーの唇が動いたけれど、なにを言ったのかは分からなかった。


 無人機(ドローン)は、兵士の銃撃を受け、コントロールを失った。無人機(ドローン)の視点は、大地と空が交互に入れ替わる、酔ってしまいそうな映像になった。なにかにぶつかり、映像はノイズを残して暗転した。


 進行方向に、索敵妨害弾(チャフ)を投擲して、唯斗は視界がない状態のフロアに躍り込んだ。


 勝ち逃げはダメだ。アリー。


 『剛拳』の勝負では、唯斗はアリーに八十六連敗中だった。


 まだ勝負はついていないからな。


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