ごめんよ。失敗だ。
電源を喪失し、レーザー誘導が途切れた。反射光を見失った【フランキスカ】は、それでも車体の上部、エンジン室付近に着弾した。
制御をうしなった【ピクシー】は、側面から路上へ転落し、舗装をはぎ取りながら横転した。付帯部品の残骸が、遠心力でばらまかれてゆく。
一瞬、視野が暗くなって元に戻ったけれど、まったく操作は受け付けなかった。
大きな獣の死体みたいに、転がっているだけだ。
表示で、化学電池の予備電源に切り替わったことがわかった。
最低限のセンサとネットワークリンク以外のすべてが沈黙していた。
【穿鎧】の砲塔が旋回した。走行機能は奪えたけれど、攻撃力は奪えなかったようだ。暗い砲身が唯斗を捉えた。
赤ちゃん農場の動画を思い出す。わたしの赤ちゃんを助けて、と言った少女の姿が、唯斗の脳裏に浮かんだ。
ごめんよ。失敗だ。
砲塔を向けた【穿鎧】を、上空からの衝撃波が貫いた。巨人の槍のような一撃。〈カイト〉機のステータスが武装なし状態になっていた。〈カイト〉は地中貫通爆弾を使用したのだ。
重量の関係で、【ピクシー】が搭載する地中貫通爆弾は航空攻撃機が発射する物ほどの威力はないけれど、それでも三メートルの鉄筋コンクリート壁を貫通する。
爆弾は、装甲の薄い砲塔上部を容易に貫通し、地面に食い込んだ。
遅延信管が起爆し、マッシュルームのように盛り上がった土塊に持ち上げられ、【穿鎧】は亀のように横転した。
「カイト……どうして」
「どうせ時間切れだ。今からでは間に合わない」