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バルバロイ  作者: ずかみん
30/72

無駄に……しないで

 アビサは、看護婦の手を引いて走った。

 階段に駆けこむと同時に、銃弾がやって来て、コンクリートの壁を削った。


 当たるとは思っていないけれど、アビサは拳銃を取り出して、狙いもつけずに引き金を引いた。すぐには弾が出なかったけれど、あれこれいじり回しているうちに、大きな音がして、熱い金属が顔にあたった。たぶん、火薬のケースだ。

 顔にやけどをしたけれど、効果はあった。


 男たちは、足を止めて、アビサたちの様子を伺った。


「銃を持ってるぞ!」

「注意しろ。誰か別の階段で下にまわれ」


 ぐずぐずしていると取り囲まれてしまう。アビサたちは階段を駆け下りて、トイレの窓をくぐって外に出た。

 出入り口を監視していた兵士たちが、アビサたちに気付いた。


 兵士は発砲して、銃弾が看護婦に当たった。

 白衣のおなかの辺りに赤いしみが広がった。

 看護婦は倒れて動かなくなった。


「しっかりして!」


 看護婦の呼吸は早くなっていた。なにかを話そうとしているので、アビサは口元に耳を寄せた。


「聞こえないわ」

「逃げて……無駄に……しないで」


 周囲に銃弾が降り注いだ。

 アビサは看護婦をかばって、覆いかぶさるように体を横たえた。

 ふくらはぎに殴られたような衝撃があって、しばらくすると、アイロンを押し当てるような灼熱感が襲ってきた。弾が当たったのだ。

 アビサは、ポケットの手榴弾を取り出して、手の中に隠し、死体のふりを続けた。


 兵士は必ず、アビサたちの死を確認しにくると思った。


 近くに歩き寄って来た兵士は、銃に取り付けたナイフで、アビサのお尻のあたりを刺した。

 生きていればなにか反応があると思ってそうしているのだ。


 アビサは唇を噛んで痛みに耐え、手の平に隠した手榴弾の安全ピンを手探りで抜いた。レバーのような物がはじけ飛んだ。


 アビサは手榴弾を手で押しやり、看護婦の上にしっかりと覆いかぶさった。


 手榴弾に気がついた兵士たちが、恐怖とも驚愕ともつかない獣のような叫び声をあげた。


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