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バルバロイ  作者: ずかみん
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質実剛健の手堅い殺戮機械

 かすれてゆく黒煙の中から、現れたのは奇妙な光景だった。


 ミサイルでダメージを受けた部分だけが、剥がれたモザイクのように宙に浮かび、その様子はまるで異世界から、こちらの世界に実体化しようとしている異形の生物のように見えた。

 部分的に露出したディティールに、唯斗は見覚えがある。


 敵性車両を示す四角いコンテナで囲まれた戦車は、中国ノリンコ社製の第四世代戦車ZTZ-28【穿鎧】もしくは、そのライセンスコピーだった。

 世界でも第一級の装備を有する主力戦車だ。


 漂う爆煙を破って、【穿鎧】は唯斗たちの方位をスキャンした。


 肉眼では見えないレーザー光が可視化され、視覚野に表現される。回避機動した唯斗の至近距離に、APFSDS弾が着弾した。圧倒的な運動エネルギーが、炸薬が破裂したように土塊を巻き上げる。


「機能停止してない。動き出した。侵徹できないのか? キオミ、情報くれ」


 そう言ってる間にも、【穿鎧】は唯斗たちの光学機器をジャミングにかかっていた。視覚野のアイコンが示す脅威の度合いはピンクから紫に変わりつつある。


 赤くなったらレーザー光の収束度合いはこちらの射撃統制センサを破壊するレベルだ。六〇トンもの重量があるので、装備のすべてが【ピクシー】よりも充実している。質実剛健の手堅い殺戮(ウォー)機械(マシーン)だった。


『装甲は……タンデムHEAT弾では貫徹できない。単発では』

「まったく同じ場所に当てれば抜けるのかい?」

『確率的に、同じ場所に当てるのは難しい』

「信じられない。なんであんな代物が、アフリカにあるの」と〈スタンプ〉。「リジエラの正規軍でも持っていない装備よ。どこからそんな資金が?」


 唯斗は頭の中でリジエラがらみのニュースを反芻した。

 石油資源の枯渇。南北のパワーバランスの逆転、宗教対立の先鋭化、レアメタル鉱脈の再開発。そういえばレアメタル鉱脈開発の資金を出資したのは、フランスの多国籍企業『オリゾン』だった。


 天然ウランから砂糖まで、CMでも有名なキャッチフレーズだ。もとはフランスの相場師が設立した、謎に包まれた世界最大の非公開企業。

「キオミ。『オリゾン』」

「ヌエ、意味不明。なに?」

「調べてよ。従業員の渡航情報。移転した資産。リジエラから発信したメール、FAX」

「……了解した。でも、それはわたしの仕事。任務に集中して」

「どうする? オレがくらったら作戦失敗だぜ?」と〈カイト〉が言う。

「相手は無限軌道車だ。【ピクシー】程のトップスピードは出ない。高速巡航モードに移行、振り切る」


 【ピクシー】はバイクの二輪に、左右の補助輪を追加した車両構成なので、左右輪を引き上げ二輪走行にシフトすることで、タイヤの抵抗と燃費を抑えることができる。

 

 巡航モードにシフトしようとした時、唯斗は、進路上のつむじ風に気付いた。


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