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バルバロイ  作者: ずかみん
20/72

眠って、目を覚まし、息をする

 目を閉じて、痛みに身構えていると、もう一人の兵士の声がした。

「おい、撃つな!」

 その兵士は、覆面を脱いで、白い歯を見せて笑った。アビサの顎をつかんで、顔を上げさせた。

「よく見ろよ。上玉だぜ。殺したら楽しめない」

 それからのことはあまり話したくない。


 いろんなところに連れていかれて、妊娠して、改宗を迫られ、それを断るとアビサはこの病院に連れてこられた。


 ここでは、ずっと同じ毎日だ。


 ごはんを食べて、診察を受ける。眠って、目を覚まし、息をする。

 何度か逃げようとしたけれど、そのたびに見張りの兵士につかまった。不安定な時期だったので、暴力でのお仕置きはなかったけれど、赤ちゃんごと殺すぞ、と、何度も脅された。


 望んで妊娠したわけではないけれど、おなかの中で日に日に大きくなる赤ちゃんだけが、アビサの楽しみになった。


 赤ちゃんは確かに生きていた。アビサのおなかを蹴ったり、寝返りを打とうとしたり、光や音にも反応した。


 生まれた後、取り上げられた赤ちゃんがたどる運命については、寄宿舎の頃、噂で聞いたことがある。奴隷、ペット、医療資材。そんな目に会わせることはできない。生まれてこなければよかったと思うようなことにはさせたくない。


 一度だけ外国人がやってきて、アビサたちは取材を受けた。


 罰を受けるのは分かっていたけれど、アビサはカメラの前で助けを求めた。

 アビサは殴られて、この独房に移された。狭くて湿っぽい物置きみたいな部屋。窓というより換気口と呼んだほうがいいような開口には、鉄格子がはまっていた。


 首には、ICタグが埋め込まれた。


 反抗的な患者で、逃亡の可能性が高い、ということだろう。

 助けは、やってこなかった。


 わかっている。


 アビサが自分でなんとかするしかないのだ。


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