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バルバロイ  作者: ずかみん
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ぜんぜん、関係なんかない(イラスト有)

よろしくお願いいたします。

ちょっと感触がわからないので、感想などいただけると嬉しいです。

(きびっしいコメント望む)

 崩れかけた建物は、地元キリスト教系の学校だった場所だ。


 レンガの壁や木質の屋根は、半分以上が瓦礫になっていた。

 むき出しの道路から照り返す光に対応できず、センサ画像は暗くなったり、ハレーションを起こしたりを繰り返している。


 どうにか調整を済ませた火器統制装置(FCS)が、瓦礫の下から突き出した物体を、ピンクのコンテナで囲んだ。脅威でないかどうかの判定を求めているのだ。


 FCSが唯斗(ゆいと)に正体を訪ねている物は、黒く焦げたふくらはぎだった。瓦礫の下から覗いているのは子供の足だ。

 熱で縮んだ皮膚が裂けて、白い脂肪組織がのぞけていた。

 視覚的には、もう、人じゃなくて、物だ。


 イスラム過激派グループによる占拠が最初に報道されたのは、もう三十二時間も前のことだった。

 ようは、遅すぎたのだ。

 その後、ネットで見たCNNリポーターの記事にはこんな風に書いてあった。


――リジエラ共和国北東部ボルナ州で十四日未明、イスラム過激派グループとみられる武装集団が寄宿学校を襲撃し、生徒ら少なくとも四十八人を殺害した。


 生徒は銃やナイフで殺害されたという。武装集団は学校の建物に火も放った。


 大統領は昨年、北東部3州に非常事態を宣言し、治安部隊が過激派組織の掃討作戦を開始。しかし過激派グループの住民らへの攻撃は続いている――


 淡々とアスキーコードにするとそんな感じだ。実際に目にした唯斗にだって、現実感はない。

 時差八時間の遠い海の向こう、アフリカ大陸の話だ。


 唯斗に(ゆいと)関係なんかない。


 山賊みたいに粗野なみなりをした過激派組織の兵士たちが、唯斗が操作する対戦車機動車を指さして笑った。言葉がわからなくても言っていることは大体わかる。


――みろよ。間抜けな奴らだ、今ごろ何しに来たんだ!


 知っているのだ。


 『ハルシオン』は、人体への直接攻撃は行わない。


 車両に乗るか、攻撃拠点に配置されてない限り、例え卑劣なテロリストであっても、まったく危害を加えられる可能性はない。それは人権擁護団体である『ハルシオン』の理念だ。


 湧き上がってきたのは、怒りとか悲しみとかじゃなくて、静かに足元へ広がる水たまりのような、冷え切った感覚だった。


 こいつらは、たぶん何度でも同じことを繰り返す。

 神の教えに責任をなすりつけて、考えることをやめてしまった連中だ。


 唯斗の操作する対戦車機動車輛【ピクシー】――第五世代戦車ともいわれる――に対人用の武装はない。


 ただ、見ているだけだ。


 嘲笑う兵士たちのむき出した歯が、異様に白くて、目に痛いくらいだった。


挿絵(By みてみん)


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