ダサい髭のジジイ
この学校は、長方形の土地の隣り合う二辺をそれぞれ校舎と部活棟して、それ以外は校庭という作りだ。校門は、校舎と部活棟の間にある。
「ところで部長、七つのうちどれから調査していくんですか? 」
校庭まで続いていく道(つまり渡り廊下の真下)を歩きながら、俺は尋ねた。
「……普通に一つ目から攻略しようと思う」
「初代校長像ですか……」
初代校長像は、部活棟の奥にある弓道場の手前にある。部活棟の裏を通って、俺たちはそこへ向かっていった。
部長の言いつけで、俺たちは懐中電灯を持ってきていた。外の街灯の光がフェンス越しにわずかに届いているが、それでも暗い。先頭を歩く部長のみ懐中電灯を点けて歩いた。
ドサッ。
急に後ろで大きな音がしたので、俺は慌てて懐中電灯をつけた。
照らされたのは、ずっこけている美鈴。
「あーあー、大丈夫か?」
俺はそばに駆け寄って近くにしゃがんだ。
「ふ、ふぇ……」
美鈴の顔は今にも泣きそうだ。可愛い。惚れてないぞ。
「美鈴ちゃん大丈夫ー? 」
奈々も気がついたようで駆け寄ってきた。
「九条、ちび助は御影に任せて先に行くぞ」
もう結構前に進んでしまっている部長が奈々を呼んだ。
「はいはーい! ハクくんたちは後から来てね!」
奈々は部長の方に駆けて行った。
「了解だ」
俺は改めて美鈴の方を向いた時には、もう美鈴は立ち上がりかけていた。
「立てるのか? 」
「うん、大丈夫」
大丈夫な風には見えないな。膝を擦りむいているからだ。肌が白い美鈴は真っ赤な傷がとても痛々しく見える。
「それ絶対痛いだろ」
「痛くない」
何故か強めに美鈴は言った。気を遣って欲しくないんだろうか。
「おんぶしてやろうか? 」
「いらない」
「そ、そっすか……」
ツンもデレもなく普通に拒否された。傷つくぜ……。
俺が勝手にうなだれている間に美鈴は一人で立ち上がり、部長の後を追って歩いていった。
美鈴の後を追いかけ、俺たちは部活棟の奥にある初代校長像に辿り着いた。
「夜中に見ると結構怖いですね……」
暗い夜の中、懐中電灯で照らす初代校長の顔はかなり不気味だ。ダ・ヴィンチのパクリのような髭と、像で見てもわかるようないい人オーラが特徴的だ。
「さっそく調査しようよ! 」
興味津々という顔で奈々が言った。
「え、もうやるの? 」
「ならいつやると言うんだ」
「それは……」
心の準備というものがあるでしょうが……。
そんな俺を待たずに奈々は大きな声で像に話しかけた。というより、叫んだ。
「こーちょーせんせーいっ! そのおヒゲちょっとダサさすぎると思うんでーっ! ジャンピング土下座で反省した方がいいと思います!! 」
「おいーっ!? 」
「く、九条、それは……」
噂のやつから発展させすぎだろ!? 像に意志あったらかなり傷つくよそれ!!
『お嬢さん、それはかなり傷つくのう……』
老人のしわがれた声が、俺の耳に響いた。
「……俺たちにジジイの声真似上手いやついたっけ? 」
「そんな謎の特技ないと思う」
他の部員も全員驚いた顔をしている。良かった、俺の耳がおかしいんじゃないんだな。
「だよな……」
『もしもーし? うぅむ、聞こえておらんのか……』
まただ。
「まじで誰か物真似できるのか? 」
「……御影、そろそろ現実を見た方がいい」
部長が諦めたような口調で言った。
俺は恐る恐る、初代校長像の顔を見る。
『やはり聞こえておらんか……』
金属でできた爺さんが、困ったような顔でこっちを見ながら、言った。
つまり。
「像が……動いた」
くっそどうでもいいことですが、キャラの苗字は大体関西圏の駅名です。
例えば御影は阪神本線の駅名ですね