校門を飛び越えるだけなのに
さらばエロゲマスター
その夜。五人全員が約束の通り夜中の校門前に集まっていた。
「うっはぁ学校真っ暗じゃーん。これ入るのかー」
奈々が校門の格子の隙間から中を見ながら言った。
「ちょ、ちょっと僕は遠慮しようかな……」
「なんだエロゲマスター。お前以外とビビりなのか」
「そのあだ名で呼ぶんじゃない」
「わ、わたしもちょっと怖くなってきました……」
こいつは感情が綺麗に表に現れる。怯えてる顔も可愛いんだけどな。惚れてないぞ。
「大丈夫、俺がいるから安心しろ」
「うん……」
美鈴は本当に安心した顔で微笑んだ。
「おいそこのバカ夫婦。じゃれ合ってないでさっさと仕事しろ」
「ひゅーひゅー」
部長に怒られてしまったのでさっさ侵入してしまおう。
せいぜい二メートルほどの高さだから、思いっきり飛べば大丈夫だ。
「ほっ」
腕に力を込めて、体を持ち上げる。そして足を掛け飛び降り、俺は難無く校門を越えた。
「そいやーっ! 」
後から奈々も続く。奈々は足を掛けることなく飛び越えた。なんつー運動神経だ。パンツ見えたし。
「はっ」
同じく部長も校門を飛び越える。ほほう、こんなパンツか。って、何を見てるんだ俺は。
ガチャッ。
頭を振っている俺を見た部長は、エアガンを俺の額に押し当てた。
「お前、今私の下着を見ただろう」
なんでわかったんすか!? などと言えるはずも無い。
「どうなんだ」
部長がエアガンを突きつける力を強くする。
「それは、その……」
とりあえず誤魔化すと、部長はエアガンをポケットにしまった。いやいやもうそれ捨ててくれよ怖いよ。
「ふん、まあいい。ところで、私のひらひらとしたスカートの下に隠された布はどうだった? 」
「最高だったぜ! 」
声が後ろから聞こえた。振り返ると、校門のてっぺんでグッドサインを作るエロゲマスターがいた。
「……」
部長は呆れた顔で門に近づき。
ガシャガシャガシャガシャガシャッ!
門を全力で揺らし始めた。
「ちょっ、ちょっと待つんだ部長っ! ぎゃあーーーっ! 」
断末魔と共にエロゲマスターは道路側にどさっと落ちた。アホだ。本当にアホだ。でも尊敬するよ。お前は男の理性のままに行動したんだ。
「もうお前来るな」
部長が屍になっているエロゲマスターに吐き捨てるように言った。
「頑張って帰ってね! 」
奈々は優しく追い討ちをかける。
「で、次はみーちゃんだ」
「あ」
俺は奈々の言葉で思い出した。美鈴はぶっ倒れているエロゲマスターから二メートルほど横にいた。なのになんで気づかなかったんだ!!美鈴、お前は俺のなかでどれだけ影が薄いんだ……。
「ごめん全然気がつかなかった」
「うぅ……ハク、ひどい……」
半泣きの顔も可愛いな。惚れてないぞ。
「でもどうやってこっち来るつもりなんだお前」
フェンス越しに問いかける。
「うーん……」
「そこで待っていろちび助」
現れたのは部長だ。部長は一っ飛びで門を越え、美鈴の腰を掴んだ。
「えっ? えっ? 」
「そいやぁぁぁぁぁぁっ!!」
部長は美鈴を真上に放り上げた。その高さ、目測約四メートル。
「ひゃぁぁぁぁぁっっ!? 」
ドサッ。
悲鳴をあげながら降ってくる幼馴染を俺は綺麗にキャッチする。もちろんお姫様だっこ。
「大丈夫か」
ふふ、俺は王子様だ。どうだ、惚れたか。
「うん、ありがと」
お姫様は普通に俺の腕から降りた。おいおい夫婦言われたら照れるのにそこは来ないのかよ。
「これで全員入れたな。行くぞ」
部長は校舎の方に歩き出した。
「ほっほーい♪ たーのーしーみだー! 」
真夜中の校舎でよく歌いながらスキップできるな。美鈴もそのあとをついていく。
何か忘れてるような気もするが、俺たちは調査を開始した。