部活に入って二年目、初の活動でございます
ギギィーッ。
またまた数分後、油のさしていないドアの耳障りな音と同時に俺の幼馴染が入ってきた。
「遅れてすいませ〜ん」
「ゆっくり開けるな。音が不愉快だ」
「ひっ!? す、すみません……」
すみません連呼中のこのふわふわした女の子が俺の幼馴染、河内美鈴。背が小さくて雰囲気がほんとにふわふわ。ふわふわなんですよ。髪の毛がふわふわロングだからかな。
席は俺のとなり。ちょこちょこと歩いて席についた。
「ハク!」
「んー? 」
口調が怒ってるな。俺何かしたっけ。
「なんで勝手に部室行っちゃったの? 心配したんだよ」
「え? 」
「わたし今日掃除だから待ってくれるって言ってたじゃん! 」
「あ、ほんとだ」
ごめん完全に忘れてた。
「ご、ごめんごめん」
顔の前で手を合わせる。
「全くもう……」
それですぐ許してくれる。プンプンした顔が可愛い。……惚れてないぞ。
「夫婦喧嘩もほとほどにして、お前はさっさと勉強しろ」
ぺちっ。
また輪ゴムが飛んできた。はいはいやりますよ……。
「ははっ、仲がいいのはいいことですよ〜? 」
「リア充爆ぜろ」
「お前ら……」
奈々は茶化すな。エロゲマスターはお疲れさん。
「お、お嫁、さん……」
となりの美鈴を見ると顔が真っ赤だ。
「お前な、俺たち大人じゃないから夫婦じゃないんだ。おわかり? 」
「う、うん」
俺は別にお前と結婚しても全然いいけどよ。
いやいや勉強をしていると、不意に部長が腕組みしながら言った。
「そういえば、みんなに言っておきたいことがある」
それぞれ自分のことをしていた一同が一斉に部長の方へ顔を向ける。
「ち、中間テストが終わるとすぐに」
「あ、噛んだ」
「うるさい」
ぺちっ。
ぱっつんショートの奈々のおでこに輪ゴムが命中した。流し撃ち上手すぎだろ。
「ゴホン!中間テストが終わるとすぐに、新入生のためのクラブガイダンスがある。テスト前に少しは何をするか決めておかなければならないんだ」
「そういや一年前そういうのあったなー」
「ほっほーう」
「うちはオカルト研究部だから、オカルトについての研究を発表しないといけないわけだ」
「「あ」」
エロゲマスターの一言に、俺と奈々はハッとしたような顔になった。
「そう、それで困っているんだ」
「ふぅむ」
「今までそんなのしたことないからねー」
その通り。この部室にはオカルトなんて単語はドアのプレート以外一切無いのだ。
「ネットで調べてそれを言ったらなんとかなるだろう」
「黙れエロゲマスター。部活は行動だ。自分で調べるんだ。それがオカルト研究部! 」
「今まで何もしてこなかったのにー? 」
「……」
「私もネットに頼りたくはないな。自分たちでなんとかできないか……」
俺も部長と同意見だ。
「わ、わたしに考えがあります」
美鈴がおずおずと手を挙げた。
「な、なら、わたしに考えがあります」
二回言わなくてもいい。
美鈴が手を挙げて発言するのは珍しいな。同じクラスだが、授業中でもずっと静かにしている。
「ふむ、言ってみろ」
「が、学園七不思議って知ってますか? 」
美鈴の顔がすげぇ必死だ。可愛い。惚れてないぞ。
「学校に伝わる怪談的なあれか? 」
「この学校にそんなのあったっけ? 」
「調べてみようか」
カタカタッ、ターン!
エロゲマスターがEnterを押す。一番上に出てきたのは……。
「『月光学園オカルト研究部活動日誌その十・学園七不思議調査』……?」
読み上げてすぐに疑問が湧いた。
「部長、この部活ホームページあったんですか? 」
「いや、作った覚えは無い」
部長は首を振った。
「多分卒業生のものだろう。旧オカルト研究部というわけだな」
「なるほどぉー」
「さすがエロゲマスターだな。頭いいぜ」
「そのあだ名はやめろ」
「みーちゃんはこれを見つけたの? 」
画面を指差しながら奈々が尋ねる。
「う、うん、そうだよ」
「では、これを調べることにしよう」
「いや、でも明日からテスト一週間前で……」
「お前はどうせ勉強しないだろう? 」
「……」
全くの事実でございます。俺以外の部員は成績優秀だ。テスト勉強が少しの間できなくても痛くも痒くもないだろう。
「いーね、面白そうじゃん! 」
「仕方ないな、部活だ部活」
自分の心に踏ん切りをつける。
俺たちはホームページを読み進めていった。