友情から芽生えた・・・2
ライヴ当日。瑞希の家へ出かけに行く。待ちに待った“ザ・ハリケーン”のライヴ。心躍らせながら、瑞希の家へ向かった。瑞希の家の前で立ち止まった。最近ずっと来ていなかった瑞希の家・・・。玄関のチャイムを押した。
『あ、蓮沼?早かったじゃん。入って。』
瑞希が出てきてそう言った。俺は瑞希の部屋へ行く。前に瑞希の部屋に来たのは、壁中に“ザ・ハリケーン”のポスターが張り巡らされていて、本棚には
“ザ・ハリケーン”関連の雑誌、CDが所狭しと、ならべられていて、ものすごい音量で音楽が流れていた。これが本当に女の子の部屋なのかと、不思議に思ったほどだ。久しぶりに瑞希の部屋に入ると、あまり変わったところはなかったが、微妙にポスターの種類や、雑誌の量は変わっていた。
『あ、これ、富永に貰ったポスター。ほら、カッコいいでしょ?』
と、瑞希は“ザ・ハリケーン”の新しいポスターをみせてくれた。本当にメンバー全員がかっこよく写っていた。瑞希は、ジュースと菓子を持ってきて、ミニテーブルに置いた。
『超楽しみだね!本当、最高な気分だよ!』
「俺も。何歌うのかな?新曲歌ってくれるといいな。」
『うん!でも、どれもいい曲だから、何歌っても嬉しい♪』
俺たちは、それからずっと“ザ・ハリケーン”のことについて熱く語り合った。時間も忘れ、この時間がずっと続いていたら。
そんなことをしているうちに、富永が来た。俺たちは、富永の車に乗り込んだ。車内では、“ザ・ハリケーン”の音楽が鳴っている。その切ない歌詞に、俺は胸がジンとした。
『ね、富永はライヴよく行くの?』
「あんま行かねーな。一緒に行く人いないから・・。」
『ふーん。私はね、蓮沼とよく行くんだよ。生で曲聴くと、本当に泣けるよ!』
瑞希は、富永と話している。楽しそうに・・・。俺のポジション、奪われたのか。楽しみだったはずのライヴが、急に、窮屈なものとなった。瑞希にとって、俺の存在は、なんなのか・・・俺より、富永がいいのだろうか・・・富永は瑞希と仲がいい。俺よりも・・・、ずっとずっと・・・自分がちっぽけに見えた。
その日、ライヴが終わってから、俺は瑞希の家へ行った。富永は用事があったらしく、先に帰った。瑞希の手にはたくさんのグッズがある。俺の手元には、1つ、瑞希が一緒に買おうって言ったのでかった、キーホルダーがあった。
『楽しかったね・・・。はぁ、また行きたいな。超最高だったぁ・・・』
余韻にひたりながら、瑞希が言った。
「あぁ・・・」
『ねぇ、今日、蓮沼変だったよ。元気無いじゃん、どうしたの?』
「別に?変だった?」
瑞希は俺の異常に気づいていたのか?あれだけ富永と一緒にいたのに。俺は1人で2人の後を付いていってたのに。俺はなぜだか、無性に腹が立った。
『そっか・・・。だってね、なんか1人でボーッとしてたしさ、無口だったじゃん。』
「それは・・・お前と富永が仲良くて入る隙間がなかったから・・・・。」
『何で?いつもなら、無理やりにでも、入ってくるくせに。』
瑞希は少し怒った。
「お前ら仲いいから、お前だって富永と一緒にいたかったんだろ。俺が邪魔しちゃ悪いしさ。俺より富永がいいんだろ!」
何言ってるんだ?俺?これじゃ、まるで富永に嫉妬しているみたいじゃん。瑞希は、俺の言葉に怒った。
『そんなこと言わないでよ!蓮沼の方がいいよ。だから、畔さんのことも協力しだよ。富永は好きだけど、蓮沼の方がもっと大好きなの!・・・なのに、どうしてそんなこと言うの?』
瑞希は俯いて、泣き出した。
「ごめん・・・。」
俺は瑞希に触れようとした。瑞希はそれを嫌がり、
『出てって・・・。今は、蓮沼の顔見たくない。蓮沼には何気ない一言かもしれないけど、私はかなり嫌な言葉だったの。蓮沼のこと、信じてたのに・・・。』
瑞希は、なきながら言っている。その涙を、俺は拭いて、抱きしめてやりたかった。でも、涙を流させたのは俺。俺にそんなことをやる資格はない。俺は荷物をもち、ドアの前に立った。
「瑞希、明日・・・バスケの大会あるんだ。来てくれるよな。俺、お前の応援がないとダメなんだ。今日は本当にごめん。俺、どうかしてた。明日、待ってるから。」
俺は最後にそういって、部屋を出た。おばさんに挨拶をして、家に帰った。
後悔・・・・。その言葉が今の俺を表す言葉。どうして、あんなこと言っちゃったのだろう・・・。俺、瑞希の彼氏でもなんでもないのに、瑞希が誰と仲良くしようと、俺には関係ないのに・・・。俺は、その夜、何もやらず、ただひたすらなき続けた。大会のことより、瑞希の方が気になって、気になって・・・。俺にとって、瑞希の存在ってなんなのだろう・・・。友情じゃない、何かって・・・。
大会の日、極度の寝不足で、やる気がでてこない。そんな俺を沙雪が励ましてくれる。沙雪が悪いわけじゃないが、俺はそれを嫌がり、1人になった。いつになっても、瑞希は来ない。俺は体育館の入り口をずっと見ていた。
「来るはず無いか・・・。」
監督が、選手を呼んだ。軽くウォーミングアップをしてから、いよいよ、第一試合開始だ。俺たちは、第二試合なので、時間がある。ほかの選手は練習している中、俺は緊張感と疲労で、とても動ける状態じゃなかった。第一試合が終わりかかっても、瑞希が来る気配はない。第一試合が終了した。
とうとう俺たちの出番。コートの中に入る。心臓がバクバクいっている。いよいよ、試合が始まった。実力的には俺たちのほうが数段上手だ。見方からのパスも、シュートも順調。みんなコンディション抜群なのだろう。俺はそれについていくのが精一杯。そのため、俺の失敗のために、3ゴールも決められた。16対6・・・。その6点は俺のせいで入れられたもの・・・。自分を責めて、どんどんやる気が落ちていく。監督、早く俺を交代させて・・・。その時、パスを貰って、俺はドリブルをし、シュートを打ちにいった。相手のDFをかわし、突っ走る。
シュートを打とうとしたとき、DFにタックルされた。俺は気を失い、そこに倒れこんだ・・・。もうダメだ・・・、俺は終わった。その時、かすかに声が聞こえてきた。聞き覚えのある、元気で明るい・・・。
『・・ぬま・・・蓮沼!何やってるの!立ち上がって!シューと打たなきゃ!』
ハッとして俺は立ち上がった。瑞希だ。瑞希が来てくれたのだ。審判に
「大丈夫ですか?」
と聞かれた。俺は力強くうなずいた。さぁ、ここから、俺の反撃だぜ!俺はその後、3Pを決め、シュートを打ちまくった。瑞希が応援してくれている。それがとても力になった。俺は気づいた。俺にとっての瑞希の存在を・・・。友情から芽生えたなにかを・・・・。この日、俺は何点シュートを決めたかわからないが、とっても気持ちよくできた。結果はもちろん地区大会優勝だ。このあとの、県大会も優勝してやる!!
試合後、俺は沙雪に別れを告げた。沙雪のことを俺は本気で好きだった。それに間違えは無い。ただ、俺にはもっと大切な人がいた。ただ、それだけだった。沙雪が俺を恨むからそれでいい。俺から沙雪への思いに嘘は無かったのだから・・・。
俺は沙雪と別れ、瑞希のところへ行った。瑞希は笑顔で俺を迎えてくれた。その笑顔が、俺の心を和ます。
『蓮沼、大活躍だったね。感動したよ!』
「サンキューお前のおかげだって。」
俺と瑞希は互いの顔を見合った。昨日の出来事は何も無かったかのように、澄んだ目をした瑞希。俺はおもわず瑞希を抱きしめた。
「俺さ、さっき、沙雪と別れたんだ。」
『え?何で?良かったの?』
「もっと大切な人が見つかったから・・・・。沙雪は好きだけど、俺の隣にいつもいて欲しい奴は沙雪じゃない、瑞希、お前なんだ。」
俺は、自分の気持ちを素直に言った。瑞希は真っ赤になって、
『私も・・・、蓮沼の隣にいたい。』
俺と瑞希は大切な友達。だから今まで気づかなかった。友情の陰に隠れた本当の気持ち、
友情から芽生えた何か・・・恋を・・・




