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1.それなりに幸せな生活 (vol.4)

 宇宙での完全閉鎖系プラントの実験コロニーだったU08は、四年前、様々な利権が複雑に絡み合った結果、故意に近い事故で廃棄衛星と衝突し、軌道上の魔界H201に墜落した。

 ボス…エイハブの率いる裏家業の魔法使い集団は、原因を作ったハーマン社幹部達に雇われていた。

 メアリーは、U08に駐在していた研究員夫婦の娘で、事故当時脱出出来なかった人間の中では、唯一の生き残りだ。

 祖父で、ハーマン社幹部でもあるヤン・コーウェンの内部告発で、マクレー達国連宇宙軍が出動し、NMC(西谷魔法商会)に依頼が入った。

 エイハブ達は、証拠隠滅の為にU08を魔界から異界へ繋がる穴へ落とす為に…自分達は、それを阻止する為に雇われた。

 結局、データやサンプルの確保と、メアリーの救出しか出来なかった上に、利権争いしか頭にない連中に足止めされて、不愉快な目に遭った。

 事故から救出まで、半年もの間魔界に一人で取り残されたメアリーは、魔導変化した実験プラントと同調し、正常な状態では無くなっていた。

 確か、当時十才かもう少し上の年齢だったはずだが、プラントの植物を操る能力を得たものの、幼児の様な言動になってしまっていた。

 人質と誘拐犯が行動を共にする内に親密になる状態を、ストックホルム症候群と呼ぶ。

 ボスとメアリーは当時、それに近い関係だった。

 目の前の、はつらつとした少女を見て、ああ、良かったと思った。

 一生抱えて行かなければいけない傷を負っているかも知れないし、多分そうなのだろうが、少なくとも普通に生活出来る様にはなっているのだ。

 それから、彼女がこんな所に駆け込んで来た理由に思い至り、ぞっとした。

 多分、ボスも同じ事を考えている。

「待て、こんな子供まで連れて行くつもりなのか」

 真っ先に、ボスが反論した。

 自分だってガキを仲間として連れて来ているだろう…とは思ったが、ウサギ型ハイブリットの少年は少なくとも十七、八才だ。

 周囲に、短い沈黙が起こった。

 破ったのはマクレーだった。

「彼女は、自ら志願して来てくれた。現時点で、宇宙での活動経験が最も長いランクSだ。

 もちろん、未成年の彼女を、危険な場所へ同行させる訳にはいかない。ライフライン確保の為の外部サポートとして、参加してもらう」

 ピーターは未成年じゃないのか…とか、いくらサポートでも、十代半ばの子供を戦力として使うのはどうなんだ…とか、周囲からも様々な意見が小声で出された。

 その場がざわめいている中で、慎重に様子を伺っていたメアリーが、口を開いた。

「あの…私は四年前に魔界で事故に遭いました。だから、少しでも役に立ちたいです。

 地球で魔界に入った事は無いから、魔界名はありません。ええと…ファニーメイって呼んでください」

 じゃあ俺、ジョージ・X・マッキーな…と軍人の一人が軽口を叩いたが、誰も元ネタを知らなかったので、スルーされた。

「ファニーメイとピーターの登用は、おそらく後から非難されるだろうが、非常時だ。このまま強行する」

 マクレーは言った。

 フリッツは、少し複雑な表情をしていた。


 メアリー…ファニーメイが着席して、話は具体的な内容に移った。

 壁面のスクリーンには、メッセンジャーとして解放された男女二人の映像が流された。

 特に、夫婦でも友人でも親族でもない、ただ単に宇宙船の隣の席に乗り合わせただけの、月に住居があって、旅行から戻る途中だった中年の研究員の女と、月に居る息子夫婦を訪ねて来た、地球人の老人。

 幸い地球人の方も、何度か月に来た経歴があった。

 その辺りはある程度考えての人選なのだろう。

 目視出来た実行犯は四人だけだが、声は複数聞いた事、研修旅行の子供達は、低重力や閉鎖環境に慣れているので、引率教師の指示で冷静に行動している事、むしろ地球からの旅行者がパニックを起こしかけていてヤバイ事、投薬が必要な持病を持っている者が四人居る事、等を淡々と語った。

「私を解放するくらいなら、病人や子供達にして欲しかった」という老人の言葉が、胸に痛い。

 更に面倒な事に、船には二人の有名人が乗っていた。

 一人は、月との貿易での政治的な調整でサウスシティーに向かっていたコロニー出身の政治家ハスト。

 もう一人は、地球と宇宙の両方で有名な歌手、レディーUMA。

「医薬品については、突入部隊と後発の実行部隊双方に所持させる。マニュアルは、魔界でも使える様に、紙にプリントした者を全員に配布する。時間的に厳しいとは思うが、熟読して欲しい」

 続いて、現地でのグループ分けが指示された。

 当然ではあるが、招集された魔法使いの大半は、突入部隊に配置された。

 職業軍人としては不本意だろうが、専門家に任せる方が安全だというマクレーの言葉で、魔法使いのチームが編成された。

 ジョン太とトリコはAチームに、鯖丸はBチームに編入された。後発部隊がCチーム。

 作戦に必要な連絡係は、転送能力者だというピーターが主体だった。

 どうして、未成年を無理矢理作戦に投入したのかは、それで納得が行った。

 転送は、稀少という程ではないが、希な能力だ。その上、汎用性が高い。

 おそらく、地球外で活動経験のある転送能力者は、確認されている限りピーターだけなのだろう。

 チーム間での近距離通信は、トリコが担当するという話が出た。

 トリコにそんなスキルがあるとは知らなかった。

 元々隠し技が色々ある人だし、二年の間に新しい魔法を使える様になったのかも知れない。

 後は細かい打ち合わせになった。

 魔力のバランスからすれば当然だが、リンクを張っている魔法使いを分断して使うという作戦には、多少の疑問が残る。

 それでも、現場での状況が何も分からない状態では、反論も出来ない。最善を尽くすだけだ。

 事件発生から、この時点で七十二時間が過ぎていた。


 シグマ010の情報は、作戦会議室を出て直ぐに来た。

 整備仕様書と、詳細な設計図は、モニターに呼び出せた。

 プリントアウトは、月ではあまり使われないので時間がかかると云う。

「いいです、重要な所だけは今憶える。間に合うだけ紙にしてください。配電と動力系中心に」

 モニターを睨み付けながら、横合いから渡されたサンドイッチを犬食いして、コーヒーをすすった。

 こちらが、魔法使いとしてだけではなく、宇宙船舶の専門家としても認識されているのだろう。

 出発準備が整うまでの短時間に、優先的に情報を回された。

「君、それを今から憶えるの? すごいね」

 後ろから声をかけられた。

 先刻、ハリーと名乗ったエンジニアだ。

「僕は全部記憶しているから、無理をしなくてもいいよ」

 言葉としては嫌味に聞こえる内容だが、屈託のない表情なので、天然なのかも知れない。

「魔界では、無線通信は使えませんよ」

 忠告すると、あれ、そう云えばそうだった…済まない…と、詫びを入れて来た。

「僕に何かあったら、エンジニアとして動けるのは君だけだったね」

 この人、割と覚悟して今回の作戦に同行するのだな…と思った。

「俺は、ケンカも割と強いです。頼りにしてください、ファンジオ博士」

 宇宙船の機体設計の専門家として、世界的に有名な研究者の名前を口にした。

 こんな人が、どうして危険な場所に自ら出向いているのか、理解出来ない。

 院生の頃、学会で一度だけ、遠くから見た様な有名人だ。

「君は、クラタ教授の門下生だったね」

「はい。世間で云う所の、変わり者の集団です」

 モニターを見て、次々と画面を切り替えながら、受け答えした。

 ファンジオ博士は、それをジョークだと判断したのか、特に反応は無かった。それから、言った。

「シグマシリーズは、僕が設計した機体なんだ」

「知ってますよ。責任を感じる必要は、無いと思います」

 背後で、ファンジオがどんな表情をしたのかは分からない。

 いちいち確認する時間ももったいないし、向こうも期待していない。

「専門家が同行するのは、心強いと思います。でも、御自分の安全を最優先してください」

「君は、先鋒で突入するのに?」

 エンジニア同士としては、当然の事を聞かれた。

「俺は、ランクSの魔法使いです。この場では、エンジニアなのはオマケみたいなもんです」

「そうかい。ま、戻ったらクラタによろしく伝えてくれ。たまにウワサは聞くんだが、もう随分会ってない」

「はい」

 もちろん自分も、卒業以来倉田教授には会っていない。

 地球に帰ったら、一度、連絡を取ってみよう。

「ていうか、地球に戻ってから、俺どうなるんだろう」

 今更だが、暗い気持ちになった。


 意地汚く、もう一枚サンドイッチを食って、仮眠を取った。

 パンも野菜も、組織培養されたチキンも、独特のイースト臭い風味や、歯ごたえのない肉の食感を除けば、地球のファーストフードと変わらない。

 野菜は、産地からの輸送が必要ないので、むしろ地球の物より新鮮だ。

 マイナーコロニーに住んでいた子供の頃には、さすが宇宙の都会、すごいご馳走だ…と思った記憶があるのに、人間はすぐに贅沢に慣れてしまう。

「こんなだったかなぁ…」

 もさもさと食い終わって、そのまま机に突っ伏して寝ていたら、叩き起こされた。

 目の前のモニターを見ると、七分程が過ぎていた。

「相変わらずだな、君は。こんな時によく眠れる」

 自分よりも短く髪を刈った女が、横に居た。

 マクレーの部下で、U08にも同行したドリーだ。

 周りを見ると、皆がそれぞれに打ち合わせをしたり、軽食を摂ったりしていた部屋の中は、もう空だった。

「すみません」

 急いで椅子を立ち、ドリーの後に続いた。


 エアロックの隣にある狭い窓の向こうには、月の地平が広がっていた。

 観光客が使う様な、乗り物ごと外へ出られる、明るく綺麗なエアロックでもなければ、月の住人が日常的に使う出入り口でもない。

 強いて言えば搬入搬出の通用口だ。

 配管や配電のむき出しになった広い空間には、高く積まれた物資と機材が混在していた。

 月には、政治的な配慮から軍事施設が無い。

 その為に、ある程度の広さがあって、人目に付かないここが選ばれたのだろう。

 物資や人の行き来は、別の場所からでも出来るので、この場はマクレーの(あるいはもっと上の)権限で、確保されている様子だ。

 先刻調整されたスーツは、既にセッティングされていて、メカニックとサポートの兵士達が、装備を運び込んでいた。

 自転車の付いたリヤカーの様な、人力で動かす搬入車が、次々に機材と装備を下ろしている。

 何んと云うかまぁ、呆れる程ローテクだが、月面では、人間はかなり力持ちなのだ。

 筋力を保つ為にも、出来る限り体を動かした方がいい。

 魔界に入る軍人達は、寄せ集めながらもそれなりの規律を保っていたが、魔法使い達はぐだぐだだった。

 大体、規律正しい団体行動が出来る様なタイプは、魔力が低い傾向にある。

 ここに居る軍人達だって、軍の中でははみ出し者の集まりだが、それでもまだ訓練されているだけマシだ。

「バット隊長、鯖丸来ました。寝てました」

 ドリーが仏頂面で報告する間もなく「アウラが居ません」という声が聞こえた。

「はぁいバット先生、ファニーメイも居ません」

「誰が先生だ」

 バットは顔をしかめた。

「アウラとファニーメイ、連れションでーす」

 ダメだ。魔力の高い魔法使いに、団体行動なんか出来ない。

 フリッツが、全てを諦めた仏様の様な笑みを浮かべた。

 経験上、大変な事になるのが分かっているのだろう。

 しかし、これでベストメンバーなのだ。

「小便なんかスーツの中でも出来るだろうが」

 Cチームのロンがキレている間に、リッキーが駆け込んで来た。

 ドリーと同様、U08に同行した頃からのマクレーの部下だ。

 六分の一Gで走ると、急いでいるのに緊張感が無い。

「今、軌道ステーションから連絡が入りました。ステーションで搭乗した乗客の中から、犯人グループのメンバーの内六名を特定出来ました」

 全員偽名で、しかも変装して搭乗しているはずだが、監視カメラの映像から、マッピングで素顔を割り出し、疑わしい人物との照合で、六人までは身元を特定出来たのだ。

「活動家として知られている名前が本名とは限りませんが、魔界では何らかの拘束力を持つはずです。今、全員の顔と名前の入ったプリントアウトを作っています。出発には間に合います」

 全員の表情が変わった。

 魔界では、人の持つ概念が強く働く。

 本名を押さえれば、相手の喉元を押さえたも同然だ。

 たとえ本名でなくとも、何も知らないよりはマシだ。

 アウラとファニーメイが戻って来た。

「はぁい、お嬢ちゃんとおばちゃん、オシッコだって?」

 軽口をたたいたピーターを、バニーが二回転するくらい殴りつけた。

「その下品な口を閉じろ、クソガキ」

「やめろよ、姉ちゃん」

 バニーとピーターは、姉弟だったらしい。

 バニーも原型タイプではないが、ウサギ型のハイブリットなので、そうじゃないかとは皆が思っていた。

「子供なのね」

 ファニーメイに言われて、ピーターはうぐっと黙った。

 そんなやり取りを呆れた顔で見ながら、サポート班の兵士達から、装備品が渡された。

 アンダースーツは軍用品だった。

 更に、魔界でも比較的正確に作動するアナログの腕時計が支給される。

 こんな骨董品を、よく月で用意出来たものだ。

「アンダースーツは刃物や破片は防ぐが、防弾機能はオマケ程度だと思ってくれ。銃弾その物は防御出来るが、衝撃吸収力はほとんど無い。防刃機能も、魔法を使った斬撃には保険程度の効果しか無い事を忘れるな」

 マクレーから、あまりありがたくない説明があった。

 船内に入った時点で、乗客に紛れ込む為に、ここまで着て来た私服がパッキングされて、スーツに取り付けられる。

 それから、地球から運ばれて来た武器が下ろされた。

 魔法を使う時に、道具を使用するかどうかは、個人的な好みや魔法特性で異なる。

 トリコの様に何も使わない者も居れば、ジョン太の様に銃器全般を使える者も居る。

 緩衝材を詰め込まれた、縦長い箱の中に、見慣れた刀が横たわっていた。

 アホみたいにシールを貼りまくっていた鞘も、手の中にしっくり馴染む柄も、憶えている感触のままだ。

 すらりと抜いて、刀身を確認した。

 六分の一Gでは、驚く程軽い。しかし、馴染んだずしりとした重量が、記憶の中に蘇った。

 空中で一振りする。

 鞘に刃を収める動作も、体が覚えていた。

 そうして武藤玲司は、二年振りに鯖丸に戻った。


 武器や装備の類は、侵入口別に分けられてパッキングされた。

 乗客が必要な医薬品も、必要量をそれぞれが同量携行する。

 スーツを装備して、エアロックを抜け、オープンタイプのローバーに乗り込む。

 船内に入らない者を乗せた指揮車は、内部に居住空間のあるタイプだ。

 更に、境界の外からサポートする基地車が続く。

 無線通信は出来ないが、有線接続は外界以上に有効な魔界での活動を、四千メートル強のケーブルで指揮車と接続して、外界からサポートするのだ。

 侵入経路は、船尾左右の点検口。

 どちらも、エアロック機能が正常に働くかどうか、入ってみるまで分からないので、宇宙服を着たままでの侵入になる。

 おそらく、この侵入経路は、相手方に余程の専門家が居なければ、予想出来ない。

 機体を知り尽くしているハリー(ファンジオ博士)の提案したルートだった。

 無線通信と光学機器が使えないのは、敵側も同じだ。

 目視でしか、お互いを認識出来ない。

 巧妙に影に隠れて移動した。


 二年振りに境界を見た。

 魔界と外界の境目は、薄いモアレをかすかにゆらめかせながら、静かな月面をゆるいカーブを描いて横切っていた。

 ハイジャックされた旅客船の後尾が、小高い丘の切れ目から少しだけ見える。

「この先、無線通信は出来なくなる。最終確認」

 バットの命令で、微速前進しながら、各車の間で最後の確認作業が行われた。

「ローバーの乗員は、有線接続で各自通信確保」

 二台のローバーに分乗した乗員は、各自の通信ケーブルを伸ばして、ローバーの中継パネルに繋がった。

 各車の間の通信が途切れても、同乗している者同士は、これで意思の疎通が出来る。

「前進」

 進行方向に左側のローバーで、バットが手を上げた。

 基地車から降りた乗員が、指揮車に通信ケーブルを取り付け、ケーブル操作の為にその場で留まる。

 懐かしいゆるい抵抗感と共に、ローバーが境界を越えた。

 指揮車がケーブルを繰り出しながら後に続く。

 瞬時に、周囲の状況が変わった。

 忘れていた感覚が蘇る。

 荷台に他の荷物と共にまとめられた刀が、魔力に呼応してぶうんと震えるのが分かった。

「うぉっ、てめ、何やってんだ。こっちに来んだろが」

 ピーターに背中を蹴られた。

「悪い。魔界に入るの、二年振りなんだ」

 有線接続すると、色んな事がダイレクトに伝わってしまう。

 急いで感覚を取り戻し、魔力を内側にたたみ込む。

「気を付けてね。魔力が高いと、周りを引きずってしまうから」

 隣に居たアウラが言った。

「すみません」

 謝って、大人しくローバーに体を固定する。

 ユートと、助手席に居るフリッツは、前方を睨んでいる。

 責任が重いのは分かるが、フリッツはもうちょっと力を抜いた方がいいのにな…と考えた。

 変な奴ではあるが、元々真面目なタイプなんだろうけど。

 ギャップを拾って、ローバーは大きく跳ねた。

 それから、二台は左右に分かれて、旅客船の船尾に回り込んで行った。


 船尾の点検口は、ハリーがあつという間に開けてしまった。

 いくら設計者とはいえ、整備士でもないのに随分手際がいい。

 ローバーを踏み台に、地上から少し高い場所にある円形のロックを押し込み、更に内部のロックを引き出して、小さな点検口を開いた。

 宇宙服を着た状態では、やっと通れる大きさのハッチが、ゆっくりと降りて来る。

 軽く手を上げて合図したハリーは、ひらりと身を躍らせて、反対側の点検口に向かった。

 船尾を回り込み、向こう側へ姿を消す。

 シールドの内側にテープで固定されたアナログ時計を確認する。

 あと四分。

 通信ケーブルを収納し、じりじりしながら、突入の時間を待った。

 再び現れたハリーが、基地車に戻る。

 出来れば、船内での荒事には巻き込みたくないと思っていたが、宇宙服を着ての作業にも、低重力にも慣れている。

 魔力もそこそこ高い。

 何者なんだろう、この人は。

 パッキングされた刀を、荷台から取り出す。

 なるべく、同調しない様に注意して、左手に握った。

 反対側の、ここからは見えない位置で、ジョン太が魔力を調整しているのが分かった。

 久し振りの感触だ。

 そうか、リンクを張った者同士を離して配置したのは、二チームを連携させる為だったのか…と分かった。

 魔法使いは、単独か、せいぜい数人で行動する。

 皆、こういう軍人ノリに付いて行けるだろうか。

 時間だ。

 フリッツが手を上げて合図し、先頭に立って点検口から中に入った。

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