公爵令嬢は婚約破棄されても先手必勝で三分で幸せになります
「アイネ・ブラント公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄させぐぶぉっ!!」
勝手な事を言う王太子様に問答無用で全力グーパンチ。先手必勝。
吹き飛んで二回転して壁に当たって止まる王太子様。
私、アイネ・ブラントはいつだって先手を取ってきた。こんな身勝手なこと、相手が言い終わるまで待つ気はない。
「貴方との婚約などこちらから願い下げですわ、王太子殿下。浮気の証拠ならたんまりと王宮中にばら撒いておきましたからせいぜい頑張って回収なさってください」
私は罪状を書き連ねたチラシをバスケットから取り出し、ばら撒く。調査も配布も先手先手で進めてる。
「これは……!」
王太子が連れてきた女がその一枚を見る。二人がどこでどう会って何をしていたのかの克明な記録だ。証人の名前付き。
「ああ、貴女も逃げられませんからね? 聖女マリン。王太子様と通じながら他にお付き合いされている方が三人も。おモテになられますのね」
「な……!」
「マ、マリン、本当か?」
「嘘に決まってますわ! 私が王太子様以外の人となど……」
バン、と、扉が開かれる。
「マリンちゃん! 僕というものがありながら他の男とも付き合っていたなんて!」
マリンの彼氏その二、神官のヨゼフくんが入ってくる。
私のお手紙、ご覧いただけたようで。ナイスタイミング。
「ヨゼフ様!? いえ、これは、ち、違うのです!」
阿鼻叫喚の現場を後にする私。
あースッキリした。
私はいつだって先手必勝。でも不埒な真似はしていない。だからさすがに今は独り身。しばらく気楽に生きますか。
そう思いながら王宮の廊下を歩いていると、前から来るのはお父様。
「アイネ! 次の相手候補じゃ! 五人おる。選び放題じゃ!」
お父様もいつも先手必勝。この親にしてこの子ありというやつ。私の独り身、もう終わりみたい。
「じゃあ、今日のラッキーナンバーは三だから、三番目の人!」
候補の方々の略歴を見るより早く先手を取る。
「ほっほ、その方ならそこの扉の部屋におる! さあ見合いじゃ」
さすがお父様、さらに先手を取られる。
「失礼いたしますわ」
扉を開けると、そこには十歳くらいの男の子が立っていた。
「……先手すぎますわよお父様」
「それはただのせっかちじゃ、アイネ。横、横」
横を向くと、あら黒髪の美青年。
「アイネ・ブラント公爵令嬢、お初にお目にかかる。私は隣国・シュタイン国の王子、グラーツ・シュタイン。貴女に結婚を申し込みにきた」
ひざまずき手を差し出される。
話の早い方。好き。
「この国の王太子は君がいながら他の女に熱を上げておる。あのような輩は君の毒になる。私と一緒になって欲しい」
「はい、もう別れました。喜んでお受けしますわ、グラーツ王子」
にっこり笑顔でお手を取る。
「私の先を行くとはやるではないか」
「先手必勝ですわ。お父様、残りの四人、お帰ししてあげて」
「バレておったか。うむ」
お父様のことだ、誰を選んでも私の先手を取れるようにしていたに決まってる。言われる前に言う。これも先手必勝。
「そうか。私が貴女を初めて見かけたのは先月の晩餐会の日。その日から私は貴女の事をお」
「ありがとうございます。それでグラーツ様、式はいつにしますの?」
長くなりそうだから先手先手。
「もう国で用意させている。着いたらすぐにでも」
気が合う人で良かった。
「では、参りましょう」
別れて三分。私はもう幸せになりました。先手必勝!
お読みくださりありがとうございました。
細かいことはおいといて、勢いのある話を書きたくなったのです。
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