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第七話:裏聖域の構築と、勇者の「パワハラ炎上案件」

「裏組織」と言っても、物騒なものではない。処世術を使えば、世間的に「真っ当な組織」に見せかけるのは容易い。

カズヤはまず、王都の下町にある小さな診療所に目星をつけた。

ここで働く老齢の元・司祭、テオドールは、かつては王都の枢機卿だったが、王族の腐敗に異を唱えたために左遷された男だ。


カズヤはテオドールに近づき、自身のスキル「処世術:心理掌握」を発動させた。

「――司祭殿。あなた様が必要としているのは、隠し持った聖書ではなく、『世の中を変えるための資金と情報網』では?」

「な、貴様……!」

テオドールは驚愕したが、カズヤが差し出したのは、領主ヤナから巻き上げた金貨の詰まった袋と、王都の闇の情報が記された羊皮紙だった。

「私は佐藤カズヤ。こちらは弟のヒロ。我々は『真の信仰』を取り戻すための、新しい組織――仮に『裏聖域』と呼びましょうか――の設立を提案しに来ました」

カズヤの巧みな根回しと、ヒロの持つ純粋な「愛」のスキルに触れたテオドールは、失いかけていた希望を取り戻す。

「分かった……! この老いぼれも、命を賭けて協力しよう」


『裏聖域』は急速に拡大した。

テオドールの人脈に加え、カズヤが処世術で誑し込んだ、日々の理不尽に絶望する下級騎士や、教会の現状に心を痛めている若き修道女たちが次々と集結。表向きは貧しい者への炊き出しを行う慈善団体として、裏では強固な情報ネットワークと、いざという時の武力を備える組織へと変貌を遂げた。


並行して、カズヤは「偽物の勇者」ジークの排除工作に取り掛かっていた。

「勇者様、明日の軍議ですが、王様のご意向は『完全なる殲滅戦』で……」

「あ? 俺は明日、二日酔いで休むわ。戦況報告なんて後でいいんだよ」

ジークの傲慢さは、カズヤにとって最高の付け入る隙だった。

カズヤは『裏聖域』の情報網を使い、ジークの度重なる職務怠慢、酒色に溺れる姿、そして無能な作戦指揮の実態を証拠として集め続けた。

そして、その「パワハラ案件」を、王都の広報誌にリークした。もちろん、処世術による完璧な匿名化と根回しを行った上でだ。


「号外! 偽勇者、戦線離脱で魔物領拡大!?」

「勇者ジーク、酒池肉林の夜!」

王都は騒然となった。

『処世術:情報操作』により、ジークに対する民衆の信頼は地に落ちた。

「完璧だな。これで奴は神輿としても使えなくなった」

カズヤはほくそ笑む。


そこに、血相を変えたテオドールが駆け込んできた。

「カズヤ殿! 大変だ! 次回の王族の『祝福の儀式』――『生贄』の巫女に、よりにもよって、ユカ嬢が選ばれてしまった!」

「……ちっ」

カズヤは舌打ちをした。情報の操作は成功したが、王侯貴族は神の加護(偽り)によって長命を得ており、民衆の騒ぎなど意にも介さない。彼らにとって、儀式は絶対なのだ。

「仕方ない。予定を早めるぞ、ヒロ」

カズヤの目つきが変わる。これまで集めた情報は、全てこの瞬間のためにあったのだ。

「『裏聖域』の皆に伝えろ。偽勇者の失脚により、教会と王家の権威は今、かつてないほど脆弱になっている。『ユカ救出作戦』を皮切りに、この腐敗したシステム、まとめてデバッグしてやる」

こうして、カズヤは最大の「営業案件」――王都の中枢への直接介入を決意した。

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