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第二話:五歳の儀式と、謎すぎる「最強(?)スキル」

どぶ川で死んだはずの俺は、気がつくと赤ん坊になっていた。

前世の記憶を持ったままの赤ん坊というのは、なかなかにシュールだ。

父は、不器用だが力持ちの猟師カズマ。

母は、肝っ玉が据わった農家の娘マチ。

二人ともお世辞にも裕福とは言えない平民だが、俺に注いでくれる愛情だけは本物だった。


「兄ちゃん! まってよー!」

俺の二歳年下、弟のヒロが短い足で俺を追いかけてくる。

無邪気な弟の姿を見ていると、ブラック企業で心を削っていた日々が嘘のように思えるが、俺はこの世界の「違和感」に気づいていた。

大人たちの目は、どこか諦めに満ちている。

空は青く、土は豊かなのに、村全体に「どうせ頑張っても無駄だ」という空気が漂っているのだ。


そして、運命の六歳の日。

この世界では六歳になると、女神の祝福を受け、人生を左右する『スキル』を授かる儀式がある。

村の教会。神像の前に立った俺は、心の中で祈りを捧げた。

(せめてマシな能力をよこせよ。剣聖とか、魔導王とかよ……!)

その瞬間、頭の中にあの忌々しい幼女の声が響いた。

『やっほー! 元おじさん。約束通り、とーっておきのスキルをあげちゃうね。君にぴったりの、地味で粘り強いやつ!』

パァァァ……と俺の体が光に包まれる。

カズマとマチ、そしてヒロが固唾を呑んで見守る中、俺の脳内にステータスが表示された。


【名前】カズヤ

【加護】間違いによる転生

【固有スキル】処世術 Lv.99(MAX)


「…………は?」

思わず声が出た。

周囲の平民たちがざわつき始める。

「おい、カズヤ。何のスキルだったんだ?」

「……父ちゃん。『処世術』って、知ってるか?」

父カズマは首を傾げた。

「処世術? いや、聞いたことがねえな。普通は『剣技』とか『農業』、運が良ければ『火魔法』とかなんだが……。しかもレベルが最初から九十九だって? 壊れてるのか、その水晶」

周囲の大人たちは、期待外れだと言わんばかりに失笑を漏らした。

「処世術なんて、要は『うまく立ち回るコツ』だろ? 戦いにも収穫にも使えやしねえ。ハズレだな、カズヤ」


だが、俺は震えていた。

三十年の社畜生活。理不尽な上司の叱責、取引先との泥沼の交渉、炎上案件の火消し……。

その血と汗と涙の結晶が、この異世界で「神の祝福を凌駕する極限のスキル」として昇華されていたのだ。


【処世術 Lv.99】

効果1:心理把握(相手が何を求めているか一瞬で見抜く)

効果2:忖度(相手の怒りを物理的に逸らす)

効果3:根回し(周囲の環境を自分に都合よく改変する準備を行う)

効果4:全言語・階級マナー習得


(……ふっ。笑いたいやつは笑っていろ)

俺はこの時、確信した。

剣聖? 勇者? 聖女?

そんな「神が与えた役割」で踊らされるのは御免だ。

俺はこの、世界で唯一の「究極の世渡りスキル」を武器に、自分たちを見捨てた神と、その神が作った不条理な社会に立ち向かってやる。


「おい、ヒロ。よく見てろよ。兄ちゃんがこの世界を、文字通り『うまくやって』いくところをな」

俺はニヤリと笑い、弟の頭を撫でた。

俺の、二度目の人生――「対・創造神」のコンサルティングが、今始まった。


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