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レンズの煤けた天体望遠鏡
嗚咽を聞く者は誰も居ない。それがありがたくもあり、寂しくもあった。
もっとも、誰も居ない状況を作り出したのは、他でもないステラ自身なのだが。
泣きやんでから、必要な道具を選別する。
いつも使っていたローブ…流石おばあちゃんが頼んだ特注品。表面には火に焼かれた痕があるが、中身は全くの無傷だ。
方位磁石…磁力が失われている。新しいのを用意する方が早そうだ。
アストロラーベ…砕け散っていて、もう使えない。必要になったら商業ギルドに尋ねればいい。
天体望遠鏡…レンズが煤けている。拭けばまだ使えるだろうか。
儀式用ナイフ…無事。しかし使い道は無い。
「…」
自分の存在証明は消えた。
この先、どうやって生きようか。
少なくとも、この街では生きられない。地面はデコボコ、家屋も大半が壊れている。何より人が居ない。
となれば、必然的に外に出る事になる。幸い、最寄りの街は徒歩数日で辿り着く。
焼け焦げてチリチリになった髪をナイフで切りながら、そんな事を考える。ぐるぐる回っていて、揃えづらい癖っ毛だ。
「…ぇぢっ」
小さなくしゃみと共に片付けも済ませ、大きなバックパックに詰める。
先行き不透明。




