第5話 〜七分咲き〜 今度こそ、守り切る(エルリック視点)
はじめまして、作者のしぃ太郎です。
このお話は、
「前世の彼氏が攻略対象に転生してた」という
なんとも言えない状況から始まります。
軽い雰囲気で始まりますが、
キャラ達の感情はわりと重めだったり、
甘いところは作者が照れるくらい甘かったりします。
シリアスもありますが、最終的にはハッピーエンドです。
安心して読んでいただけたら嬉しいです。
どうぞ、ゆっくりお楽しみください。
――(エルリック二回目)――
何だ? 地下牢に居たはずなのに、日差しが眩しい。
俺は毒杯で確かに死んだはずだ。
そのはずなのに、また、懐かしい場所に立っていた。
優花と再会した特別な場所。
そして、また彼女を救えなかった後悔を思い起こさせる、忌々しい所だ。
そう。俺はまたしても彼女を救えなかったんだ……。
見覚えのある風景。花びらが舞っている、春の光景。
ここは学園だ。
――そして、目の前には……!
「……お前!優花だよな!?」
俺は先ほど、死んだはずだった。あの喉を焼く激痛すら思い出せる。
彼女は、身体も心も壊され、死んだと聞いていた。
今度は遠くから守るなんて甘いことは言わない。
前世の事も話し、今回こそ奴らから守る。
夢かどうかなんて疑わない。そんな贅沢なことはしない。
もう一度チャンスが得られたなら、絶対に逃さない。
――今回こそ絶対に優花を救う。
「お前、乙女ゲームのヒロインだろ!気づけよ」
彼女が食いつきそうな話題で近づいた。
そして彼女に、学園の危険性を教え込んでいった。
だが。
優花に自身の身に起きる、恐ろしい可能性を説明していると――。
「この浮気野郎!私の友達に手を出すなんて、とんだ二股野郎ね!」
そう、罵られた。なんだ? 浮気?
――友達?
優花の義弟のストーカー女。優花と付き合っていた俺に対しても浮気を匂わせていたのか。
どれだけ卑劣な女なんだ。
彼女の頑なな態度に、これはすぐに誤解を解くのは無理だと諦めた。
会話はしてくれるが、明らかに失望が滲んだ、冷めた目で見られている。
(浮気野郎か……。俺にはお前だけなのに)
――優花……いや、この世界の彼女はミリィだ。
それからは、侯爵令息の立場からミリィを守り続けた。
何故か俺に熱をあげて、嫉妬した令嬢達も多く、それが厄介だった。
しかし、それはミリィが撃退していた。
本人は嫌がっていたが、彼女の強さは中々見られるものじゃない。だからこそ大切で、誰にも壊されたくない。
俺の大切な人だ。
過去が重くのしかかって来る。
二度も助けられなかった――。
そこにいてくれるだけでも良かったのに。
よくわからない、こんな異世界で再び出会えた喜び。
生きて、また笑っている彼女がいてくれるだけでも十分に満足だったのに。
やはり、現実は、この世界は1ミリも彼女に優しくなんてなかった。
――今日の朝。
ミリィが校舎に向かっていた。本当は彼女に声をかけたい。
……嫌がられるかな?
何しろ目立つことが嫌いな性格だ。それでも、彼女の後ろ姿をみているだけでも心が暖かくなる。
この後の、出来事――。
それを知るまでは。
いつでも現実は、冷たくそれを自覚させる。
俺はいつも間に合わない。
またその繰り返しだ――と。
教室に入ると、ミリィが王子の特別室に呼ばれたと男子生徒の間で話題になっていた。
最悪の場面が脳裏をかすめる。
彼女が、あいつらにいいようにされていた場面を……!
(またか? また間に合わないのか?)
前回と同じく特別室に呼び出されたミリィ。
王子の呼び出しは、もっと後だと思っていた。
俺の油断だ。
すべて、ミリィとの日々に浮かれた俺のせいだ。
もっと警戒して、彼女から目を離してはいけなかったのに。
(クソ野郎! また殺してやる! 一度も二度も変わらないんだよ、畜生!)
――また王子の特別室に無理やり押し入る。
「ミリィ! 優花! 優花!」
「エルリック……。たす……」
「優花!」
今にも意識を失いそうな彼女に駆け寄る。
前回の悲惨な姿ではない。
衣類も大丈夫で、奴らに触れられてもいない。
間に合った。
――今度こそ俺は間に合ったんだ。
あまりの安堵で両目から熱いものが溢れていく。
彼女の確かな温もりを感じて、どうしようもなく溢れ出す、罪悪感や後悔。そして自己嫌悪。
前世の、あの平和な世界でも理不尽な目に遭って命を落とした彼女。
それをようやく助けられた。
例えようもないほどの喜びが、頬を濡らしていく。
「今度こそ、間に合ったんだ。ようやく、手が届いたんだ」
それが嬉しくて。
それだけで胸が痛くて。
彼女の温かさが尊くて――、その全てが愛おしくて。
「ありがとう。無事でいてくれて、本当にありがとう……。優花」
騒ぎを聞きつけて、学園の関係者が部屋に押し寄せてくるまで、身動きの取れない彼女の体温を、ずっと腕の中に閉じ込めていた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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