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彼女を助けるために、俺は乙女ゲームの攻略キャラになりました  作者: しぃ太郎


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6/10

第4話 〜五分咲き〜 あの日、散った花の名前は(エルリック視点)

はじめまして、作者のしぃ太郎です。


 このお話は、

「前世の彼氏が攻略対象に転生してた」という

 なんとも言えない状況から始まります。


 軽い雰囲気で始まりますが、

 キャラ達の感情はわりと重めだったり、

 甘いところは作者が照れるくらい甘かったりします。


 シリアスもありますが、最終的にはハッピーエンドです。

 安心して読んでいただけたら嬉しいです。


 どうぞ、ゆっくりお楽しみください。



――(過去編 “ 一回目のエルリック”の回想)――


 前世の記憶を思い出したのは、学園に入学する直前だった。

 朝起きた瞬間、知らない天蓋を見あげていた。

 そして、鏡に写った馴染みのない顔。

 そこには“俺”とは違う青年がいた。


 状況を受け入れるのに時間がかかり、両親に心配された。

 医者にみせられたり、神官を呼ばたりもした。


(これって転生とか憑依とか、そういう感じ?)


 現状は理解したが、つい先程、大切な彼女を失った喪失感だけはどうしようもない。

 遠い過去の出来事のはずなのに、手が震えて止まらなかった。



 ――学園の入学式。




 門をくぐると、前世で流行った曲を口ずさむ女の子がいた。

 懐かしい。

 そして、優花と同じように音程を外す所が失った彼女を思い起こさせた。


 ――もしかしたら、優花なのかもしれない。

 無意識に、呼吸が浅くなる。

 顔が違う。

 それでも彼女だと思った。元気に、楽しそうに歩いている。……そして幸せそうだ。


 そう考えたら泣きたくなった。

 今、彼女が幸せなら俺は必要ないんじゃないか?


 前世、あの女の本性に気がつかず、目の前で死なせてしまった――俺の優花。


 俺には、優花を幸せにする資格なんてないんじゃないか?


 ――でも。

 もし恋人に選ばれなくても、友人ならいいんじゃないか?


 そう思い、彼女に声をかけた。


「君も新入生だよね?名前を聞いてもいいかな?あ、俺はエルリック・レリアント。気軽にエルリックって呼んでほしい」


 緊張を必死に隠して。目に力を入れて、涙なんて見せないように。


「はじめまして、レリアント様。私はミリィです。平民なので苗字はありません。でも、ここは平民の生徒は少ないんですね。私に関わらないほうが貴方の為になるかもしれません」


 挨拶を交わしながら、貴族とは関わりたくないと暗に匂わせる彼女。


 それもそうかもしれない。

 貴族は平民を同じ人間だと思っていない。陰ながら彼女を助けるほうがいいのかもしれない。


「そうなんだ。俺は気にしないけれど、ミリィさんが気にすると困るからね。これ以上は干渉しないよ。でも何かあったら頼る程度には覚えていて欲しい」


「ありがとうございます、レリアント様!」


(あぁ、優花だ。俺が優花を間違える筈がない)


 彼女の笑顔をもう一度見られた。

 これ以上は彼女の負担になるなら……身を引くしか無いのだろう。


 ――生きていてくれるだけでいいじゃないか。

 それだけでもいいじゃないか……。




 ――ある日。



「あの平民、とうとう王子の特別室に呼ばれたってさ」


 それを聞いたのは、入学後半年を過ぎた頃だった。


 あの王子は色事に耽り、こうやって立場の弱い女性や身分の低い男を甚振るのが好きだ。

 彼と関わった何人もの生徒が突然退学になり、その理由を誰も語らない。



「その子の名前は!?」


 今、それを話題に出していた男の襟元を掴み上げ問い詰める。


「知らねぇよ!何だいきなり!って、レリアント子息!?」

「名前以外でもいいから!何か情報は!」


「確かピンクに近い金髪の平民です!名前は覚えてません、すみません!」


 ――それは。それはミリィじゃないのか。


 廊下を走る。あの野郎、あの王子!ぶっ殺してやる!

 間に合え!

 早く!もっと速く走れ!





 部屋を守る護衛を殴り倒し、部屋に押し入る。


 そして辿り着いた王子の特別室。そこで見た物は。

 前世で感じたあの、――あの殺意を思い起こさせた。



 ミリィはグッタリとソファに横たわり――。

 王子と側近の二人が彼女に伸し掛かっていた。


 彼女の肌が露わになっており、何があったかは明らかだった。

 前世の記憶が脳を灼いた。


「てめーら!!ぶっ殺してやる!」


 さっき殴り倒した護衛から剣を奪い、


 何度も。

 何度も。

 奴らを滅多刺しにする。


 まただ!また助けられなかった!

 呼吸が浅くなる。上手く息が出来ない。

 視界がどんどんと狭まっていく。


 ――ミリィの命、それ自体が無事なのかすら確認すら出来ない。

 あまりにも酷い惨状で。俺にはその姿を見ていられない。


 本当なら、彼女に寄り添って心を癒してあげるのが正しいのだろう。

 でも、このままではミリィの痛みも、彼女がされた行為も無かったことにされる。


 彼女は力の無い平民だから。


 ――それがこの社会だ。


 剣を振りながら、思う。

 逃げる奴らを串刺しにしながら強く、あの日を思い出す。


 入学式の日。

 彼女が幸せならいいと思った。

 彼女が生きているだけでもいいと思った。


 ――何を馬鹿げたことを!


 違う!違う!

 こんな奴らから守らなければ!!そうしなければいけなかったんだ!!



 ◇◇◇


 俺は捕まり、王城の地下牢に入れられた。

 無力感に苛まれて、顔を上げることさえ出来なかった。

 じっと牢獄の冷たい石畳を見ていた。


「なんでこんな事をしたんだ!王族を弑するなんて!我が一族も責任は免れん!この恥知らずが」


 父に殴られ、母には泣かれ。我が家門も大打撃だった。


 それでも、俺はミリィの事しか頭になかった。


 そしてあの惨劇で、王子のしていた事が次々と明るみに出たらしい。

 随分と卑劣なことを沢山していたようだ。

 情状酌量が与えられ、俺一人が毒杯を賜るだけで済んだ。



 ――そしてミリィは。

 心を病み、部屋に閉じこもったある日、ふと命を絶ってしまったらしい。


 また彼女を失ってしまった。


 それなら。もう俺に生きる意味はないじゃないか。

 また好きな女を助けられなかった惨めな男がここに居るだけだ。


 暗い檻の中。俺は毒杯を一気に呷り、血を吐いて死んだ。




 

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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