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彼女を助けるために、俺は乙女ゲームの攻略キャラになりました  作者: しぃ太郎


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5/10

第3話 〜三分咲き〜 痛みとともに散った花(エルリック視点)

はじめまして、作者のしぃ太郎です。


 このお話は、

「前世の彼氏が攻略対象に転生してた」という

 なんとも言えない状況から始まります。


 軽い雰囲気で始まりますが、

 キャラ達の感情はわりと重めだったり、

 甘いところは作者が照れるくらい甘かったりします。


 シリアスもありますが、最終的にはハッピーエンドです。

 安心して読んでいただけたら嬉しいです。


 どうぞ、ゆっくりお楽しみください。




 いつも通りに学園に登校すると。


 ――ミリィが王子の特別室に呼ばれた。男子生徒の間でそれが話題になっていた。


 これには、この学園に通う子息にだけわかる暗黙の意味がある。それはミリィが愛人に選ばれた、という事だ。


 胸の奥が一瞬で冷えた。視界が歪む。

 体が勝手に走り出す。 

 考える暇なんかない。


(くそっ!前回よりもタイミングが早い!)


 最悪の場面を思い出す。

 彼女が、あいつらにいいようにされていた場面を……!


 校舎を全力で走り、特別室に向かう。

 部屋を守る護衛を振り切って、中に入る。


 ――あの時の絶望を、罪悪感を、あの、何も出来なかった自分への無力感を再び味わうのか!


「ミリィ!優花!優花!」


 声をからして、何度も彼女の名前を呼んだ。


 ◇◇◇



 ――これは、大切な彼女を目の前で助けられなかった馬鹿な俺の話だ。


 前世の俺は平和な日本に住んでいた学生だった。



 それが突然、恋人だった優花が刺されて死んだ。それも俺の目の前で。


 普通の大学生だった俺には、何が起きたか分からず、彼女が倒れ込んだ事をすぐには理解出来なかった。


 ――血だ。優花の血だ。彼女が大量の血を流して倒れている。


 周りで叫び声が聞こえる。


「……え? 優花……? 優花!」


 俺は繰り返し名前を呼ぶことしかできなかった。


 そして、いきなり優花を刺したのは、いつも彼女と一緒に居る友人だった。今日いきなり、『助けて欲しいと』俺に頼んできた女。


 マッチングアプリで出会った男にヤバい所に連れ込まれたから迎えに来て欲しいと頼まれて助けに向かった。


(何故、大して面識の無い俺に?)


 その疑問が頭をよぎるが、優花の友人だから無視はできなかった

 一応、大変なことになる事態を想定し警察を呼ぶ事も視野に入れて迎えに行った。


 優花の友人だが、名前も思い出せないこの女――。


「ヒロくんを惑わす、ビッチな女なんだもん。こんな奴やっぱり消えちゃえばいいわ!」


 優香の義弟のヒロ――。

 こいつも一緒に居たのか。


 ヒロが何だって?


『早く救急車を!』

『おい、血が止まらないぞ!』

『その女を取り押さえろ!』

『息をしていない!早く!』


 ――何でもいいから。誰か優花を早く助けてくれ。


 自分の心臓の音だけが近い。

 ガンガンと、耳と脳を揺らし続ける。


(でも、この女だけは許せそうもない)


 あぁ、でも数人に取り押さえられて、近づくことも出来なさそうだ。


「……ヒロ。あの女と関係があったのか?だから優花がこんな目に?」


 俺と一緒に、優花の側で座り込んでいる彼に聞いた。

 答えは何だったか。

 意味のない質問だ。


 今、話す事でもない。優花のために何も出来ない、何の役にも立たない俺。


 あぁ、目の前にナイフがある。さっきは怒りに任せあの女を刺してやろうと思った。

 震える指先がそれに触れた。

 冷たい金属の感触。


 でも今は。


 ――絶望のままに、それを地面から拾い上げた。そして人垣をかき分けて優花の近くに寄った。


 地面に倒れた彼女。

 周囲では必死に彼女を救うために動いてくれている人もいた。

 俺はその場で何も出来ず。


 手で触れた彼女の体温がどんどんと下がっていくのが恐ろしかった。


 誰が言ったのか。


『もう、呼吸をしていない。早く、救急車を――!』


 ”もう呼吸をしていない”?


 誰が?

 ――優花だ。


 間に合わないかもしれない?

 ――それは優花の命の話だ。


 嘘だ。

 こんなこと、起こるはずがない。

 嘘に決まってる。

 現実から逃げたい。

 これは……ただの夢だ。


 さっきから、音が遠い。


 衝動的に、手に持ったナイフを自分に突き立てた。

 こんな所から早く逃げ出したかった。

 すべてを受け入れられない。

 ただ、それだけが理由だった。


 その感情に突き動かされてもう一度ナイフで自分の胸を刺す。


 自分から吹き出す血に、暗くなる視界。

 痛みは、わからない。

 多分、優花の方がもっと痛い思いをしたはずだ。


 そう。これは現実じゃない。

 早く、いつもの彼女のもとにいかなければ。こんな事はあり得るはずがない。


 優花を助けてくれ。

 きっとこれは夢だ。

 だって朝は普通に生活していたんだ。

 いつも通りの毎日を過ごしていたんだ。


 必死に目の前の光景から逃げ出したくて、勝手に自分を痛めつける。

 俺の命をあげるから。


 どうか、彼女だけでも助けてください。

 誰でもいい。なんだっていいから。


 それが無理なら、俺も一緒に連れて行ってよ、優花……。



 

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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