プロローグ 〜蕾〜 まだ固く閉ざしたまま
はじめまして、作者のしぃ太郎です。
このお話は、
「前世の彼氏が攻略対象に転生してた」という
なんとも言えない状況から始まります。
軽い雰囲気で始まりますが、
キャラ達の感情はわりと重めだったり、
甘いところは作者が照れるくらい甘かったりします。
シリアスもありますが、最終的にはハッピーエンドです。
安心して読んでいただけたら嬉しいです。
どうぞ、ゆっくりお楽しみください。
――バッチーン!
「浮気野郎ッ!前世で私を裏切ったでしょうが!!」
入学式のはずなのに、私の手は見知らぬイケメンの頬を思い切り叩いていた。
◇◇◇
少し前に遡る。
爽やかな春の風。
私は、髪をなびかせて、憧れの学園の門を潜った。
これから入学式。一生懸命勉強していっぱい青春を……。
「お前!優花だよな!?」
いきなり、青髪、金目の素敵な男性が腕を掴んできた。
――え?今なんて?
「え……貴方、誰ですか?ちょっと止めて下さい」
「俺だって、春樹!お前の彼氏!」
必死に逃げようとしていた私はその言葉を聞いて動きを止めた。
は?前世の彼氏の春樹?大学生の時の、彼氏?は?なに??
「いやいやいや、ちょっと待って下さい……え?」
春樹は前世の彼氏の名前だ。
あいつがこんなにイケメンに?あなた、別に前世で徳は積んでなかったよね?
私はミリィ。ただの平民で、前世の学力をそのまま活かしてこの学園に入学した。しかも特待生でだ。
「お前、乙女ゲームのヒロインだろ!気づけよ!」
私が、ヒロイン?
そんなわけ……。あるのか? あるのかも……?
でも、別にお気に入りの乙女ゲー厶やら、思い入れのある物語なんてあったっけ?
前世の記憶。春樹、は関係ないか。そして平民の特待生?
これは……!そうなのかも……?テンプレってやつ?
でもそんなに都合がいい事ってある?
――いえ、そんな事より春樹の方が気になるわ!
私は青髪の彼に、逆に掴みかかる。
「さあ、お前の罪を数えろ!」
「いや、それあのライダーさん……」
バッチーン! 春樹を名乗る男の頬を叩いてやった。
「右の頬を叩いたんだから、左も叩かせろ!」
「いや、それは色々ヤバい……」
左も叩いてやった。よし、理解したわ。これは春樹で間違いない。話が通じている。前世の懐かしいやり取りも思い出した。
「で? なんで今更私に声かけるのよ?」
思い出しても腹が立つ。こいつは、私の誕生日の数日前に浮気をしていたクソ野郎だ!
「タイトルとか忘れたけど、俺、自分の顔に見覚えがあるんだよ。メインヒーローの右か左に居るやつ」
「あー。それでも春樹には勿体ない役どころだわ」
とりあえず、目立ちたくない私は校門から移動する。
「酷くない?」
「酷くないわ、この浮気野郎!私の友達に手を出すなんて、とんだ二股野郎ね!」
もう一回殴るために、手を振り上げるか迷う。
「は!?浮気!?そんな事していない!」
「したわよ!ちゃんと聞いたもの。それにあんたあの時……!」
――抱き合っていたじゃない、あの子と。
何よ、今更言い繕っちゃって。
「まぁいい。違うって言っても信じてくれないし。俺が言いたいのは、これ死人が出るタイプの話かもしれないって事だ!」
「は?」
あまりの単語に、脳が止まった。
「俺が好きだったジャンルを覚えてるか?サスペンス、ホラー、パニック、グロ、サイコパス……」
「そしてエロね」
「否定は出来ないが……。はぁ。とにかく普通じゃない可能性があるって事だ。サイコパス野郎とかにアレやコレやされるのは想像したくないだろう」
それは否定できない。そんな事はごめんだ。
サイコパスホラーなんて勘弁だ。
「攻略対象に近づかなきゃいいんでしょ?私、別に恋愛に興味ないし。平民に声かけてくる貴族って上から目線で、自分に酔ってるナルシストばかりだもの」
前世を引きずっていないとは言い切れない。でも分けて考えないといけない。
もうあの頃とは別人なのだ。
――でも。
「裏切られた気持ちは残ってるんだよ、浮気野郎」
「……本当に違うんだって」
なんであんたがそんなに傷ついた顔するわけ?
私が傷ついたのに。
(もういいか。『優花』は死んじゃったし。『春樹』も生まれ変わったならもう責めなくてもいいんじゃない?許せるかどうかは別だけど)
「しかし、あんたがこんなピンク髪のヒロインなんてベタな乙女ゲーをしていたなんてね?笑える!……いや、ジャンルが怪しすぎて引くわ……」
「それでも。今度こそ、絶対にお前を守るから」
怖いくらいに真剣に私と目を合わせて言う。
少し気まずい。グッと彼の肩を押して距離を取った。
――近い近い。この世界は、貞淑第一なのよ!
「ありがとう。取り敢えず頼りにしてるわ」
「そういえば、今のあなたの名前は?」
「エルリック・レリアント」
長ったらしい名前になったもんだ。
あの春樹が、イケメンで攻略対象?笑える。気障ったらしい台詞を言っちゃうの?
聞いてみたいわー。
「私はミリィよ。平民だから苗字はないわ。宜しくね、エルリック様」
「あぁ、ミリィ。またよろしく」
ザワザワと周りが騒がしい。
平民と多分高位貴族のエルリックの親しげな様子に皆が驚くのも無理はない。
――そして、それは嫉妬をも呼び込むものだった。
こいつのせいで、私は色々と困難な学園生活を送る羽目になるのだった。
生まれ変わったら、元カレが――! とか求めていません、神様!
◇◇◇
この時の彼女は知らなかった。
彼のこの行動の持つ、本当の意味が。
――これは、誰かを切実に救いたい男の「作り上げた」お話だった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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